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魔女はお節介な生き物です

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「惚れ薬ぃ、惚れ薬ぃっと」

 夜。

 ユリウスに焼いてもらった肉を腹が苦しくなるほど食べて満足したメリーエルは、就寝前に魔法薬の研究室の中を漁っていた。

 この前研究室を爆破させてしまったときに運よく残った魔法薬をおさめてある棚の中に、昔作った惚れ薬があったはずだ。

「惚れ薬ぃー……、あったあった!」

 メリーエルは棚の中から透明なクリスタルガラスの小瓶を取り出すと、中で揺れる薄ピンクの液体を見つめた。

「こんなものを王子様がほしがるなんてねぇ」

 惚れ薬はもうこの一瓶しか残っていないが、一滴だけでもすごい効果を発揮する。人体に影響がないことは実験済みだが、さすがにこれは渡せない。

 しかし――

 メリーエルはシュバリエの真剣な顔を思い出してため息をつく。

 太った女性が好きで、婚約者を好きになるために惚れ薬を飲む――。言っていることは無茶苦茶だが、シュバリエは至極真面目だった。あの様子では、諦めてはいないはずだ。なんとか彼を諦めさせる方法はないだろうか。

(実際体験すればわかると思うのよねぇ。これがどんなにろくでもない薬か)

 けれど、わからせるためにシュバリエに薬を盛るわけにもいかない。シュバリエはいい人そうだが、それでも相手は王族。下手なことをして罪に問われ、せっかく手に入れた住処を追われたりしたら大変だ。

 メリーエルは小瓶を片手に研究室をあとにすると、自室に向かって歩き出す。

 シュバリエに使わず、惚れ薬の怖さをわからせるにはどうすればいいのか――

「どうしたメリーエル。眠れないのか?」

 二階へ続く階段をのぼりながら、メリーエルがうーん唸ったとき。足音を聞きつけて部屋から出てきたのか、顔をあげれば、二階の廊下からユリウスがこちらを見下ろしていた。

「ううん、そう言うわけじゃないんだけど」

「そうか? 調子に乗って胃が破裂しそうなほど肉を食っていただろう。気分が悪くなったならすぐに言えよ」

「失礼ね! そんなにがっついてないわよ!」

 階段の途中で足を止め、メリーエルはじろりとユリウスを睨みつけるが、彼はくつくつと肩を揺らして笑いながら、「早く寝ろよ」と部屋に戻っていく。

 メリーエルはユリウスの姿が見えなくなるまで頬を膨らませていたが、彼の姿が消えると、ふといいことを思いついてにんまりと目を細めた。

「そうだ。その手があったわ。さすがわたし、天才っ」

 メリーエルは一人自画自賛すると、惚れ薬の小瓶を握りしめて、スキップをするような足取りで寝室へと向かった。
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