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旦那様は魔王様≪最終話≫
消えた記憶 8
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午後になって、沙良はミリアムに連れられてアスヴィルの部屋を訪れた。
沙良はアスヴィルの部屋の扉をくぐり――そして、硬直した。
(……、ふりふり?)
アスヴィルの部屋にキッチンがあることも驚きだが、何よりも沙良を困惑させたのはアスヴィルが身に着けていたエプロンである。
真っ白な布地は同じく白いレースで華やかに飾られて、裾や、胸元、腰で結ぶ紐まで「ふりふり」している。
(どうしよう……、帰りたい、かも)
厳つい顔をしたアスヴィルと、どこからどう見ても乙女要素満載の、いっそ十代の女子ですら身に着けないであろうフリフリしたエプロン。そのあり得ない組み合わせは脳に直接爆弾を落とされたくらいの破壊力があり、沙良は一瞬灰になりかける。
沙良はアスヴィルを見つめたままたっぷり数十秒は硬直し、そうして茫然としている間に、てきぱきとミリアムによって、同じくふりふりした真っ白いエプロンを身につけられていた。
ハッとすると、すでに髪まで結ばれ、お菓子作りのスタンバイが整えられてしまっている。
おろおろしている沙良の様子に苦笑を浮かべ、アスヴィルが小さく手招きした。
「作るのは、チョコチップクッキーだ」
どうしてだか、「チョコチップクッキー」という何に、言いようのない懐かしさを覚えながら、沙良はまだ半ば茫然としたまま、コクリと頷いた。
沙良はアスヴィルの部屋の扉をくぐり――そして、硬直した。
(……、ふりふり?)
アスヴィルの部屋にキッチンがあることも驚きだが、何よりも沙良を困惑させたのはアスヴィルが身に着けていたエプロンである。
真っ白な布地は同じく白いレースで華やかに飾られて、裾や、胸元、腰で結ぶ紐まで「ふりふり」している。
(どうしよう……、帰りたい、かも)
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