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離宮の夜は大混乱!?
エルザ捕獲大作戦!? 3
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エルザは羊皮紙に書かれた地下通路を進んでいた。
丸いトンネル状の地下通路の天井は低く、中腰でないと進めない。
暗い地下通路の中を照らすのは、彼女が作り出した淡い光の玉だ。魔力の少ない彼女では地下通路全体を照らすほどの灯りを生み出すことはできず、自身の周囲をぼんやりと照らすだけで精いっぱいだった。
ぴちゃん、と遠くで水が落ちるような音がする。
十五分ほど歩き続けたところで、行き止まりになった。上を見上げると、人一人がぎりぎり通れるほどの小さな木戸があった。この上が地下倉庫だろう。
エルザは両手で木戸を上に押し開けると、そこから倉庫の中に入り込んだ。
足元の木戸をもとのように閉ざし、ふう、と息をついて倉庫の中を見渡したエルザは、思わずポカンと口を開けた。
倉庫の中は、倉庫であって、倉庫ではなかった。
もともと倉庫に無造作においてあったと思われる荷物は、片方の壁にまとめて積み上げられており、それによって生まれたもう片側の空間には、大の男が寝そべっても余裕があるほどの大きなソファ、小さなテーブル、半分飲まれた形跡のあるウイスキーのボトルに、本、クッション、ボードゲーム。
(……セリウス様かしら?)
明らかに誰かが生活していた痕跡がある。バードが、セリウスが忍び込んで生活していたようだと言っていたから、おそらくこれはセリウスの仕業で間違いないだろう。
(もっと早くわかっていたら、わたしもここに隠れていられたわね……)
ジェイルの心臓も狙いやすかっただろう。バードも早く教えてくれればよかったのに。
エルザは倉庫の入口まで歩いていくと、扉に耳をつけて、念のため外に誰もいないことを確かめた。
小さく扉を開いて、そっと体を滑らせるように外に出る。
ジェイルが私室がわりに使っている地下の部屋は、倉庫を出て、さらに地下へ続く階段を下りた先にある。
エルザはなるべく足音を立てないように階段を下りていくと、たどり着いた扉の前で深呼吸をした。
静かに扉を開けて部屋の中へ入ると、中央に鎮座している大きな棺桶に地下づく。
黒い光沢のある表面をそっと撫でると、耳を近づけて、中の音を聞いた。静かな呼吸が聞こえている。ジェイルは眠っているようだ。
エルザは、棺桶の重たい蓋をゆっくりとずらすと、幸せそうに眠っているジェイルの端正な顔を見つめた。
口を開けていると頓珍漢なことばかりを言うジェイルだが、黙っているときは見ほれるほど整った顔立ちをしている。透けるような白い肌も、つややかな黒髪も、エルザは羨ましくて仕方がなかった。
(……あなたが、悪いのよ)
エルザは、外套の内ポケットから木の杭を取り出すと、ぐっと握りしめる。
ジェイルの心臓の上にかざして、唇をかんだ。
「あなたが、悪いの……」
杭を持つ手が微かに震える。
だが、エルザはここで止まるわけにはいかないのだ。
エルザは杭を大きく振りかざすと、ジェイルの胸めがけて力いっぱい振り下ろした。だが――
「そこまでだ」
静かな声とともに、エルザの手首が誰かに掴まれる。
胸に突き立てるまで、あと十数センチという距離で阻まれて、エルザは息を呑んで振り返った。
「誰―――」
目的を阻んだ相手を怒鳴りつけようとしたエルザは、そこにいた男に言葉を失う。感情の読めない冷たい目をした男は、魔王シヴァだった。
丸いトンネル状の地下通路の天井は低く、中腰でないと進めない。
暗い地下通路の中を照らすのは、彼女が作り出した淡い光の玉だ。魔力の少ない彼女では地下通路全体を照らすほどの灯りを生み出すことはできず、自身の周囲をぼんやりと照らすだけで精いっぱいだった。
ぴちゃん、と遠くで水が落ちるような音がする。
十五分ほど歩き続けたところで、行き止まりになった。上を見上げると、人一人がぎりぎり通れるほどの小さな木戸があった。この上が地下倉庫だろう。
エルザは両手で木戸を上に押し開けると、そこから倉庫の中に入り込んだ。
足元の木戸をもとのように閉ざし、ふう、と息をついて倉庫の中を見渡したエルザは、思わずポカンと口を開けた。
倉庫の中は、倉庫であって、倉庫ではなかった。
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(……セリウス様かしら?)
明らかに誰かが生活していた痕跡がある。バードが、セリウスが忍び込んで生活していたようだと言っていたから、おそらくこれはセリウスの仕業で間違いないだろう。
(もっと早くわかっていたら、わたしもここに隠れていられたわね……)
ジェイルの心臓も狙いやすかっただろう。バードも早く教えてくれればよかったのに。
エルザは倉庫の入口まで歩いていくと、扉に耳をつけて、念のため外に誰もいないことを確かめた。
小さく扉を開いて、そっと体を滑らせるように外に出る。
ジェイルが私室がわりに使っている地下の部屋は、倉庫を出て、さらに地下へ続く階段を下りた先にある。
エルザはなるべく足音を立てないように階段を下りていくと、たどり着いた扉の前で深呼吸をした。
静かに扉を開けて部屋の中へ入ると、中央に鎮座している大きな棺桶に地下づく。
黒い光沢のある表面をそっと撫でると、耳を近づけて、中の音を聞いた。静かな呼吸が聞こえている。ジェイルは眠っているようだ。
エルザは、棺桶の重たい蓋をゆっくりとずらすと、幸せそうに眠っているジェイルの端正な顔を見つめた。
口を開けていると頓珍漢なことばかりを言うジェイルだが、黙っているときは見ほれるほど整った顔立ちをしている。透けるような白い肌も、つややかな黒髪も、エルザは羨ましくて仕方がなかった。
(……あなたが、悪いのよ)
エルザは、外套の内ポケットから木の杭を取り出すと、ぐっと握りしめる。
ジェイルの心臓の上にかざして、唇をかんだ。
「あなたが、悪いの……」
杭を持つ手が微かに震える。
だが、エルザはここで止まるわけにはいかないのだ。
エルザは杭を大きく振りかざすと、ジェイルの胸めがけて力いっぱい振り下ろした。だが――
「そこまでだ」
静かな声とともに、エルザの手首が誰かに掴まれる。
胸に突き立てるまで、あと十数センチという距離で阻まれて、エルザは息を呑んで振り返った。
「誰―――」
目的を阻んだ相手を怒鳴りつけようとしたエルザは、そこにいた男に言葉を失う。感情の読めない冷たい目をした男は、魔王シヴァだった。
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