上 下
509 / 549
第10章 異国の大決戦編

12.ワニアの戦い(4)

しおりを挟む
宗重と政武ら率いる軍勢とアテヌの軍勢との接近戦が始まってから数刻の時が経っていた。

宗重と政武の軍勢の総兵数は二千人程度。
対するアテヌの軍勢の総兵数はそれを上回る三千人。
兵力差で見ればアテヌ側が有利という事もあってか、宗重と政武らの軍勢は押され気味の状態だ。

宗重
「くっ…アテヌ・ブラウス、なかなかの者にござるな…」

宗重は顔をしかめながらそう言っていた。
どうやら彼らが想定していた以上の反撃を受けた事に対して困惑しているようであった。

政武
「おいおい、いつもの爺さんらしくねえぞ。ここが踏ん張りどころぞ!」

たとえ兵力差があろうとも、我らの力を最大限にまで引き出してこの戦況を見事にひっくり返してやろうではないか。
弱気な態度を見せつつあった宗重に対して政武は檄を飛ばしていた。

一方、その様子を見たセビカ軍の陣営では長継が心配気な表情を見せていた。

長継
「む、宗重殿に政武殿…」

やがて崇房は、宗重らがアテヌの軍勢に押されつつある戦況に対して声を上げ始める。

崇房
「祐永様、宗重殿と政武殿は苦戦を強いられております。ここは我らも早急に彼らの軍勢と合流いたしましょうぞ!」

宗重らの軍勢は、アテヌの軍勢に対して手を焼かされている。
それ故に早急に彼らの軍勢と合流し、共に戦うべきであろう。
崇房は祐永に対して急かすようにそう言っていた。

すると、そんな崇房を静止しながら祐永が答え始める。

祐永
「待たれよ崇房殿!今、我らが宗重らの軍勢と合流すれば奴らの思う壺ぞ。」

確かに宗重らの軍勢はアテヌの軍勢に押されている状況である。
だが今、ここで我らの兵を動かす事はならないと彼は答えていた。

崇房
「し、しかし祐永様…このままでは宗重殿らの軍勢が…」

援軍として我らの兵が向かわなければ宗重らの軍勢が壊滅するのは時間の問題と言っても良い。
その事は承知の上であるにも関わらず援軍を送る事を否定していた祐永が崇房には理解出来ないようであった。

焦りの表情を見せる崇房に対して祐永が答え始める。

祐永
「良いか崇房殿よ、敵は何もアテヌの軍勢だけでは無いということを忘れるでない。あれを見てみよ。」

祐永はヘルト城の西側の城門に目をやっていた。
すると城門からはヘルト軍の兵たちがぞろぞろと出撃を始めている。

ドヴェルク
「あれは…どうやら私たちはここでカルロスの軍勢と戦わねばならないようですね…」

恐らくはこの軍勢は、ヘルト軍総大将であるカルロスのものであろう。
敵兵が目の前に現れたからには彼らと一戦を交えなければならない。
ドヴェルクは覚悟の表情を見せながらそう言っていた。

やがて大勢の兵たちの後方に一際目立った鎧を身にまとった男が現れる。
その男こそがヘルト独立勢力を治めるカルロス・ヘルトであった。

カルロス
「我が名はカルロス・ヘルト。我による新たな国の建国を邪魔する者たちに制裁を与えるべく今、戦場に立たん!」

名乗りを上げたカルロスは非常に勇ましい表情をしていた。

崇房
「あれが…カルロス・ヘルトと申す男であるか…」

カルロスの姿を目にした崇房は圧倒された様子であった。

祐永
「総大将殿が直々に我らに戦いを挑みに来られたようにござるな。」

引き締まった表情を見せながら祐永はそう言っていた。
しおりを挟む
感想 18

あなたにおすすめの小説

石田三成だけど現代社会ふざけんな

実は犬です。
ファンタジー
 関ヶ原の戦いで徳川家康に敗れた石田三成。  京都六条河原にて処刑された次の瞬間、彼は21世紀の日本に住む若い夫婦の子供になっていた。  しかし、三成の第二の人生は波乱の幕開けである。 「是非に及ばず」  転生して現代に生まれ出でた瞬間に、混乱極まって信長公の決め台詞をついつい口走ってしまった三成。  結果、母親や助産師など分娩室にいた全員が悲鳴を上げ、挙句は世間すらも騒がせることとなった。  そして、そんな事件から早5年――  石田三成こと『石家光成』も無事に幼稚園児となっていた。  右を見ても左を見ても、摩訶不思議なからくり道具がひしめく現代。  それらに心ときめかせながら、また、現世における新しい家族や幼稚園で知り合った幼い友人らと親交を深めながら、光成は現代社会を必死に生きる。  しかし、戦国の世とは違う現代の風習や人間関係の軋轢も甘くはない。  現代社会における光成の平和な生活は次第に脅かされ、幼稚園の仲間も苦しい状況へと追い込まれる。  大切な仲間を助けるため、そして大切な仲間との平和な生活を守るため。  光成は戦国の世の忌むべき力と共に、闘うことを決意した。 歴史に詳しくない方も是非!(作者もあまり詳しくありません(笑))

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

本能のままに

揚羽
歴史・時代
1582年本能寺にて織田信長は明智光秀の謀反により亡くなる…はずだった もし信長が生きていたらどうなっていたのだろうか…というifストーリーです!もしよかったら見ていってください! ※更新は不定期になると思います。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ

朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】  戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。  永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。  信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。  この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。 *ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。

大日本帝国、アラスカを購入して無双する

雨宮 徹
歴史・時代
1853年、ロシア帝国はクリミア戦争で敗戦し、財政難に悩んでいた。友好国アメリカにアラスカ購入を打診するも、失敗に終わる。1867年、すでに大日本帝国へと生まれ変わっていた日本がアラスカを購入すると金鉱や油田が発見されて……。 大日本帝国VS全世界、ここに開幕! ※架空の日本史・世界史です。 ※分かりやすくするように、領土や登場人物など世界情勢を大きく変えています。 ※ツッコミどころ満載ですが、ご勘弁を。

召喚勇者の餌として転生させられました

猫野美羽
ファンタジー
学生時代最後のゴールデンウィークを楽しむため、伊達冬馬(21)は高校生の従弟たち三人とキャンプ場へ向かっていた。 途中の山道で唐突に眩い光に包まれ、運転していた車が制御を失い、そのまま崖の下に転落して、冬馬は死んでしまう。 だが、魂のみの存在となった冬馬は異世界に転生させられることに。 「俺が死んだのはアイツらを勇者召喚した結果の巻き添えだった?」 しかも、冬馬の死を知った従弟や従妹たちが立腹し、勇者として働くことを拒否しているらしい。 「勇者を働かせるための餌として、俺を異世界に転生させるだと? ふざけんな!」 異世界の事情を聞き出して、あまりの不穏さと不便な生活状況を知り、ごねる冬馬に異世界の創造神は様々なスキルや特典を与えてくれた。 日本と同程度は難しいが、努力すれば快適に暮らせるだけのスキルを貰う。 「召喚魔法? いや、これネット通販だろ」 発動条件の等価交換は、大森林の素材をポイントに換えて異世界から物を召喚するーーいや、だからコレはネット通販! 日本製の便利な品物を通販で購入するため、冬馬はせっせと採取や狩猟に励む。 便利な魔法やスキルを駆使して、大森林と呼ばれる魔境暮らしを送ることになった冬馬がゆるいサバイバルありのスローライフを楽しむ、異世界転生ファンタジー。 ※カクヨムにも掲載中です

惣菜パン無双 〜固いパンしかない異世界で美味しいパンを作りたい〜

甲殻類パエリア
ファンタジー
 どこにでもいる普通のサラリーマンだった深海玲司は仕事帰りに雷に打たれて命を落とし、異世界に転生してしまう。  秀でた能力もなく前世と同じ平凡な男、「レイ」としてのんびり生きるつもりが、彼には一つだけ我慢ならないことがあった。  ——パンである。  異世界のパンは固くて味気のない、スープに浸さなければ食べられないものばかりで、それを主食として食べなければならない生活にうんざりしていた。  というのも、レイの前世は平凡ながら無類のパン好きだったのである。パン好きと言っても高級なパンを買って食べるわけではなく、さまざまな「菓子パン」や「惣菜パン」を自ら作り上げ、一人ひっそりとそれを食べることが至上の喜びだったのである。  そんな前世を持つレイが固くて味気ないパンしかない世界に耐えられるはずもなく、美味しいパンを求めて生まれ育った村から旅立つことに——。

処理中です...