上 下
504 / 549
第10章 異国の大決戦編

07.ヘルト城への進軍

しおりを挟む
セビカ・志太幕府連合軍はワニア島へと上陸。
そこでは敵軍が待ち構えているのでは無いかといった事が危惧されていたが、そうした存在の確認は無かったようである。

ワニア島は敵軍であるヘルト独立勢力の本拠地。
それ故に、我らの軍勢による侵入をそうやすやすと許すであろうか…
不審に思いながらも連合軍はひたすらに進軍を続けるのであった。

政武
「しかし長継さんの言っておった通り、これは確かにおかしいねぇ。」

宗重
「あぁ、それは儂も思うておる。ヘルトの者どもは何か企んでおるやも知れぬな…」

島に上陸した我らに対してヘルトの軍勢は何の攻撃も仕掛けて来ない。
これは、何かの策なのでは無かろうか…
先程に長継らがそう口にしていた事を思い出した政武らも、彼らと同じように考えていた。

長継
「我らがワニア島に上陸したことはヘルトの者たちも気付いておってもおかしくは無いであろう。それなのに何故…」

連合軍が攻めて来るという事はヘルト軍も分かってはいるはず。
そうであらば島の周りには警備を敷いて上陸を簡単に許す事はしないであろう。
だが実際には連合軍は難無く上陸を果たし、ヘルト城への進軍を行っている。
長継はこの状況を不審に思っているようであった。

それに対してドヴェルクが口を開き始める。

ドヴェルク
「今、ここで兵を出して戦うまでも無いと判断しているように私は思えてなりません。」

ヘルト軍は、我らによる島への上陸をあえて見届けていたのでは無いか。
わざわざこちらから出向いて攻撃を仕掛けるまでも無いと考えて兵を出さなかったのでは…

ヘルト軍は今、一体何を考えているかは当然ながら分かるはずは無い。
ゆえに、ドヴェルクの考えもただの憶測にしか過ぎぬものではあった。
だがもしそれが真なのであれば、と考えていた長継は神妙な顔つきをし始める。

長継
「いずれにせよ、ヘルトの軍勢には気を付けねばなるまい。向こうにはアテヌという切れ者がおる故にな…」

ヘルトの陣営にはアテヌが居る。
アテヌはセビカ国において様々な功績をあげて幹部の地位に登り詰めた実力者である。
そのような者が軍を指揮しているのであれば、何を考えているかを読む事は非常に難しいであろう。
長継は、ヘルトとの戦いに対しては細心の注意を払わねばならぬと考えていたようであった。

崇房
「お二方の話を聞く限り、ヘルトの者たちは余程の自信があるということかも知れぬな。」

アテヌという様々な能力を持っている将の存在。
そして、今現在の自軍が進軍する様子を悠長に静観しているかも知れぬと言った余裕さ。
こうした事からもヘルト軍は相当な自信を持っているのでは無いか。
長継やドヴェルクらの話を聞いていた崇房は、そう言っていた。

祐永
「むぅ…此度は凄まじき戦になりそうじゃ。しかし、我が志太幕府は負けるわけにはいかぬ!」

今回の戦いは苦戦を強いられる事は間違い無いであろう。
そう思った祐永ではあったが、幕府の名誉にかけても勝利を収めるべく声を上げていた。

一方、ヘルト城では連合軍を待ちわびているアテヌの姿があった。

アテヌ
「ふふふ、良い。それで良い。早く我が城にまで辿り着いて見せよ。その時には貴様らに地獄を見せてやろう。ふははははは!」

アテヌはなおも下品な笑い声を上げ続けていた。
しおりを挟む
感想 18

あなたにおすすめの小説

架空創世記

佐村孫千(サムラ マゴセン)
SF
この作品は、作者である佐村孫千が脳内連載で描いた世界の歴史を書き記したものでございます。 主に別作品である「架空戦国伝」の舞台となった「創天国(そうてんのくに)」の成り立ちを書いていくものとします。 壮大な架空歴史をお楽しみくださいませ!

暁のミッドウェー

三笠 陣
歴史・時代
 一九四二年七月五日、日本海軍はその空母戦力の総力を挙げて中部太平洋ミッドウェー島へと進撃していた。  真珠湾以来の歴戦の六空母、赤城、加賀、蒼龍、飛龍、翔鶴、瑞鶴が目指すのは、アメリカ海軍空母部隊の撃滅。  一方のアメリカ海軍は、暗号解読によって日本海軍の作戦を察知していた。  そしてアメリカ海軍もまた、太平洋にある空母部隊の総力を結集して日本艦隊の迎撃に向かう。  ミッドウェー沖で、レキシントン、サラトガ、ヨークタウン、エンタープライズ、ホーネットが、日本艦隊を待ち構えていた。  日米数百機の航空機が入り乱れる激戦となった、日米初の空母決戦たるミッドウェー海戦。  その幕が、今まさに切って落とされようとしていた。 (※本作は、「小説家になろう」様にて連載中の同名の作品を転載したものです。)

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

四代目 豊臣秀勝

克全
歴史・時代
アルファポリス第5回歴史時代小説大賞参加作です。 読者賞を狙っていますので、アルファポリスで投票とお気に入り登録してくださると助かります。 史実で三木城合戦前後で夭折した木下与一郎が生き延びた。 秀吉の最年長の甥であり、秀長の嫡男・与一郎が生き延びた豊臣家が辿る歴史はどう言うモノになるのか。 小牧長久手で秀吉は勝てるのか? 朝日姫は徳川家康の嫁ぐのか? 朝鮮征伐は行われるのか? 秀頼は生まれるのか。 秀次が後継者に指名され切腹させられるのか?

旧陸軍の天才?に転生したので大東亜戦争に勝ちます

竹本田重朗
ファンタジー
転生石原閣下による大東亜戦争必勝論 東亜連邦を志した同志達よ、ごきげんようである。どうやら、私は旧陸軍の石原莞爾に転生してしまったらしい。これは神の思し召しなのかもしれない。どうであれ、現代日本のような没落を回避するために粉骨砕身で働こうじゃないか。東亜の同志と手を取り合って真なる独立を掴み取るまで… ※超注意書き※ 1.政治的な主張をする目的は一切ありません 2.そのため政治的な要素は「濁す」又は「省略」することがあります 3.あくまでもフィクションのファンタジーの非現実です 4.そこら中に無茶苦茶が含まれています 5.現実的に存在する如何なる国家や地域、団体、人物と関係ありません 6.カクヨムとマルチ投稿 以上をご理解の上でお読みください

日は沈まず

ミリタリー好きの人
歴史・時代
1929年世界恐慌により大日本帝國も含め世界は大恐慌に陥る。これに対し大日本帝國は満州事変で満州を勢力圏に置き、積極的に工場や造船所などを建造し、経済再建と大幅な軍備拡張に成功する。そして1937年大日本帝國は志那事変をきっかけに戦争の道に走っていくことになる。当初、帝國軍は順調に進撃していたが、英米の援蔣ルートによる援助と和平の断念により戦争は泥沼化していくことになった。さらに1941年には英米とも戦争は避けられなくなっていた・・・あくまでも趣味の範囲での制作です。なので文章がおかしい場合もあります。 また参考資料も乏しいので設定がおかしい場合がありますがご了承ください。また、おかしな部分を次々に直していくので最初見た時から内容がかなり変わっている場合がありますので何か前の話と一致していないところがあった場合前の話を見直して見てください。おかしなところがあったら感想でお伝えしてもらえると幸いです。表紙は自作です。

隻眼の覇者・伊達政宗転生~殺された歴史教師は伊達政宗に転生し、天下統一を志す~

髙橋朔也
ファンタジー
 高校で歴史の教師をしていた俺は、同じ職場の教師によって殺されて死後に女神と出会う。転生の権利を与えられ、伊達政宗に逆行転生。伊達政宗による天下統一を実現させるため、父・輝宗からの信頼度を上げてまずは伊達家の家督を継ぐ!  戦国時代の医療にも目を向けて、身につけた薬学知識で生存率向上も目指し、果ては独眼竜と渾名される。  持ち前の歴史知識を使い、人を救い、信頼度を上げ、時には戦を勝利に導く。  推理と歴史が混ざっています。基本的な内容は史実に忠実です。一話が2000文字程度なので片手間に読めて、読みやすいと思います。これさえ読めば伊達政宗については大体理解出来ると思います。  ※毎日投稿。  ※歴史上に存在しない人物も登場しています。  小説家になろう、カクヨムでも本作を投稿しております。

大日本帝国、アラスカを購入して無双する

雨宮 徹
歴史・時代
1853年、ロシア帝国はクリミア戦争で敗戦し、財政難に悩んでいた。友好国アメリカにアラスカ購入を打診するも、失敗に終わる。1867年、すでに大日本帝国へと生まれ変わっていた日本がアラスカを購入すると金鉱や油田が発見されて……。 大日本帝国VS全世界、ここに開幕! ※架空の日本史・世界史です。 ※分かりやすくするように、領土や登場人物など世界情勢を大きく変えています。 ※ツッコミどころ満載ですが、ご勘弁を。

処理中です...