上 下
482 / 549
第9章 創天国の魂編

74.派兵の前準備

しおりを挟む
祐宗は八光御所に各藩の幕臣たちを招集していた。
そこでヘルト討伐の援軍として参戦する幕臣たちに対して主命を言い渡していた。
任命を受けた者たちは皆、引き締まった表情を見せている。

そんな中、貞広が祐宗に対して問い掛けの言葉を発する。

貞広
「しかし上様、セビカ国は我が国からは遠き場所にございます。どのようにして兵を送り出すのでございましょうか?」

セビカ国は創天国から遥か離れた海の向こうに存在する国である。
実際に貞広や宗重らが訪問するにあたっては大変な時間と労力を費やしている。
もしセビカ国に援軍を派兵するとなれば同様に、いやそれ以上の労力がかかるのでは無かろうか。
貞広はそうした心配をしている様子であった。

すると祐宗は自信ありげな表情を見せながら一人の男に対して声をかける。

祐宗
「あぁ、それならば既に手は打っておる故に心配には及ばぬ。守常よ、用意はできておるか?」

守常
「はっ、既に準備は出来ておりまする!」

その男とは、九条守常であった。

・九条 守常(くじょう もりつね)
天才発明家として名高い九条信常の嫡男。
幼少期より父の行う発明に対して興味を示し、自身もまた発明家を目指して修行を行っていた。
信常が第二次墨山の戦いで死去した事を受け、家督を相続する。
以後は志栄藩に幕臣として所属し、父の遺したとされる数々の発明品の設計書を元に改良を加えるなど品質の向上に努めていたという。
これらからも発明家としての才能は父である信常同様に優れていた事が分かる。

自身が心配事として挙げた問題は既に守常によって解決出来ている。
そう祐宗から聞かされた貞広は、今度は守常に対して問い掛けの言葉を掛ける。

貞広
「守常殿、一体何の用意をなされておったのでござるか?」

すると守常もまた祐宗に同じく自信に満ちた表情を見せながら答える。

守常
「それは、船にございます。幕府軍の者たちをセビカ国までお運びする船を発明しておりました。」

何やら守常は、船の発明を行っていたという。
それも、今回のように兵たちをセビカ国などといった遠方の地までを移動する為の船であるという。

貞広
「船?しかし、我が国には船などいくらでもございましょう。何故に船の発明などを?」

創天国は島国である為か、船に関する技術は当時の世界の中では優れた技術を持っていたとされている。
守常の父である信常も「海難知らず」といった道具を発明するなど、海を渡る為の手段の技術はそれなりに発達している事が良く分かるであろう。

これほどの技術があるというにも関わらず、何を今更になって船の発明などを行う必要があるというのだ。
先程の守常による説明を聞いても貞広はあまりぴんとは来ていない様子であった。

すると祐宗がそんな二人の間に入って喋り始める。

祐宗
「そこいらの船とは比べ物にならぬほどの大きい船じゃ。そして、大勢の兵たちが乗ってもびくともせぬ強き船にござる。」

今回、守常が発明したという船は国内で存在する船では最も規模の大きい物で大軍勢の収容が可能であるという。
さらに、頑丈性も従来の船や前述にもあった「海難知らず」以上である品質を保つ事で比較的安全に航海を行うことが可能になったという。

貞広
「なるほど、それであらばセビカ国までは確かに安全に軍勢を移動させられますな。」

貞広は納得した表情を見せていた。
しおりを挟む
感想 18

あなたにおすすめの小説

架空創世記

佐村孫千(サムラ マゴセン)
SF
この作品は、作者である佐村孫千が脳内連載で描いた世界の歴史を書き記したものでございます。 主に別作品である「架空戦国伝」の舞台となった「創天国(そうてんのくに)」の成り立ちを書いていくものとします。 壮大な架空歴史をお楽しみくださいませ!

暁のミッドウェー

三笠 陣
歴史・時代
 一九四二年七月五日、日本海軍はその空母戦力の総力を挙げて中部太平洋ミッドウェー島へと進撃していた。  真珠湾以来の歴戦の六空母、赤城、加賀、蒼龍、飛龍、翔鶴、瑞鶴が目指すのは、アメリカ海軍空母部隊の撃滅。  一方のアメリカ海軍は、暗号解読によって日本海軍の作戦を察知していた。  そしてアメリカ海軍もまた、太平洋にある空母部隊の総力を結集して日本艦隊の迎撃に向かう。  ミッドウェー沖で、レキシントン、サラトガ、ヨークタウン、エンタープライズ、ホーネットが、日本艦隊を待ち構えていた。  日米数百機の航空機が入り乱れる激戦となった、日米初の空母決戦たるミッドウェー海戦。  その幕が、今まさに切って落とされようとしていた。 (※本作は、「小説家になろう」様にて連載中の同名の作品を転載したものです。)

隻眼の覇者・伊達政宗転生~殺された歴史教師は伊達政宗に転生し、天下統一を志す~

髙橋朔也
ファンタジー
 高校で歴史の教師をしていた俺は、同じ職場の教師によって殺されて死後に女神と出会う。転生の権利を与えられ、伊達政宗に逆行転生。伊達政宗による天下統一を実現させるため、父・輝宗からの信頼度を上げてまずは伊達家の家督を継ぐ!  戦国時代の医療にも目を向けて、身につけた薬学知識で生存率向上も目指し、果ては独眼竜と渾名される。  持ち前の歴史知識を使い、人を救い、信頼度を上げ、時には戦を勝利に導く。  推理と歴史が混ざっています。基本的な内容は史実に忠実です。一話が2000文字程度なので片手間に読めて、読みやすいと思います。これさえ読めば伊達政宗については大体理解出来ると思います。  ※毎日投稿。  ※歴史上に存在しない人物も登場しています。  小説家になろう、カクヨムでも本作を投稿しております。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

四代目 豊臣秀勝

克全
歴史・時代
アルファポリス第5回歴史時代小説大賞参加作です。 読者賞を狙っていますので、アルファポリスで投票とお気に入り登録してくださると助かります。 史実で三木城合戦前後で夭折した木下与一郎が生き延びた。 秀吉の最年長の甥であり、秀長の嫡男・与一郎が生き延びた豊臣家が辿る歴史はどう言うモノになるのか。 小牧長久手で秀吉は勝てるのか? 朝日姫は徳川家康の嫁ぐのか? 朝鮮征伐は行われるのか? 秀頼は生まれるのか。 秀次が後継者に指名され切腹させられるのか?

旧陸軍の天才?に転生したので大東亜戦争に勝ちます

竹本田重朗
ファンタジー
転生石原閣下による大東亜戦争必勝論 東亜連邦を志した同志達よ、ごきげんようである。どうやら、私は旧陸軍の石原莞爾に転生してしまったらしい。これは神の思し召しなのかもしれない。どうであれ、現代日本のような没落を回避するために粉骨砕身で働こうじゃないか。東亜の同志と手を取り合って真なる独立を掴み取るまで… ※超注意書き※ 1.政治的な主張をする目的は一切ありません 2.そのため政治的な要素は「濁す」又は「省略」することがあります 3.あくまでもフィクションのファンタジーの非現実です 4.そこら中に無茶苦茶が含まれています 5.現実的に存在する如何なる国家や地域、団体、人物と関係ありません 6.カクヨムとマルチ投稿 以上をご理解の上でお読みください

甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ

朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】  戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。  永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。  信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。  この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。 *ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。

日は沈まず

ミリタリー好きの人
歴史・時代
1929年世界恐慌により大日本帝國も含め世界は大恐慌に陥る。これに対し大日本帝國は満州事変で満州を勢力圏に置き、積極的に工場や造船所などを建造し、経済再建と大幅な軍備拡張に成功する。そして1937年大日本帝國は志那事変をきっかけに戦争の道に走っていくことになる。当初、帝國軍は順調に進撃していたが、英米の援蔣ルートによる援助と和平の断念により戦争は泥沼化していくことになった。さらに1941年には英米とも戦争は避けられなくなっていた・・・あくまでも趣味の範囲での制作です。なので文章がおかしい場合もあります。 また参考資料も乏しいので設定がおかしい場合がありますがご了承ください。また、おかしな部分を次々に直していくので最初見た時から内容がかなり変わっている場合がありますので何か前の話と一致していないところがあった場合前の話を見直して見てください。おかしなところがあったら感想でお伝えしてもらえると幸いです。表紙は自作です。

処理中です...