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第9章 創天国の魂編

73.幕府軍の編成

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祐宗は帰国した貞広らの報告を聞き、セビカ国が切迫した状況にある事を知らされる。
そして数日後、各藩の幕臣たちは八光御所に集まっていた。

幕臣ら一同を前にして祐宗が喋り始める。

祐宗
「既に知っておる者もいると思うが、つい先月に我が幕府はセビカ国と申す異国と同盟を結んだ。」

祐宗は自国の創天国の創天幕府が異国の地、セビカ国と同盟を締結した事を皆に改めて伝えていた。
この事は八光御所周辺の藩や、主要な幕臣が治める藩に関しては既に周知していた。
しかし、一部地方の藩(主に外様大名程度)に関してはこの場で初めて知る事となったという。
その為、祐宗の言葉を聞いて驚きの表情を見せる幕臣たちも存在していた。

そんな中で続けて祐宗が言う。

祐宗
「じゃがそのセビカ国は今、ヘルトと申す敵国の脅威によって存続の危機に瀕しておると聞く。それ故に我が幕府はセビカに対して助太刀をいたす。」

我が国と同盟を締結したセビカ国は今、突如として反旗を翻して独立勢力を樹立したヘルトによってその存在を脅かされている。
新たに盟友となったセビカ国の為にも我が国からも援軍を派兵し、共に戦うべし。
祐宗は今後の幕府としての意向についてそのように述べていた。

そうして緊迫した雰囲気が漂う中、祐宗が声を上げる。

祐宗
「これより申す者に、ヘルトの討伐を命ず。」

祐宗が討伐を命じたのは次の者たちである。

幕府軍総指揮:志太 祐永(志太幕府 大老)
幕府軍軍師:口羽 崇房(志栄藩 家老)
幕府軍軍団長:宮本 宗重(志栄藩 家臣)
幕府軍副軍団長:木内 政武(志太幕府 客将)

祐永
「はっ、幕府軍の名に恥じぬようしっかりと総指揮を務めさせていただきまする!」

今回の軍勢の総指揮という大役を命ぜられた祐永は一瞬、戸惑いの表情を見せていた。
だがすぐに勇ましい表情へと切り替わり、祐宗に対してそう声を上げていた。

崇房
「ははっ!承知つかまつりましてございます!」

崇房もまた祐永に同じく驚きそして戸惑いの表情を見せていた。
どうやら自身が今回の役に選ばれたという事に半信半疑の様子である。

宗重
「御意にございます。久々の戦にございます故、腕が鳴りますわい…」

政武
「おうよ、ヘルトとかいう勢力の奴らを俺がぶちのめしてやろうじゃねえか!」

宗重と政武らはヘルト城に潜入を行い、その内情を良く知っているはず。
それらの事からこの二人は前線に出て戦うべきであろうという祐宗の判断であった。

突然に自身の名前が挙げられた事によって崇房は依然として困惑した表情をしている。
すると祐宗はそんな崇房に対して声をかける。

祐宗
「特に崇房よ、お主の御父上に負けぬ戦いぶりを存分に発揮するが良い!」

祐宗によるその言葉を聞いた崇房は、迷いの無い表情を見せて声を上げる。

崇房
「ははっ!幕府の名誉の為、ひいては口羽の名誉の為にも粉骨砕身する所存にございます!」

祐宗
「うむ、真に良き返事じゃ。その気持ち、忘れるでないぞ!」

・口羽 崇房(くちば たかふさ)
口羽崇冬の嫡男。
父である崇冬が口羽家の家督を相続した時期に世継として任命を受ける。
元服が戦国後期であった事から実戦に関しての経験は少なかったとされるが、幼少期においては父である崇冬と祖父の崇数から直々に教育の施しを受けて育った事からか、軍略の才能には非常に長けていたという。

実戦の経験に乏しかった崇房は、自身に軍師という大役が果たして務まるのであろうかと不安を抱いていた。
だが崇房は幼き時より父や祖父である崇冬と崇数の背中を見て育った身。
そうした環境に置かれた事により、知らず知らずの間に戦の才能は磨かれているはずだ。
かつて崇冬が初陣を飾った時もそうした才能を存分に発揮し、志太軍を勝利に導いていた事か何よりの証拠である。

この祐宗の想いを汲み取った崇房は、期待に応えるべく勇ましい表情をしていた。
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