架空戦国伝

第９章 創天国の魂編

67.セラージュへの帰還

宗重と政武によるヘルト城潜入の任務は無事に完了。
そうして二人はワニア島から再び船に乗り、セラージュへと帰還していた。

貞広
「宗重殿に政武殿よ、真によう戻られた！拙者は待ちかねておったのじゃぞ！」

セラージュへと戻って来た宗重らを見て貞広がたまらずそう声を上げていた。
これに対して宗重が静かな口調で答える。

宗重
「皆には長きこと待たせてしもうて真に申し訳ござらんかった…」

宗重らがセラージュを出発から実に半月近くの日数が経っていた。
任務を終えて無事に彼らが帰還する日を貞広らは今か今かと待ち望んでいたのである。

すると次に長継が宗重らに問い掛け始める。

長継
「して、ヘルト城の情報は得られたのでございますかな？」

これには得意気な表情を見せながら政武が答える。

政武
「あぁ、安心しな。それならば俺が色々と見てきたぜ。どうも少しばかし爺さんが手間取っておったようでな…」

長継
「うむ？宗重殿はどうかなされたのでござるか？」

今回の任務は、まるで主に政武自身が活躍したかのような物言いである。
そして宗重の事に関しては、少し言葉を濁すようにして言っていた。
この政武の様子に対して長継は不思議そうな表情であった。

宗重が次第に苦い表情を浮かべ始めながら答える。

宗重
「うむ…まぁ、此度は政武が代わりに活躍してくれたことは事実にござる故、儂が全て話そう…」

そう言うと宗重が長継らに対して今回のヘルト城への潜入で起きた事を報告し始める。

ヘルト城に向かう途中のワニア山で政武が崖崩れに巻き込まれた事。
城内に潜入後、かつて自身が暗殺したはずの柳幸盛の亡霊と思わしき幻を見た事。
先の崖崩れに遭った事で生死不明と思われていた政武は奇跡的に一命を取り留めており、後に自身の命を救ってくれた事。

など、今回の任務で宗重らの身に起きた事を細やかに報告していた。

貞広
「ほう、かようなことが…真にそれは大変でございましたな…」

宗重による報告を聞いた貞広は神妙な顔つきをしていた。
そして政武に対して声をかける。

貞広
「それにしても、此度の政武殿は見事にございますな。」

貞広は単身でヘルト城への潜入を果たし、多くの情報を入手出来た言う政武に対して感心している様子であった。
たとえ困難な事であろうとも真っ向から立ち向かい、そして最後には成功を収める。
この政豊が持つ不屈の精神は、どうやら子である政武にも受け継がれているようである。

政武
「忍びとしての働きは実に久々ではあったが、どうやら俺の体は覚えておったようじゃな。」

政武自身、忍者としての活動は幼年から少年期にかけての期間であった。
その短い期間に加えてさらに空白の期間があった故に、果たして実力を発揮出来るのであろうか。
と、いった不安が政武の中でもあったという。

だが実際に任務を遂行した事により、その不安は杞憂となった。
「忍びとしての期間は少なくまた空いてはおれど、我が身は忘れてはおらず」
こうした言葉を残していた事から政武自身も今回の活躍は想定外であったという事が伺える。

やがてドヴェルクは急かすように宗重らに対して問い掛けの言葉を発する。

ドヴェルク
「それでは早速ではありますが、ヘルト城のカルロスらの現状を聞かせてもらえますか？」

政武
「うむ、そうじゃったな。では、これから報告するぜ。」

政武は一転して真面目な表情へと切り替わっていた。