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第9章 創天国の魂編
45.正義と犠牲
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長き航海の末に宗重と政武らはワニア島に到着。
彼らは船から降り、今回の潜入地であるヘルト城を目指して進み始めていた。
そうして二人はホミテの村を抜けた頃、政武が宗重に対して言葉を投げかける。
政武
「爺さんよ、あんたも気付いてはおるか?」
宗重
「うむ、お互いの街並みのことにござろう?」
政武
「あぁ、何じゃか不思議な感じであるな。」
二人は、先程まで目にしていたホミテの村の様子と今の街並みが全く異なっていた事に気付いていたようである。
すると宗重が悲しげな表情を浮かべながら呟き始める。
宗重
「どうもワニアの者たちが追いやられておるようで儂は不憫に感じるわい…」
今からおよそ百年ほど昔、ワニアはセビカという他国からの介入が始まった。
不安定となっていた情勢を安定させる為の国策として、ワニア自らがセビカの支配下となる事を望んでの事であったという。
そうしてセビカによる統治が行われて数年の月日が流れた頃には安定した情勢を取り戻し、今日のワニアが存在している。
しかし、その代償としてワニアで古くから守り続けていた文化は皮肉な事にも国内の復興と共に薄れていったようだ。
本来、ワニアのように古くから続く文化は未来永劫に渡って受け継がれるべきであろう。
そうした事にも関わらず現在はこの有様が非常に残念でならない、と宗重は嘆きの声を上げていた。
すると政武が軽く鼻で笑って答える。
政武
「ふん、よく言うぜ。あんたら幕府も似たようなことをしておるように俺は思うがな。」
宗重
「な、何じゃと?」
政武
「では聞くが、平穏に暮らしておった国の奴らに対して勝手な正義を押し付けておったのは一体誰であろうかな?」
宗重
「ぐっ…そ、それは…」
志太幕府を開くに至るまでに志太家が今までに各国に対して行った事。
他国への介入から始まり、それに対して反対する勢力があれば徹底的に武をもって討ち滅ぼしていった。
その中でも不本意な戦いをけしかけられた事により、滅亡させられてしまった国も少なくは無かった。
勝った側が正義で負けた側は悪であるなどと言った極端な思想が罷り通っていた実に異常とも言える時代であったのだ。
口を紡ぐ宗重を横目に政武が続けて喋り始める。
政武
「確かに、昔みたいに殿さん同志が戦をすることは無くなった。じゃが、これが泰平の世とやらというものであるかは俺には分からぬ。」
その言葉を聞いた宗重が重々しい口調で答え始める。
宗重
「泰平の世はあらゆる犠牲の上で成り立っておる故、仕方の無きことであった。そうであるとしか今は答えることは出来ぬ…」
何も我ら志太家は好んで相手の国を滅ぼしていったわけでは無い。
全てはいつ終わるとも知れぬ戦国の世を終わらせる為、志太家は手を尽くしたのである。
それには数々の犠牲が生まれる事となろう。
だが、犠牲を恐れていてはいつまで経っても何も変わりはしない。
そうした犠牲も承知の上で我ら志太家は天下を統一したのである。
宗重は必死な表情で政武に対してそう説いていた。
それに対して政武は冷ややかな態度で言葉を返す。
政武
「ほほう、ではその犠牲になった奴らは果たしてそれで浮かばれるとでも思っているのかい?」
志太家は犠牲をも覚悟の上で動き続け、最終的には幕府を開く事で泰平の世を訪れさせる事が出来た。
だが、それは余りにも大き過ぎる代償を払った事になるであろう。
泰平の世の為、その言葉の元に一体どれほどの者たちが犠牲になったというのだ?
実に率直な政武の意見にそれ以降は言い返す事が出来なかったのか、宗重は黙り込んでしまった。
宗重
「今回ばかりは政武の奴の申す通りであったのう…むぅ…」
政武によって言い負かされた宗重は、苦い表情を見せながらそう呟いていた。
彼らは船から降り、今回の潜入地であるヘルト城を目指して進み始めていた。
そうして二人はホミテの村を抜けた頃、政武が宗重に対して言葉を投げかける。
政武
「爺さんよ、あんたも気付いてはおるか?」
宗重
「うむ、お互いの街並みのことにござろう?」
政武
「あぁ、何じゃか不思議な感じであるな。」
二人は、先程まで目にしていたホミテの村の様子と今の街並みが全く異なっていた事に気付いていたようである。
すると宗重が悲しげな表情を浮かべながら呟き始める。
宗重
「どうもワニアの者たちが追いやられておるようで儂は不憫に感じるわい…」
今からおよそ百年ほど昔、ワニアはセビカという他国からの介入が始まった。
不安定となっていた情勢を安定させる為の国策として、ワニア自らがセビカの支配下となる事を望んでの事であったという。
そうしてセビカによる統治が行われて数年の月日が流れた頃には安定した情勢を取り戻し、今日のワニアが存在している。
しかし、その代償としてワニアで古くから守り続けていた文化は皮肉な事にも国内の復興と共に薄れていったようだ。
本来、ワニアのように古くから続く文化は未来永劫に渡って受け継がれるべきであろう。
そうした事にも関わらず現在はこの有様が非常に残念でならない、と宗重は嘆きの声を上げていた。
すると政武が軽く鼻で笑って答える。
政武
「ふん、よく言うぜ。あんたら幕府も似たようなことをしておるように俺は思うがな。」
宗重
「な、何じゃと?」
政武
「では聞くが、平穏に暮らしておった国の奴らに対して勝手な正義を押し付けておったのは一体誰であろうかな?」
宗重
「ぐっ…そ、それは…」
志太幕府を開くに至るまでに志太家が今までに各国に対して行った事。
他国への介入から始まり、それに対して反対する勢力があれば徹底的に武をもって討ち滅ぼしていった。
その中でも不本意な戦いをけしかけられた事により、滅亡させられてしまった国も少なくは無かった。
勝った側が正義で負けた側は悪であるなどと言った極端な思想が罷り通っていた実に異常とも言える時代であったのだ。
口を紡ぐ宗重を横目に政武が続けて喋り始める。
政武
「確かに、昔みたいに殿さん同志が戦をすることは無くなった。じゃが、これが泰平の世とやらというものであるかは俺には分からぬ。」
その言葉を聞いた宗重が重々しい口調で答え始める。
宗重
「泰平の世はあらゆる犠牲の上で成り立っておる故、仕方の無きことであった。そうであるとしか今は答えることは出来ぬ…」
何も我ら志太家は好んで相手の国を滅ぼしていったわけでは無い。
全てはいつ終わるとも知れぬ戦国の世を終わらせる為、志太家は手を尽くしたのである。
それには数々の犠牲が生まれる事となろう。
だが、犠牲を恐れていてはいつまで経っても何も変わりはしない。
そうした犠牲も承知の上で我ら志太家は天下を統一したのである。
宗重は必死な表情で政武に対してそう説いていた。
それに対して政武は冷ややかな態度で言葉を返す。
政武
「ほほう、ではその犠牲になった奴らは果たしてそれで浮かばれるとでも思っているのかい?」
志太家は犠牲をも覚悟の上で動き続け、最終的には幕府を開く事で泰平の世を訪れさせる事が出来た。
だが、それは余りにも大き過ぎる代償を払った事になるであろう。
泰平の世の為、その言葉の元に一体どれほどの者たちが犠牲になったというのだ?
実に率直な政武の意見にそれ以降は言い返す事が出来なかったのか、宗重は黙り込んでしまった。
宗重
「今回ばかりは政武の奴の申す通りであったのう…むぅ…」
政武によって言い負かされた宗重は、苦い表情を見せながらそう呟いていた。
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