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第9章 創天国の魂編
31.セビカの地
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政武に幕府の船の舵を預けて経つこと三日。
一行は無事、ドヴェルクと長継の祖国セビカのセラージュへと到着した。
※青丸がセラージュ
ドヴェルク
「帰って来た…帰って来たのですね…」
ドヴェルクは目を潤ませながら無事に祖国へと帰還できた事に対して安堵の声を上げていた。
一方、貞広と宗重らは初めて目にするセビカの地に対して口を開き始める。
貞広
「ふむ、ここがセビカと申す地か…」
宗重
「この齢にして、かような異国の地に儂が足を踏み入れることになろうとは思わなんだわい。」
自国で生まれた者は、自国の中の文化だけしか知らずにその生涯を終える。
この時代においての創天国は異国との交流はほぼ皆無に等しかった為、そのような民たちが殆どであった。
まさに、井の中の蛙大海を知らずと言っても良いであろう。
だが、少なくとも貞広や宗重に限ってはこの者たちとは少し違った体験を味わってはいるはずだ。
長継
「政武殿、礼を申しますぞ。」
長継は政武に対して深々と頭を下げて感謝の意を表してした。
すると政武は照れ臭そうな表情を見せながら答え始める。
政武
「へへっ、俺もあんたらの役に立てたようで何よりだぜ。」
長継による礼の言葉を聞いた政武は、彼らしくない素直な様子を見せていた。
政武
「じゃが、流石にこの俺もかようなまでの長き航海は初めてであった故、今回の航海は堪えたがな…」
今回の航海は、政武が亀去島海賊衆として活動を初めてからかつて無い程の長期に渡るものであったという。
海賊衆という航海技術に長けている集団であったとしてもこうした声が上がる程だ。
いかに、セビカが創天国から遙か離れた場所にある国であるという事が分かるであろう。
宗重
「政武よ、真にようやってくれた。儂からも礼を申す。そして我らが創天国に戻った際には、お主の働きを上様にお伝えして褒美を取らせてあげようぞ。」
宗重もまた長継らと同じく政武に対して感謝の言葉を述べていた。
そしてさらに、自身らが創天国に帰国した際には将軍である祐宗に掛け合って褒美を取らせてあげようとまで言っていた。
その宗重の言葉を聞いた政武が胸を張りながら声を上げる。
政武
「ほほう、それじゃあ俺も幕臣となるってわけかい?」
将軍である祐宗によって今回の働きを認めれれば、褒美は一体いくらほど貰えるのであろうか?
いや、それよりも幕臣という身分が与えられるかも知れない。
だとすれば、旗本程度の役職が妥当なところであろうか?
旗本であろうとも、それなりの領地を有する立派な役職者だ。
これを機に自身が政に携わってみるのも悪くは無いかも知れない。
など、政武は勝手に妄想し始めているような様子であった。
そうした浮足立った様子を見せている政武に宗重がすかさず一喝する。
宗重
「たわけ!調子に乗るでないわ!」
すると政武が真剣な表情をして喋り始める。
政武
「まぁ、俺が幕府に仕えるって柄では無い事はあんたらも良く分かってるだろ?俺は、これからもあんたらの力にさえなれりゃあ何だってもいいぜ。」
政武は先程に描いていた妄想とは同時にもし、自身が実際に幕臣となった場合の事も考えていた。
確かに幕臣となって領地を与えられれば自身はもちろんの事、配下の男たちの生活も安定したものとはなるであろう。
しかし、自身は今まで政の「ま」の字も知らぬ程の学力は兼ね備えてはいない。
「武」をもって相手を屈服させるなどという余りにも物騒な思想の元で今まで生きて来た者に果たしてそのような役が務まるであろうか…
政武は、自分自身の性質を実に良く分かっているようであった。
貞広
「いずれにせよ全ては上様がお決めになられるかと。それ故、今はあれこれと考えたりなされるべきではござらぬ。」
貞広は釘を刺すように政武に対してそう言っていた。
一行は無事、ドヴェルクと長継の祖国セビカのセラージュへと到着した。
※青丸がセラージュ
ドヴェルク
「帰って来た…帰って来たのですね…」
ドヴェルクは目を潤ませながら無事に祖国へと帰還できた事に対して安堵の声を上げていた。
一方、貞広と宗重らは初めて目にするセビカの地に対して口を開き始める。
貞広
「ふむ、ここがセビカと申す地か…」
宗重
「この齢にして、かような異国の地に儂が足を踏み入れることになろうとは思わなんだわい。」
自国で生まれた者は、自国の中の文化だけしか知らずにその生涯を終える。
この時代においての創天国は異国との交流はほぼ皆無に等しかった為、そのような民たちが殆どであった。
まさに、井の中の蛙大海を知らずと言っても良いであろう。
だが、少なくとも貞広や宗重に限ってはこの者たちとは少し違った体験を味わってはいるはずだ。
長継
「政武殿、礼を申しますぞ。」
長継は政武に対して深々と頭を下げて感謝の意を表してした。
すると政武は照れ臭そうな表情を見せながら答え始める。
政武
「へへっ、俺もあんたらの役に立てたようで何よりだぜ。」
長継による礼の言葉を聞いた政武は、彼らしくない素直な様子を見せていた。
政武
「じゃが、流石にこの俺もかようなまでの長き航海は初めてであった故、今回の航海は堪えたがな…」
今回の航海は、政武が亀去島海賊衆として活動を初めてからかつて無い程の長期に渡るものであったという。
海賊衆という航海技術に長けている集団であったとしてもこうした声が上がる程だ。
いかに、セビカが創天国から遙か離れた場所にある国であるという事が分かるであろう。
宗重
「政武よ、真にようやってくれた。儂からも礼を申す。そして我らが創天国に戻った際には、お主の働きを上様にお伝えして褒美を取らせてあげようぞ。」
宗重もまた長継らと同じく政武に対して感謝の言葉を述べていた。
そしてさらに、自身らが創天国に帰国した際には将軍である祐宗に掛け合って褒美を取らせてあげようとまで言っていた。
その宗重の言葉を聞いた政武が胸を張りながら声を上げる。
政武
「ほほう、それじゃあ俺も幕臣となるってわけかい?」
将軍である祐宗によって今回の働きを認めれれば、褒美は一体いくらほど貰えるのであろうか?
いや、それよりも幕臣という身分が与えられるかも知れない。
だとすれば、旗本程度の役職が妥当なところであろうか?
旗本であろうとも、それなりの領地を有する立派な役職者だ。
これを機に自身が政に携わってみるのも悪くは無いかも知れない。
など、政武は勝手に妄想し始めているような様子であった。
そうした浮足立った様子を見せている政武に宗重がすかさず一喝する。
宗重
「たわけ!調子に乗るでないわ!」
すると政武が真剣な表情をして喋り始める。
政武
「まぁ、俺が幕府に仕えるって柄では無い事はあんたらも良く分かってるだろ?俺は、これからもあんたらの力にさえなれりゃあ何だってもいいぜ。」
政武は先程に描いていた妄想とは同時にもし、自身が実際に幕臣となった場合の事も考えていた。
確かに幕臣となって領地を与えられれば自身はもちろんの事、配下の男たちの生活も安定したものとはなるであろう。
しかし、自身は今まで政の「ま」の字も知らぬ程の学力は兼ね備えてはいない。
「武」をもって相手を屈服させるなどという余りにも物騒な思想の元で今まで生きて来た者に果たしてそのような役が務まるであろうか…
政武は、自分自身の性質を実に良く分かっているようであった。
貞広
「いずれにせよ全ては上様がお決めになられるかと。それ故、今はあれこれと考えたりなされるべきではござらぬ。」
貞広は釘を刺すように政武に対してそう言っていた。
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