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第9章 創天国の魂編
28.政武の思惑
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幕府の船の舵を取る事を任された政武は、部下たちと共に安全第一の元で航海を始めた。
先刻に幕府に対して政武率いる亀去島海賊衆が無礼をはたらいた事に対してのお詫びのつもりであろう。
だがそれはあくまでも名目上であり、彼自身の力を幕府を知らしめる為でもあった。
政武の配下である一人の男が政武に問いかける。
男
「お頭、一体どうされようというのですか?」
幕府と和睦したとは言え、何故にそこまで幕府に対して諂う必要があるというのか。
どうやら配下の男たちは皆、政武による今回の行動について疑問を感じているようであった。
政武
「俺の勘違いによって幕府の者たちに迷惑をかけた故の罪滅ぼしじゃ。ただ、それだけではないぞ。」
胸を張りながら政武が続けて言う。
政武
「亀去島海賊衆としての力を幕府に見せつけてやるのよ。さすれば、俺たちもこの幕府ででかい顔ができるってもんだろ。」
先程に宗重が口にしていた通り政武は、幕府に対しての贖罪のつもりで今回の行動を起こしたと言っていた。
だがそれはあくまでも建前であり、本心では幕府に対して自身が束ねる亀去島海賊衆の力を世に知らしめる良い機会であると考えているようであった。
男
「なるほど、お頭はそこまでお考えになられていたので。流石にございますな。」
男たちは皆、政武の言葉に対して納得しているようであった。
そしてそんな男たち一人一人の顔を見ながら政武が言う。
政武
「それ故に、今までのようにむやみやたらと狼藉をはたらくような真似はもうせんで済む。これがどういうことか分かるか?」
しかし、これに対しては男たちはどうも理解できていないようであった。
すると自信有りげな表情を男たちに見せて政武が答える。
政武
「お前たちを危険にさらす必要が亡き故、我ら亀去島海賊衆は安泰ぞ。」
海賊衆の者とて一人の人間。
生活をしていくうえでの収入は当然ながら必要な故に、略奪を行う事がしばしばあったという。
それは海賊衆の「生業」として仕方の無い事ではあるが一方では多大な危険を伴い、時として命を落とす者も少なくは無かった。
だが、亀去島海賊衆の力が幕府によって認めた暁には、その庇護を受ける事でこれまで行っていた海賊衆としての活動をしなくても良くなる。
つまり、以後は生計を立てる為の略奪行為を行う必要が無くなるのである。
そうすれば自身はもちろん配下の男たちも命を狙われる危険性も減り、皆が安心して暮らせるであろう。
あくまでもこれは政武個人としての考えには過ぎなかったが、男たちは納得し始めていた。
一方、幕府側では貞広が腕を組んで何やら考え込んでいる様子だ。
貞広
「それにしても、政武殿は真に何を考えているやら拙者には分かりませぬ…」
どうやら貞広は、先程の政武の行動は何とも理解し難いと考えているようであった。
それに対し宗重が冷静な様子で口を開く。
宗重
「恐らくは今後、あやつらが率いる海賊衆は先刻のような無茶な真似はせぬであろう。」
そして次第に重々しい表情に切り替わりながら言う。
宗重
「じゃが、それは我ら幕府が亀去島海賊衆の力を認めた場合ではあろうがな。もし、そうでなければ…」
貞広
「亀去島海賊衆を生かすも殺すも政武次第、ということにございますか。」
宗重と貞広は、真剣な表情をしていた。
先刻に幕府に対して政武率いる亀去島海賊衆が無礼をはたらいた事に対してのお詫びのつもりであろう。
だがそれはあくまでも名目上であり、彼自身の力を幕府を知らしめる為でもあった。
政武の配下である一人の男が政武に問いかける。
男
「お頭、一体どうされようというのですか?」
幕府と和睦したとは言え、何故にそこまで幕府に対して諂う必要があるというのか。
どうやら配下の男たちは皆、政武による今回の行動について疑問を感じているようであった。
政武
「俺の勘違いによって幕府の者たちに迷惑をかけた故の罪滅ぼしじゃ。ただ、それだけではないぞ。」
胸を張りながら政武が続けて言う。
政武
「亀去島海賊衆としての力を幕府に見せつけてやるのよ。さすれば、俺たちもこの幕府ででかい顔ができるってもんだろ。」
先程に宗重が口にしていた通り政武は、幕府に対しての贖罪のつもりで今回の行動を起こしたと言っていた。
だがそれはあくまでも建前であり、本心では幕府に対して自身が束ねる亀去島海賊衆の力を世に知らしめる良い機会であると考えているようであった。
男
「なるほど、お頭はそこまでお考えになられていたので。流石にございますな。」
男たちは皆、政武の言葉に対して納得しているようであった。
そしてそんな男たち一人一人の顔を見ながら政武が言う。
政武
「それ故に、今までのようにむやみやたらと狼藉をはたらくような真似はもうせんで済む。これがどういうことか分かるか?」
しかし、これに対しては男たちはどうも理解できていないようであった。
すると自信有りげな表情を男たちに見せて政武が答える。
政武
「お前たちを危険にさらす必要が亡き故、我ら亀去島海賊衆は安泰ぞ。」
海賊衆の者とて一人の人間。
生活をしていくうえでの収入は当然ながら必要な故に、略奪を行う事がしばしばあったという。
それは海賊衆の「生業」として仕方の無い事ではあるが一方では多大な危険を伴い、時として命を落とす者も少なくは無かった。
だが、亀去島海賊衆の力が幕府によって認めた暁には、その庇護を受ける事でこれまで行っていた海賊衆としての活動をしなくても良くなる。
つまり、以後は生計を立てる為の略奪行為を行う必要が無くなるのである。
そうすれば自身はもちろん配下の男たちも命を狙われる危険性も減り、皆が安心して暮らせるであろう。
あくまでもこれは政武個人としての考えには過ぎなかったが、男たちは納得し始めていた。
一方、幕府側では貞広が腕を組んで何やら考え込んでいる様子だ。
貞広
「それにしても、政武殿は真に何を考えているやら拙者には分かりませぬ…」
どうやら貞広は、先程の政武の行動は何とも理解し難いと考えているようであった。
それに対し宗重が冷静な様子で口を開く。
宗重
「恐らくは今後、あやつらが率いる海賊衆は先刻のような無茶な真似はせぬであろう。」
そして次第に重々しい表情に切り替わりながら言う。
宗重
「じゃが、それは我ら幕府が亀去島海賊衆の力を認めた場合ではあろうがな。もし、そうでなければ…」
貞広
「亀去島海賊衆を生かすも殺すも政武次第、ということにございますか。」
宗重と貞広は、真剣な表情をしていた。
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