432 / 549
第9章 創天国の魂編
24.誤解
しおりを挟む
政武らは嵐によって襲われたところを幕府の者たちにより、奇跡的に救出されていた。
やがて政武は意識を取り戻し、宗重らの姿を見た事で険しい表情を見せる。
「何故に我らを救い出した。じっくりと処刑をするのであればさっさとこの首を刎ねるがよい。」
など悪態をつく政武に対して宗重は一喝し、政武を黙らせた。
そして宗重が静かに口を開く。
宗重
「お主はな、かようなことで死すべき者ではござらん。」
宗重は政武に対して、このような場所で死んではならないと言っていた。
再び政武が開き直って問いかける。
政武
「じゃから、じわじわと処刑する為にこうして俺たちを捕まえたのであろう?違うか?」
政武は、自身たちが幕府の者たちの手によってじっくりと時間をかけて処刑されるであろうと考えているようだ。
これが戦いに敗れた者たちの哀しき末路なのであろうか…
そう思った政武は、顔をうつむけていた。
その様子に対して宗重が続けて言う。
宗重
「ここでお主に死なれては、冥府におる政豊殿に申し訳が立たぬ故のことにござる。」
するとうつむけていた顔を一気に上げた政武が声を上げる。
政武
「はぁ?なんじゃそれは?どうも俺は貴様らの申しておることは解せぬな。」
自身の父親である政豊に対して何をそこまで気を使う必要があるというのだ。
政武は宗重の言っている事が理解出来ぬようであった。
そうしていると貞広が間に割って入って答え始める。
貞広
「お主の御父上である木内政豊の御恩に報いるべく、その御身をお助けした次第にござる。」
幕府が受けた木内政豊による御恩。
その言葉を聞いた政武はみるみるうちに険しい表情へと切り替わり、怒鳴り声を上げる。
政武
「俺の親父は、あんたら幕府を恨みながら死んだわ。じゃというのに、よくもぬけぬけとそのようなことを!」
政武の父である政豊は志太幕府が成立した後に病にかかり、体調を崩し始めていた。
それからは日を重ねるごとに容態は悪化していき、翌年には病死したという。
あれほど元気であった政豊がこの短い期間で死去するに至ったのは、幕府に対しての禍根があった故であると政武は言っていた。
宗重
「幕府に恨み、か…ふむ、お主は真にそのように思うておるのか?」
政武
「あぁ。死の間際まであんたら幕府の者たちの名前をうわ言のように申しておったからな。」
政豊が亡くなる数日前の事である。
大勢の部下たちが見守る中、床に臥せていた政豊はその意識を失いつつあった。
そんな時に政豊は「志太祐宗、志太祐永、口羽崇冬、宮本宗重…」などといった志太幕府の者たちの名前を挙げては悔しげな表情を見せていたという。
そして数日が経ち、政豊はこの世を去った。
うわ言のように幕府の人間の名前を挙げ続けた後の死去。
「自身が政豊の代わりとなり、幕府に対しての恨みを晴らしてやろう。」
そのような政豊の死を見届けた政武は、そう誓うのであった。
宗重
「なるほどのぅ…ふむ、良かろう。政武殿よ、これをよく見てみよ。」
宗重は懐から一刀の小刀を取り出し。政武に見せていた。
小刀を見た政武が目を見開いて言う。
政武
「はっ!そ、それは…何故に貴様が持っておるというのじゃ?」
その小刀は、何とも派手な色合いをしていた。
宗重
「政豊殿愛刀の虎返しにござる。政豊殿が儂にくださったものじゃ。」
・虎返し(とらがえし)
木内政豊が愛用していたとされる小刀。
鞘には柳盗賊衆が好んで用いた虎の模様が描かれていた。
志太幕府が成立した数日後に政豊は、友情の証として宗重にこの虎返しを贈ったと言われている。
宗重
「そして、祐宗様は政豊殿より御愛馬を頂かれた。これでもお主の父上は我が幕府に恨みを抱いておったといえますかな?」
政豊は自身が愛用していた刀を幕府の人間である宗重に贈り、さらには自身の愛馬も祝いの品として祐宗に贈っていたという。
幕府に対して少なからずでも恨みがあろうものならば、このような事を行わないであろう。
むしろ政豊は、自身が病に冒されて死を間近にした事に対しての悔しさを感じていただけでは無かろうか。
宗重は小刀を強く握りしめながらそう語っていた。
すると政武は宗重らから顔をそむけて言う。
政武
「くっ、俺が…間違っておったというのか…親父は馬鹿者よ。真に大馬鹿者なくそ親父よ…」
政武の目には涙が浮かんでいた。
やがて政武は意識を取り戻し、宗重らの姿を見た事で険しい表情を見せる。
「何故に我らを救い出した。じっくりと処刑をするのであればさっさとこの首を刎ねるがよい。」
など悪態をつく政武に対して宗重は一喝し、政武を黙らせた。
そして宗重が静かに口を開く。
宗重
「お主はな、かようなことで死すべき者ではござらん。」
宗重は政武に対して、このような場所で死んではならないと言っていた。
再び政武が開き直って問いかける。
政武
「じゃから、じわじわと処刑する為にこうして俺たちを捕まえたのであろう?違うか?」
政武は、自身たちが幕府の者たちの手によってじっくりと時間をかけて処刑されるであろうと考えているようだ。
これが戦いに敗れた者たちの哀しき末路なのであろうか…
そう思った政武は、顔をうつむけていた。
その様子に対して宗重が続けて言う。
宗重
「ここでお主に死なれては、冥府におる政豊殿に申し訳が立たぬ故のことにござる。」
するとうつむけていた顔を一気に上げた政武が声を上げる。
政武
「はぁ?なんじゃそれは?どうも俺は貴様らの申しておることは解せぬな。」
自身の父親である政豊に対して何をそこまで気を使う必要があるというのだ。
政武は宗重の言っている事が理解出来ぬようであった。
そうしていると貞広が間に割って入って答え始める。
貞広
「お主の御父上である木内政豊の御恩に報いるべく、その御身をお助けした次第にござる。」
幕府が受けた木内政豊による御恩。
その言葉を聞いた政武はみるみるうちに険しい表情へと切り替わり、怒鳴り声を上げる。
政武
「俺の親父は、あんたら幕府を恨みながら死んだわ。じゃというのに、よくもぬけぬけとそのようなことを!」
政武の父である政豊は志太幕府が成立した後に病にかかり、体調を崩し始めていた。
それからは日を重ねるごとに容態は悪化していき、翌年には病死したという。
あれほど元気であった政豊がこの短い期間で死去するに至ったのは、幕府に対しての禍根があった故であると政武は言っていた。
宗重
「幕府に恨み、か…ふむ、お主は真にそのように思うておるのか?」
政武
「あぁ。死の間際まであんたら幕府の者たちの名前をうわ言のように申しておったからな。」
政豊が亡くなる数日前の事である。
大勢の部下たちが見守る中、床に臥せていた政豊はその意識を失いつつあった。
そんな時に政豊は「志太祐宗、志太祐永、口羽崇冬、宮本宗重…」などといった志太幕府の者たちの名前を挙げては悔しげな表情を見せていたという。
そして数日が経ち、政豊はこの世を去った。
うわ言のように幕府の人間の名前を挙げ続けた後の死去。
「自身が政豊の代わりとなり、幕府に対しての恨みを晴らしてやろう。」
そのような政豊の死を見届けた政武は、そう誓うのであった。
宗重
「なるほどのぅ…ふむ、良かろう。政武殿よ、これをよく見てみよ。」
宗重は懐から一刀の小刀を取り出し。政武に見せていた。
小刀を見た政武が目を見開いて言う。
政武
「はっ!そ、それは…何故に貴様が持っておるというのじゃ?」
その小刀は、何とも派手な色合いをしていた。
宗重
「政豊殿愛刀の虎返しにござる。政豊殿が儂にくださったものじゃ。」
・虎返し(とらがえし)
木内政豊が愛用していたとされる小刀。
鞘には柳盗賊衆が好んで用いた虎の模様が描かれていた。
志太幕府が成立した数日後に政豊は、友情の証として宗重にこの虎返しを贈ったと言われている。
宗重
「そして、祐宗様は政豊殿より御愛馬を頂かれた。これでもお主の父上は我が幕府に恨みを抱いておったといえますかな?」
政豊は自身が愛用していた刀を幕府の人間である宗重に贈り、さらには自身の愛馬も祝いの品として祐宗に贈っていたという。
幕府に対して少なからずでも恨みがあろうものならば、このような事を行わないであろう。
むしろ政豊は、自身が病に冒されて死を間近にした事に対しての悔しさを感じていただけでは無かろうか。
宗重は小刀を強く握りしめながらそう語っていた。
すると政武は宗重らから顔をそむけて言う。
政武
「くっ、俺が…間違っておったというのか…親父は馬鹿者よ。真に大馬鹿者なくそ親父よ…」
政武の目には涙が浮かんでいた。
0
お気に入りに追加
98
あなたにおすすめの小説
架空創世記
佐村孫千(サムラ マゴセン)
SF
この作品は、作者である佐村孫千が脳内連載で描いた世界の歴史を書き記したものでございます。
主に別作品である「架空戦国伝」の舞台となった「創天国(そうてんのくに)」の成り立ちを書いていくものとします。
壮大な架空歴史をお楽しみくださいませ!
暁のミッドウェー
三笠 陣
歴史・時代
一九四二年七月五日、日本海軍はその空母戦力の総力を挙げて中部太平洋ミッドウェー島へと進撃していた。
真珠湾以来の歴戦の六空母、赤城、加賀、蒼龍、飛龍、翔鶴、瑞鶴が目指すのは、アメリカ海軍空母部隊の撃滅。
一方のアメリカ海軍は、暗号解読によって日本海軍の作戦を察知していた。
そしてアメリカ海軍もまた、太平洋にある空母部隊の総力を結集して日本艦隊の迎撃に向かう。
ミッドウェー沖で、レキシントン、サラトガ、ヨークタウン、エンタープライズ、ホーネットが、日本艦隊を待ち構えていた。
日米数百機の航空機が入り乱れる激戦となった、日米初の空母決戦たるミッドウェー海戦。
その幕が、今まさに切って落とされようとしていた。
(※本作は、「小説家になろう」様にて連載中の同名の作品を転載したものです。)
隻眼の覇者・伊達政宗転生~殺された歴史教師は伊達政宗に転生し、天下統一を志す~
髙橋朔也
ファンタジー
高校で歴史の教師をしていた俺は、同じ職場の教師によって殺されて死後に女神と出会う。転生の権利を与えられ、伊達政宗に逆行転生。伊達政宗による天下統一を実現させるため、父・輝宗からの信頼度を上げてまずは伊達家の家督を継ぐ!
戦国時代の医療にも目を向けて、身につけた薬学知識で生存率向上も目指し、果ては独眼竜と渾名される。
持ち前の歴史知識を使い、人を救い、信頼度を上げ、時には戦を勝利に導く。
推理と歴史が混ざっています。基本的な内容は史実に忠実です。一話が2000文字程度なので片手間に読めて、読みやすいと思います。これさえ読めば伊達政宗については大体理解出来ると思います。
※毎日投稿。
※歴史上に存在しない人物も登場しています。
小説家になろう、カクヨムでも本作を投稿しております。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
四代目 豊臣秀勝
克全
歴史・時代
アルファポリス第5回歴史時代小説大賞参加作です。
読者賞を狙っていますので、アルファポリスで投票とお気に入り登録してくださると助かります。
史実で三木城合戦前後で夭折した木下与一郎が生き延びた。
秀吉の最年長の甥であり、秀長の嫡男・与一郎が生き延びた豊臣家が辿る歴史はどう言うモノになるのか。
小牧長久手で秀吉は勝てるのか?
朝日姫は徳川家康の嫁ぐのか?
朝鮮征伐は行われるのか?
秀頼は生まれるのか。
秀次が後継者に指名され切腹させられるのか?
旧陸軍の天才?に転生したので大東亜戦争に勝ちます
竹本田重朗
ファンタジー
転生石原閣下による大東亜戦争必勝論
東亜連邦を志した同志達よ、ごきげんようである。どうやら、私は旧陸軍の石原莞爾に転生してしまったらしい。これは神の思し召しなのかもしれない。どうであれ、現代日本のような没落を回避するために粉骨砕身で働こうじゃないか。東亜の同志と手を取り合って真なる独立を掴み取るまで…
※超注意書き※
1.政治的な主張をする目的は一切ありません
2.そのため政治的な要素は「濁す」又は「省略」することがあります
3.あくまでもフィクションのファンタジーの非現実です
4.そこら中に無茶苦茶が含まれています
5.現実的に存在する如何なる国家や地域、団体、人物と関係ありません
6.カクヨムとマルチ投稿
以上をご理解の上でお読みください
甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ
朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】
戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。
永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。
信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。
この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。
*ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。
日は沈まず
ミリタリー好きの人
歴史・時代
1929年世界恐慌により大日本帝國も含め世界は大恐慌に陥る。これに対し大日本帝國は満州事変で満州を勢力圏に置き、積極的に工場や造船所などを建造し、経済再建と大幅な軍備拡張に成功する。そして1937年大日本帝國は志那事変をきっかけに戦争の道に走っていくことになる。当初、帝國軍は順調に進撃していたが、英米の援蔣ルートによる援助と和平の断念により戦争は泥沼化していくことになった。さらに1941年には英米とも戦争は避けられなくなっていた・・・あくまでも趣味の範囲での制作です。なので文章がおかしい場合もあります。
また参考資料も乏しいので設定がおかしい場合がありますがご了承ください。また、おかしな部分を次々に直していくので最初見た時から内容がかなり変わっている場合がありますので何か前の話と一致していないところがあった場合前の話を見直して見てください。おかしなところがあったら感想でお伝えしてもらえると幸いです。表紙は自作です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる