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第9章 創天国の魂編

13.海上の襲撃

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志栄島の東方沖において一隻の怪しげな船が貞広らを乗せた船に向かって針路を進めていた。
どうやらその船には海賊衆が乗っているようである。

戸惑いを見せる貞広らに対してやがて海賊衆は一斉に弓を引き、こちらに対して攻撃を与えようとしていた。
これに対し幕府側は、同乗していた家臣ら全員を集めて戦闘態勢の準備に入り始める。
その中で一人の男が声を上げる。


「我らは亀去島海賊衆ぞ。我らの海域に入ったからには、生きては帰さぬ!」

・亀去島海賊衆(かめさりじまかいぞくしゅう)
創天国本島の北東部に位置する亀去島(かめさりじま)を拠点とする海賊衆。
創天国における山賊衆や海賊衆などは、幕府の管轄下に置かれてある程度の統制が図られていた。
だが、亀去島海賊衆に関しては未知の海賊衆である故に、幕府による統制が成されていない独立した勢力として存在していたという。


※黄丸が亀去島

宗重
「亀去島…あそこは確か、人が住めぬような場所であったはずじゃが…」

島全土は湿地帯の沼で覆われており、足場が不安定な地形で形成されている。
合わせて一年を通しての天候状態が非常に不安定であり、嵐に見舞われる事がしばしばあったという。
この様子に創天国の人々は、亀であってもその地を去ってしまう程の過酷な環境から「亀去島」と呼んでいる。

こうした環境の中で人が住むには困難な地である故に、現在でも無人島として創天国の人々は認識していた。
しかし、先程の海賊衆の男の口からその亀去島の地名を耳にする。
これには宗重らを始めとする創天国の者たちは非常に驚いていた。

貞広
「亀去島に海賊衆がおったとは…これは、我ら幕府も知り得ぬ存在にござるな。」

すると海賊衆の男が苛立った様子で声を上げ始める。


「えぇい、ごちゃごちゃとうるさいわ!我らの攻撃を受けよ!」

そう言うと海賊衆は弓に矢を掛け、こちらに向かって弦を引き始めた。

宗重
「いかん!このままでは奴らの攻撃をまともに喰らってしまうぞ!お前たち、構えよ!」

その瞬間である。
海賊衆は一斉に貞広らを目掛けて矢を放った。
放たれた無数の矢は、雨の如く船に向かって一直線に降り注ぎ始めた。

ドヴェルク
「ひっ、これはたまりません…」

ドヴェルクは怯えた様子でそう言っていた。
すると次の瞬間、長継が貞広の元へと素早く走り出す。

長継
「むっ、貞広殿!危のうございます!ぐっ…」

そう言うと長継は貞広の体を勢い良く引き寄せていた。
すると貞広のいた場所には、海賊衆による矢が大量に降り注いだ。
長継による咄嗟の判断によって貞広の身を救ったのである。

貞広
「くっ…はっ、長継殿!お主…大丈夫にござるか?」

間一髪のところで長継によって身を助けられた貞広。
だが、その後に発した長継の声を聞いた貞広はその身を案じている様子であった。
すると長継は気丈に振る舞いながらも答える。

長継
「なに、ちと矢が体を掠めただけにございますが拙者は何ともありませぬ!」

長継は海賊衆による攻撃を少しばかり受けたが、どうやらかすり傷で済んだようである。
顔には無数の矢が掠めた事によって出来た傷が痛々しい様子であった。

貞広は海賊衆を睨みつけながら静かな口調で言う。

貞広
「ぐっ、我ら幕府の人間に対して何たる狼藉を…」

その様子に男がにやりと笑いながら口を開く。


「ほう、なかなかやるではないか。」

すると、海賊衆の中で一際目立った出で立ちの男が口を開き始める。
どうやらこの男は、海賊衆を束ねる頭領のようである。

頭領
「泰平の世で体が鈍り切っておる幕府にも、まだまだ骨のある奴が残っておったとはな。これは久々に戦い甲斐の有りそうな奴らじゃな!」

頭領は高揚した様子でそう言っていた。
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