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第9章 創天国の魂編

07.将軍との謁見

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長継たちは志栄城の志栄藩 藩主 口羽崇冬と面会を果たす。

「セビカ国存続の危機を救うべく、創天国の力を貸して欲しい。」
長継らは崇冬と顔を合わすなりそう懇願の声を出していた。

「まるで乱世の頃の我が国 創天国を見ているようだ…」
事情を知った崇冬は、セビカ国で起きている事が他人事のように思えなかったようである。
やがて崇冬は協力の姿勢を見せ、援軍をセビカ国へ送り込むべく動き始めようとする。

そして数日後、崇冬は長継らと共に将軍 志太祐宗の元を訪れていた。

祐宗
「長継殿らよ、遠き国からこの創天国へよう参られたのう。」

祐宗は海を渡って遠路遥々ここまで訪ねに来た事に対して気遣いの言葉をかけていた。
そして、かつての自身の祖国である創天国に戻ってきた長継を歓迎しているかのようであった。

すると長継が頭を下げて答える。

長継
「ははっ。このセリアー・長継、畏れ多くも創天国を統べし将軍殿の元へ参らせていただきました。」

それに続けてドヴェルクもまた頭を下げ、口を開き始める。

ドヴェルク
「私の名は、ドヴェルク・セリアーといいます。早速ですが、兄のアルド・セリアーに代わって将軍 祐宗様にお願いしたいことがございます。」

ドヴェルクは自身の名を名乗ってすぐに祐宗に対して今回の用件を伝えようとしていた。
すると祐宗が軽く頷いて言葉を返す。

祐宗
「うむ、話は幾分かは聞いておる。何でも、そなたの祖国が存続の危機に瀕しておられるとな?」

どうやら長継らが祐宗と面会する少し前に崇冬からある程度の事情を聞いていたようである。
祖国存続の危機。
穏やかでは無い事情に対して祐宗が神妙な顔つきをしていた。

そしてドヴェルクが額に頭を擦り付けながら祐宗に対して言う。

ドヴェルク
「はい…かつての家来に裏切られるなどお恥ずかしい話ではありますがどうか祐宗様の、創天国の力を貸していただきたく思います。」

祐宗
「創天国 すなわち我が志太幕府の力、であるか…」

長継とドヴェルクが必死の表情で懇願する姿を見ながら祐宗がそう呟いていた。
すると崇冬が祐宗に対して深々と頭を下げて声を上げる。

崇冬
「上様!拙者からもお願い申しまする!この者たちの祖国、セビカをお救いすべく我が創天国からの援軍を派兵をどうかお許しくださいませ!」

長継
「た、崇冬様…」

長継は顔を上げ、今にも涙が溢れんほど潤ませた目で崇冬を見つめていた。

崇冬と長継は、志太家と村上家というかつての敵同士の関係であった。
先日の崇冬との面会によって数十年の時を経てお互いに和解はしていたが、腹の中は果たして本当に許しているのであろうか。
そう考えていた長継ではあったが、自身の為にこれほどまでに親身となってくれている崇冬に対し、わだかまりは完全に消えていたのだとこの時に感じていた。
長継は、崇冬に対して幸甚の至りであった。

そして、そのような崇冬の様子を見た祐宗が真剣な表情を見せて口を開く。

祐宗
「うむ、ここまで我ら幕府を頼っていただけるとは真に光栄にござる。良かろう、その者たちの願いに我らは応えようではないか!」

長継
「祐宗将軍殿!真に、真に有難きお言葉を…」

祐宗の言葉を聞いた長継の目からは溢れた涙が一気にこぼれ出していた。

ドヴェルク
「これで我が兄にも良き返事ができます。本当にありがとうございます!ありがとうございます!」

ドヴェルクもまた大粒の涙をこぼしながら何度も何度も祐宗に対して感謝の言葉を発していた。
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