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第8章 将軍への道程編

89.第二次墨山の戦い(29)

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頼隆は、地下蔵を離れて単軍で墨山城の城門へと移動している。
その途中で外河軍との兵たちに遭遇したが、元主君である頼隆を前に兵たちは戸惑いの様子を見せていた。
一方で頼隆自身は、そのような事はお構いなく兵たちに対して攻撃を加えていく。

立ち塞がる者は、誰であろうとも全て斬り捨てる。
たとえそれが実の子であったとしてもだ…
頼隆はそうした強い覚悟を持っているようであった。

やがて、城外で奮闘している志太・十部軍の元にもこの情報が入ってきた。

義継
「でかしたぞ、政長よ!このまま外河軍の兵たちを撃破し、墨山城を制圧するのじゃ!」

義継は非常に興奮した様子を見せていた。
すると元光が悔しそうな表情を浮かべて言う。

元光
「どうやら此度の戦は、拙者が出る幕では無かったようにございますな。政長殿、真に恐るべし…」

十部家松竹梅三人衆の三梅家は「武の三梅」として代々の当主が軍師を務めている。
歴代の当主の中には誰一人として暗愚な者はおらず、軍師として十部家を支えてきたという。

そして、現当主である元光もまた武の才能に秀でた人物である。
その元光が、政長の底しれぬ能力を非常に悔しがっている。
この事からも、いかに政長が様々な才能に秀でた人物であったかが分かるであろう。

そして、政長らが城内への侵入に成功したという事も志太軍の将たちの耳に届く事となった。

崇冬
「何と!我らがあれほど苦戦しておる墨山城に侵入したじゃと?政長殿は真にめでたき男にござるな…」

志太軍と十部軍による大軍をもってしてもびくともしなかった墨山城。
にも関わらず政長は、いとも簡単に城内への侵入を果たしたのである。

この事に対して崇冬は驚いた表情を見せていた。
そして同時に政長に対して称賛の声を上げていた。

康龍
「それに、頼隆殿も共におられるということは…最早この戦、勝ったも同然であろうな。」

墨山城の城内に入った頼隆は、間もなく城門を開門させるであろう。
墨山城は頼隆の居城であるが故に、兵たちを率いて手際良く行動に移せる事は容易なはず。
あくまでもこれは憶測にしか過ぎないが、康龍は勝利を確信したかのような様子であった。

貞道
「義道殿よ、雲の上から見ておられるか?喜べ!我らの勝利はもうじきぞ!」

先の戦によって無念の死を遂げた義道。
だが、その無念がもうじき晴れようとしているのだ。
仇敵である外河家の滅亡をもってしてである。
貞道は空を見上げ、笑顔を見せながらそう言っていた。

そして本陣では、祐永が興奮した様子で祐宗に対して言う。

祐永
「兄者、これは好機にございますぞ!じきに我らも城内で頼隆らと合流して総攻撃をかけられましょうぞ!」

祐宗
「うむ、これでようやく外河家との戦の決着がつきそうじゃな。それにしても、政長殿と頼隆殿には真に感謝せねばならぬな。」

籠城戦に突入したものの、先の見えぬ戦況に対して祐宗は疲弊した様子を見せていた。
だが、政長らによる墨山城の侵入に成功したという情報が入った事によって

一方、墨山城の城内では頼隆が兵たちに対して必死の表情で声を上げていた。

頼隆
「えぇい!お前たちよ、怯むな怯むな!ひたすらに城門を目指すのじゃ!何としてでも外におる我が軍勢を城内に引き入れるのじゃ!分かったな!」

頼隆らの鬼のような猛攻は、なおも続くのであった。
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