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第8章 将軍への道程編
55.智政武を当家に
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祐宗は、松竹梅三人衆という十部家の家臣たちの存在を知る事となった。
そして三人は、智・政・武それぞれに長けた才能を持ち合わせているという。
祐宗
「なるほどのう…確かに十部家は頼隆殿の申される通り、侮れぬ存在にござるな…」
この存在を知った祐宗は、重々しい口調でそう言っていた。
すると頼隆がさらに三人衆について補足するように説明し始めた。
頼隆
「そして三家の当主は、代々がそれぞれに長けた才能を見事なまでに継承し続けております。」
祐宗
「何と、今までに暗愚な者は一人もおらぬと申すか!」
祐宗は、三人衆の歴代当主には誰一人として落ちこぼれた者が居なかったという事実に大変驚いた。
親が余りにも偉大過ぎた場合、その子や孫は周囲から多大な期待を寄せられるものだ。
そうすれば精神的な重圧が必然的に子や孫に大きくのしかかってくる。
それ故に期待に応えるべく彼らも必死に力を尽くすのだが、大抵は親と比べられて見劣りするなどと言った評価を付けられてしまう事もしばしばある。
池山国大名 白河広秀の嫡男である白河広氏や、村上島大名 村上長馬の嫡男である村上長継などがまさしくその例と言っても良いであろう。
彼らは優秀な親の元に生まれたが実力を発揮できず、最終的には自家を滅亡にまで追いやってしまった。
こうした傾向が多く見られる時代背景において、ここまで先代が持っていた能力の水準を保つという事は、非情に珍しかったのである。
崇冬
「確かに…父上に追いつかんとすべく拙者も必死にござるが、三人衆の者たちは難なく力を継承しているとは…」
康龍
「崇冬殿に同じく…拙者は父上の足元にも及ばず歯がゆき思いをしております故、三人衆の凄さは拙者にも良く分かりますぞ…」
口羽崇数と杉康虎という優れた父のもとに生まれた崇冬と康龍は、三人衆がいかに優れた人物であるか他の家臣たちに比べて深く認識していたようである。
祐宗
「父に追いつくべく、か…容易きことにはござらぬものを代々の当主がやってのけるとはのう…」
祐宗もまた、崇冬らと同じく三人衆の底知れぬ能力の凄さを思い知った様子だ。
天下統一への大きな足がかりを作るなど多大な功績を残した志太祐藤を父に持つ祐宗は、他の誰よりも精神的な重圧を感じているに違いないであろう。
三人衆の存在に皆がたじろぎかけた時に、頼隆が口を開く。
頼隆
「祐宗様、そこでなのですが拙者に一つお任せいただけませぬか?」
祐宗
「ふむ、何か良き策でもござるのか?申してみよ。」
頼隆
「かくなるうえは、拙者が直々に十部殿にお会いして話をつけたくございます。そこで志太家に味方せよ、と何としてでも説得いたしましょう。」
頼隆は自身が十部国を訪問し、義継に対して志太家への寝返りをさせるべく交渉を行いたいと申し出ていた。
外河家と戦を交えるうえでは、十部家の存在が勝敗を大きく左右させる可能性がある。
そうであらば味方として十部家を志太家に引き入れてしまえば良い、と頼隆は考えていた。
祐宗
「ふむ、十部家を当家に寝返らせると申しておるのじゃな?」
頼隆
「はい、元はと申せば拙者が撒いた種にございます故…」
墨山国が国輝によって奪われてしまった理由は自分自身にあると考えていた頼隆は、どうやらそのけじめを付けようという覚悟のようだ。
その様子に熱い意気込みを感じた祐宗が言葉を返す。
祐宗
「良かろう。では、十部殿に良き返事を貰って来るが良い。じゃが、くれぐれも気をつけるのであるぞ?」
頼隆
「ははっ!必ずや十部家をこちら側に引き入れて見せましょうぞ!」
頼隆はきりりとした表情を見せていた。
そして三人は、智・政・武それぞれに長けた才能を持ち合わせているという。
祐宗
「なるほどのう…確かに十部家は頼隆殿の申される通り、侮れぬ存在にござるな…」
この存在を知った祐宗は、重々しい口調でそう言っていた。
すると頼隆がさらに三人衆について補足するように説明し始めた。
頼隆
「そして三家の当主は、代々がそれぞれに長けた才能を見事なまでに継承し続けております。」
祐宗
「何と、今までに暗愚な者は一人もおらぬと申すか!」
祐宗は、三人衆の歴代当主には誰一人として落ちこぼれた者が居なかったという事実に大変驚いた。
親が余りにも偉大過ぎた場合、その子や孫は周囲から多大な期待を寄せられるものだ。
そうすれば精神的な重圧が必然的に子や孫に大きくのしかかってくる。
それ故に期待に応えるべく彼らも必死に力を尽くすのだが、大抵は親と比べられて見劣りするなどと言った評価を付けられてしまう事もしばしばある。
池山国大名 白河広秀の嫡男である白河広氏や、村上島大名 村上長馬の嫡男である村上長継などがまさしくその例と言っても良いであろう。
彼らは優秀な親の元に生まれたが実力を発揮できず、最終的には自家を滅亡にまで追いやってしまった。
こうした傾向が多く見られる時代背景において、ここまで先代が持っていた能力の水準を保つという事は、非情に珍しかったのである。
崇冬
「確かに…父上に追いつかんとすべく拙者も必死にござるが、三人衆の者たちは難なく力を継承しているとは…」
康龍
「崇冬殿に同じく…拙者は父上の足元にも及ばず歯がゆき思いをしております故、三人衆の凄さは拙者にも良く分かりますぞ…」
口羽崇数と杉康虎という優れた父のもとに生まれた崇冬と康龍は、三人衆がいかに優れた人物であるか他の家臣たちに比べて深く認識していたようである。
祐宗
「父に追いつくべく、か…容易きことにはござらぬものを代々の当主がやってのけるとはのう…」
祐宗もまた、崇冬らと同じく三人衆の底知れぬ能力の凄さを思い知った様子だ。
天下統一への大きな足がかりを作るなど多大な功績を残した志太祐藤を父に持つ祐宗は、他の誰よりも精神的な重圧を感じているに違いないであろう。
三人衆の存在に皆がたじろぎかけた時に、頼隆が口を開く。
頼隆
「祐宗様、そこでなのですが拙者に一つお任せいただけませぬか?」
祐宗
「ふむ、何か良き策でもござるのか?申してみよ。」
頼隆
「かくなるうえは、拙者が直々に十部殿にお会いして話をつけたくございます。そこで志太家に味方せよ、と何としてでも説得いたしましょう。」
頼隆は自身が十部国を訪問し、義継に対して志太家への寝返りをさせるべく交渉を行いたいと申し出ていた。
外河家と戦を交えるうえでは、十部家の存在が勝敗を大きく左右させる可能性がある。
そうであらば味方として十部家を志太家に引き入れてしまえば良い、と頼隆は考えていた。
祐宗
「ふむ、十部家を当家に寝返らせると申しておるのじゃな?」
頼隆
「はい、元はと申せば拙者が撒いた種にございます故…」
墨山国が国輝によって奪われてしまった理由は自分自身にあると考えていた頼隆は、どうやらそのけじめを付けようという覚悟のようだ。
その様子に熱い意気込みを感じた祐宗が言葉を返す。
祐宗
「良かろう。では、十部殿に良き返事を貰って来るが良い。じゃが、くれぐれも気をつけるのであるぞ?」
頼隆
「ははっ!必ずや十部家をこちら側に引き入れて見せましょうぞ!」
頼隆はきりりとした表情を見せていた。
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