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第8章 将軍への道程編

02.二人の使者

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それからさらに数日が経った。
ここ数日の間に志太家に降る大名たちが急増していた。
これにより、創天国のほとんどの国が志太家の支配下に置かれる事となった。
祐宗の読み通りに事が進んでいることに、志太家の者たちは皆が安堵の表情を浮かべていた。

そして御所では、祐宗と貞勝が今後の展開についての話を行っていた。

祐宗
「着実に我らの配下となる者たちが増えてきたようじゃな。」

祐宗は得意気な顔をして貞勝にそう言った。

貞勝
「はっ、拙者の心配事は杞憂に終わりそうで何よりにございます。」

貞勝は安心した表情であった。
その様子を見た祐宗が言う。

祐宗
「貞勝よ、何も案ずることは無かったであろう?最早、我が志太家を相手に戦う者などおらぬということがこれで分かったであろう。」

この現在の状況下において志太家に対して戦を仕掛ける大名家がいるであろうか。
例え存在したとしても、圧倒的な国力差を前に降伏する事は目に見えている。
祐宗は

貞勝
「いやはや、全くそうでございますな。」

貞勝は深く頷きながらそう言っていた。
そして祐宗は立ち上がり、御所から見える景色を眺めながら言う。

祐宗
「全ての大名たちが我ら志太家に降った時こそが新しき幕府の始まりじゃ。それももうすぐ実現するであろうな。」

貞勝
「天下は…目前にございますな…」

二人は感無量な様子であった。

その時である。
一人の家臣が祐宗の元へと駆けつけてきた。
家臣は少し戸惑った様子だ。

祐宗
「うむ?一体どうしたのじゃ?」

祐宗は首を傾げながら家臣に対して問い掛けた。
すると家臣が答える。

家臣
「申し上げます。墨山城の外河頼隆殿からの使者と名乗る者が二名、殿を訪ねに参られたようにございます。」

どうやら他国からの使者が志太家を訪ねに来たようである。
家臣のその言葉を聞いた祐宗は、思い出しながら口を開く。

祐宗
「何?墨山城…墨山城といえば、霧の城と呼ばれておるあの城か…」

・墨山城(すみやまじょう)
墨山国大名である外河家の居城。
この地一帯は一年を通して大気の状態が不安定な為、黒い積乱雲を包み込む事がしばしばある。
その姿はまるで山に墨をかぶったように見える事から「墨山」の地名がついたと言われている。
また、墨山城は雲に隠れてその姿をはっきりと確認できる事がほぼ皆無に等しい事から、別名「霧の城」とも呼ばれている。


※紫丸が墨山城

・外河 頼隆(そとかわ よりたか)
墨山国の守護大名。
外河家は、三浦幕府 初代将軍である三浦利晴の妹 香姫(きょうひめ)の婿である外河 頼光(そとかわ よりみつ)を祖とする。
頼隆は知勇兼備の将として名高く、代々の外河家で最も優れた当主であったと言われるほどである。

・香姫(きょうひめ)
三浦利晴の妹。
幼くして外河家に嫁ぎ、七人の子(一説によると頼光以外の武将たちとの間にも五人の子がいるとも)を授ける。
また、子は全て男でその孫たちも全て男であったと言われており、外河家の家名存続に深く貢献する事となる。

・外河 頼光(そとかわ よりみつ)
初代墨山国守護大名。
後に香姫と婚約し、三浦利晴とは義兄弟の関係となる。
将軍家の縁者となった事で幕府による庇護を大いに受けた外河家は、これをきっかけとして大いに栄える事となった。

家臣
「殿、いかがいたしましょうか。」

祐宗
「通すが良い。わざわざここまで足を運ばれたのに追い返すわけにもいかぬであろう。」

家臣
「はっ、ではお呼びして参ります。」

そう言うと家臣は急いで使者たちの元へと戻って行った。
その様子に貞勝が喜びの表情を見せながら言う。

貞勝
「どうやら、墨山の者たちも我らに従う模様にございますな。」

祐宗
「うむ、実に順調であるな。真に良きことじゃ。」

祐宗たちは期待に胸を膨らませていた。

しばらくすると、二人の男が祐宗たちの前に現れた。
外河家からの使者である。
使者たちは祐宗らと顔を合わせるやいなや深々と頭を下げて口を開く。

使者
「墨山より八光御所の志太祐宗殿の元に参らせていただきました。」

使者たちが顔を上げたその時、貞勝は驚きの表情を見せた。

貞勝
「むっ…お主らは…もしや…」

貞勝は声を詰まらせながらそう言った。
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