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第7章 天下分け目の大決戦編
44.引入交渉
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祐藤らは立天野山の深い森の中において政豊と再会を果たした。
そこで幕府に対しての不信感を抱いている様子の政豊を見た祐藤は、ある相談を政豊に持ちかけた。
政豊は自身の屋敷に祐藤らを招き入れ、本格的に話し合いを行う事となった。
政豊
「して、その相談というのはどういった内容じゃ?」
政豊は、自身の屋敷に入るやいなや祐藤らに対して質問を問いかけた。
すると祐藤がすかさず口を開いた。
祐藤
「その前にじゃが政豊殿よ、お主は柊家が滅びてからはどのような暮らしをしておられたのじゃ?」
祐藤は、政豊が盗賊に復帰してからの動向が気になっていた。
すると政豊は、思い出すような仕草をした後に答えた。
政豊
「柊…?あぁ、儂を再び武将として呼び戻した柊晴清のことか。早々に滅びてしもうてこちとら迷惑したもんじゃ…」
柊晴清。
柳幸盛が亡き後の家督を継いだ武将である。
晴清は家督を相続するとすぐに柳家を再興すべく人材の確保に乗り出していた。
中でも、幸盛に仕えていた盗賊出身の政豊に晴清は期待を寄せていたという。
晴清自らが出向いて政豊に柊家の家臣として武将に復帰する事を懇願するという力の入れようであった事からも、その期待は相当なものであったと言えよう。
この晴清による熱烈なアプローチによって政豊は再び武将として復帰したのである。
しかし、後に柳城攻めにおいて志太軍の口羽崇冬に敗北。
政豊は討死にしたと思われていたが、自身の屋敷に帰還すると息を吹き返し、奇跡の生還を遂げる。
…実に波乱万丈とも言える政豊の生き様である。
政豊
「それからの儂は、見ての通り盗賊として復帰した。」
政豊は、柊家の滅亡後に表舞台から姿を消して再び盗賊の道を歩み始めていたという。
すると、祐藤が問い掛けの言葉を発した。
祐藤
「盗賊に戻ったということは、つまりは狼藉をはたらいておったというわけじゃな?」
至極当たり前な問い掛けではあったが政豊は軽く頷き、再び喋り始めた。
政豊
「あぁ、まあそうじゃな。部下たちを食わせていかねばならぬ故、こればかりは致し方が無かったとでもいっておこう。」
政豊は、自身だけでなく部下たちの生活を保障するという責任からか、やむを得ず盗賊で生計を立てるしか無かったという。
悪行を堂々と正当化する政豊の背景には、生きていく為に必死であったという事を祐藤らに訴えかけていた。
すると、今まで沈黙していた貞勝が政豊に対して口を開いた。
貞勝
「して、政豊殿。その盗賊としての狼藉は、我が志太家の領内で行われておったのか?殿はそれが気になられておるのじゃ。」
盗賊は、町などにおいて狼藉をはたらいて生計を立てている。
それであれば少なからずどこかの町では、政豊が率いる盗賊衆の被害を受けている事になる。
仮にそれが志太家の領内であれば、政豊を味方に引き入れる事は難しくなるであろう。
全ては政豊の返答次第で今後の動きが決まろうとしていた。
すると、貞勝の問いかけに政豊は少し笑った様子で答えた。
政豊
「儂らの盗賊衆は、柊家が滅びた後は幕府の領地で盗賊の仕事をしただけじゃ。安心せい、あんたらの領地では悪さはせんかったよ。」
貞勝
「ほう、左様にござるか…それを聞いて安心したわい。」
この言葉を耳にした祐藤らは、安堵の表情を浮かべていた。
そして次に政豊は、険しい表情をして続けて喋り出した。
政豊
「将軍や幕臣というだけで偉そうにしておる連中が儂は気に食わんでな。あいつらを成敗する名目で今も襲撃を繰り返しておるわい。」
政豊のその言葉を聞いた祐藤は、すかさず政豊の目を見つめて言った。
祐藤
「ふむ、相当幕府に不満があると見える。そこでじゃ、政豊殿よ。我が軍と共に幕府の者どもを徹底的に叩きのめしたいと思わぬか?」
祐藤は味方に引き入れるべく、今回の本題を政豊へ率直に伝えた。
すると、政豊は鼻で笑いながら祐藤の問い掛けに答えた。
政豊
「ふっ、なるほどそういうことか。まぁ、あんたらがわざわざここまで訪ねに来た時から何となくそうじゃろうとは思ってはおったわ。」
政豊は、祐藤らが訪ねに来た理由については薄々感じていたが、祐藤のその言葉によってそれが確信へと変わったようである。
祐藤
「どうですかな、政豊殿。協力していただけますかな?」
なおも真剣な眼差しを政豊に向けて祐藤はそう言った。
政豊
「ふっ、面白い。手を貸そうではないか!ただ、勘違いするな。幕府の奴らを成敗するという儂とあんたらの目的がたまたま同じ故に協力するだけじゃからな。分かったか!」
政豊は、あくまでも今回の協力はお互いの目的が一致したからであり、志太家の家臣になるつもりは無いようである。
それでも木内政豊という心強い男が味方となった点では志太家にとって非常に意味のある事に違いは無かった。
祐藤
「承知致した。それではまた、近々に幕府と一戦を交えることになりましょう。その際は、どうかよろしくお願い申す。」
祐藤は政豊の手を固く握り、感謝の意を表した。
そこで幕府に対しての不信感を抱いている様子の政豊を見た祐藤は、ある相談を政豊に持ちかけた。
政豊は自身の屋敷に祐藤らを招き入れ、本格的に話し合いを行う事となった。
政豊
「して、その相談というのはどういった内容じゃ?」
政豊は、自身の屋敷に入るやいなや祐藤らに対して質問を問いかけた。
すると祐藤がすかさず口を開いた。
祐藤
「その前にじゃが政豊殿よ、お主は柊家が滅びてからはどのような暮らしをしておられたのじゃ?」
祐藤は、政豊が盗賊に復帰してからの動向が気になっていた。
すると政豊は、思い出すような仕草をした後に答えた。
政豊
「柊…?あぁ、儂を再び武将として呼び戻した柊晴清のことか。早々に滅びてしもうてこちとら迷惑したもんじゃ…」
柊晴清。
柳幸盛が亡き後の家督を継いだ武将である。
晴清は家督を相続するとすぐに柳家を再興すべく人材の確保に乗り出していた。
中でも、幸盛に仕えていた盗賊出身の政豊に晴清は期待を寄せていたという。
晴清自らが出向いて政豊に柊家の家臣として武将に復帰する事を懇願するという力の入れようであった事からも、その期待は相当なものであったと言えよう。
この晴清による熱烈なアプローチによって政豊は再び武将として復帰したのである。
しかし、後に柳城攻めにおいて志太軍の口羽崇冬に敗北。
政豊は討死にしたと思われていたが、自身の屋敷に帰還すると息を吹き返し、奇跡の生還を遂げる。
…実に波乱万丈とも言える政豊の生き様である。
政豊
「それからの儂は、見ての通り盗賊として復帰した。」
政豊は、柊家の滅亡後に表舞台から姿を消して再び盗賊の道を歩み始めていたという。
すると、祐藤が問い掛けの言葉を発した。
祐藤
「盗賊に戻ったということは、つまりは狼藉をはたらいておったというわけじゃな?」
至極当たり前な問い掛けではあったが政豊は軽く頷き、再び喋り始めた。
政豊
「あぁ、まあそうじゃな。部下たちを食わせていかねばならぬ故、こればかりは致し方が無かったとでもいっておこう。」
政豊は、自身だけでなく部下たちの生活を保障するという責任からか、やむを得ず盗賊で生計を立てるしか無かったという。
悪行を堂々と正当化する政豊の背景には、生きていく為に必死であったという事を祐藤らに訴えかけていた。
すると、今まで沈黙していた貞勝が政豊に対して口を開いた。
貞勝
「して、政豊殿。その盗賊としての狼藉は、我が志太家の領内で行われておったのか?殿はそれが気になられておるのじゃ。」
盗賊は、町などにおいて狼藉をはたらいて生計を立てている。
それであれば少なからずどこかの町では、政豊が率いる盗賊衆の被害を受けている事になる。
仮にそれが志太家の領内であれば、政豊を味方に引き入れる事は難しくなるであろう。
全ては政豊の返答次第で今後の動きが決まろうとしていた。
すると、貞勝の問いかけに政豊は少し笑った様子で答えた。
政豊
「儂らの盗賊衆は、柊家が滅びた後は幕府の領地で盗賊の仕事をしただけじゃ。安心せい、あんたらの領地では悪さはせんかったよ。」
貞勝
「ほう、左様にござるか…それを聞いて安心したわい。」
この言葉を耳にした祐藤らは、安堵の表情を浮かべていた。
そして次に政豊は、険しい表情をして続けて喋り出した。
政豊
「将軍や幕臣というだけで偉そうにしておる連中が儂は気に食わんでな。あいつらを成敗する名目で今も襲撃を繰り返しておるわい。」
政豊のその言葉を聞いた祐藤は、すかさず政豊の目を見つめて言った。
祐藤
「ふむ、相当幕府に不満があると見える。そこでじゃ、政豊殿よ。我が軍と共に幕府の者どもを徹底的に叩きのめしたいと思わぬか?」
祐藤は味方に引き入れるべく、今回の本題を政豊へ率直に伝えた。
すると、政豊は鼻で笑いながら祐藤の問い掛けに答えた。
政豊
「ふっ、なるほどそういうことか。まぁ、あんたらがわざわざここまで訪ねに来た時から何となくそうじゃろうとは思ってはおったわ。」
政豊は、祐藤らが訪ねに来た理由については薄々感じていたが、祐藤のその言葉によってそれが確信へと変わったようである。
祐藤
「どうですかな、政豊殿。協力していただけますかな?」
なおも真剣な眼差しを政豊に向けて祐藤はそう言った。
政豊
「ふっ、面白い。手を貸そうではないか!ただ、勘違いするな。幕府の奴らを成敗するという儂とあんたらの目的がたまたま同じ故に協力するだけじゃからな。分かったか!」
政豊は、あくまでも今回の協力はお互いの目的が一致したからであり、志太家の家臣になるつもりは無いようである。
それでも木内政豊という心強い男が味方となった点では志太家にとって非常に意味のある事に違いは無かった。
祐藤
「承知致した。それではまた、近々に幕府と一戦を交えることになりましょう。その際は、どうかよろしくお願い申す。」
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