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第6章 風雲志太家編

24.保護

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立天野では既に日が昇り、朝を迎えていた。
家春の手によって解放された直胤、秀胤親子は間もなく志太軍の援軍によって保護され、志天城へと送られた。

やがて二人は志天城に到着し、祐藤の元へと通された。
祐藤を前に直胤は跪いて深く頭を下げた。

直胤
「祐藤様、此度の失態、誠に申し訳ございませぬ。」

直胤は自身のせいで居城である立天野城を敵軍に奪われてしまった事に対して謝罪の言葉を述べていた。
すると、祐藤はすかさず二人に対して言葉をかけた。

祐藤
「直胤殿に秀胤殿よ、いやはやよくぞ無事に戻られた。此度は我らの援軍が間に合わなんで済まぬ事をいたした。申し訳ござらんかった。」

直胤は驚いた表情であった。
今回の敗因は、郷田家が油断をした結果によって引き起こされたと言っても過言ではない 。
そのような失態を犯した家臣は御上からは叱責され、お家取り潰しや切腹などを持ってその責任を取る事が当然と直胤は考えていたからである。

しかし、祐藤からは叱責ではなく慰労の言葉から始まり果てには謝罪の言葉まで述べられていた。
この思いもよらぬ祐藤の言葉に涙を浮かべていた。

直胤
「祐藤様、拙者のような不出来な者にかような言葉をかけて頂けるとは。有り難き幸せにございます。」

直胤はさらに腰を落とし、額を地に擦り付けるように頭を下げてそう言った。

祐藤
「直胤殿よ、顔を上げられよ。過ぎた事は仕方あるまい。そなたも秋庭家が攻めて来るなど思いもせんかったじゃろう。昨日まで郷田家と秋庭家との交流は続いておったのでは無理も無いわい。」

祐藤がそう言うと直胤の表情は曇り始めた。

直胤
「祐藤様…全てお見通しであったのですね…」

祐藤は、郷田家が志太家の傘下として加わった後も郷田家との交流を内密で継続していた事を知っていたようである。

祐藤
「儂の目は節穴ではござらん。そなたらは当家の傘下に加わる昔より繋がりがあったじゃろう。かような長きに渡って続いていたお互いの関係を無下にはしたく無かった故に儂は目を瞑っておった。じゃが、今回はそれが仇になったようじゃな。」

直胤
「おっしゃる通りにございます。こうなった以上、敵は敵。拙者 郷田直胤、過去は捨てて秋庭家と刀を交える覚悟にございます。」

自分の責任は自分で蹴りを付ける。
直胤は覚悟を決めた表情で祐藤に言った。

しかし、祐藤は少し考えた後に口を開いた。

祐藤
「まぁ待たれよ。今回はそう急がずに少し時間をかけるが吉では無いかと儂は見ておる。郷田家にとっても最善の方法で丸く収める事が出来るかも知れぬぞ。」

祐藤は何かを思いついたような表情であった。
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