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第6章 風雲志太家編

15.出陣準備

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家春による緊急の評定から翌日、秋庭家の家臣たちは早々に兵を集めて出陣の準備に取り掛かっていた。
突然の出陣命令を受けた兵たちは皆が驚きの表情を見せてはいたが、すぐに真剣な表情へと切り替わっていった。

こうした急な命令に対しても混乱する事も無くスムーズに進んでいったとされ、家臣たちもこれにはただただ感心した。
秋庭家は家臣だけでははく、兵たちとの絆や主君に対する忠誠心は相当な物であったと言えよう。

やがて兵たちの出陣準備が整い、天守にいる家春への報告に家臣たちがぞろぞろと入っていった。
その中には、家老である晴正の姿もあった。

晴正
「殿、我が秋庭軍の兵たちの出陣準備が整いましたぞ。どうか出陣のご命令を我らに下さいませ。」

晴正は家春の前にひざまずいてそう言った。

家春
「うむ、ご苦労であった。じゃが、まだ出陣はせぬ。全軍出撃の時は今宵の丑三つ時ぞ。それまで各々は来たるべき戦に備えて鍛錬に励まれよ。」

そう言うと家春は一人、天守の奥へと入っていった。

どうやら家春は夜襲をかけるつもりである。
それも、完全に兵たちが寝静まるであろう丑三つ時(現代時間で午前2時~2時30分頃)にだ。

今回の戦は、どんな手を使ってでも勝利を収めなければならない。
いかにして自軍が有利に進められる方法が無いかと考えた末に出した戦法であった。
寝込みを襲うなど卑怯とも言える戦法ではあったが、自家の存続がかかっている現状で綺麗事は言える余裕などどこにも無かったのである。

やがて時間は過ぎ、出陣開始の丑三つ時となった。
辺りは闇に包まれており、静まり返っていた。
城内に集結した兵たちに向かって家春は口を開いた。

家春
「これより我が秋庭軍は立天野城を目指して出陣致す。この戦は夜明けまでが勝負ぞ。皆の者よ、急がれよ。」

夜襲は、辺りの明るくなる夜明け前までに決着をつける事が鉄則である。
夜明けを過ぎると、敵方の兵も周囲の明るさに比例して次第に士気が上昇する事で苦戦を強いられる可能性があるからだ。
夜明け前と夜明け後で勝利の明暗を分けると言っても過言では無い。
何としてでも秋庭家は戦に勝たねばならぬ、と言う家春の必死さがうかがえる。

兵たちは、朧月の月明かりにうっすらと照らされながら立天野城を目指して進軍を開始した。
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