20 / 27
20-青薔薇の耳飾り
しおりを挟む
昼食を終えてセドリックは転移魔法で帰っていった。
空になった食器をキッチンの流しで洗いながら、ふと先程鑑定で出たスキルについて考える。
俺のスキルはミニチュア実体化だ。先ほど見た時はレベルが五だった。
今までは食べ物や、手で持てる程度の消耗品をメインで作って来たが、もしレベルがもっと上がれば実体化させられる大きさも変わったりするのだろうか。
そうだったらいいなあ……。
俺が使える唯一の能力なのでいずれ進化してほしいと切に願う。
そんなことを考えているとエリシアがキッチンに顔を出した。
「ニロ、ちょっといいかしら」
「ちょっと待ってくださいね……はい、なんでしょうか?」
最後の食器を片付け終えてタオルで手を拭き向きなおる。
「ライネルのなんだけど、魔力制御が出来ているなら私が魔法を教えてもいいかしら?いずれ隠蔽魔法や防音魔法を教えられれば、私が長い間ここに来られない事があっても心配が減ると思うの」
「俺はありがたいですけど……いいんですか?」
「もちろんよ」
俺は魔法の知識もないからエリシアが教えてくれるのはありがたい。
いろいろ出来るようになった方がマルセルが大人になった時、役立つだろう。
「エリシアさん、もし可能だったらマルセルにも何か教えてもらえませんか?一人より二人の方がやる気も出るかもしれないし」
厚かましいかもしれないがせっかく教えて貰えるならどちらかでなく、二人とも教えてもらった方がいいだろう。
魔力差はかなりあるが、出来ることが増えた方が子供達の為になりそうだ。
「構わないわ。それじゃ暫くリビングを借りるわね、早速子供達に基本を座学で教えたいから」
さすがエリシアさん、行動が早い!
「あ、そうだ。もしあれば紙と筆記用具を貸してちょうだい、一緒に文字も教えたいから」
「わかりました。用意して持っていきますね」
エリシアさんにはお世話になりっぱなしだ。
何かお礼に、エリシアさんが好きそうな小物でも作ろうかな……。
幸い、レジンでアクセサリーを作った経験もある。粘土さえ使わなければ実体化もしないから身に着けられるものを作ってプレゼントしよう。
そう決めた俺は、リビングで待つエリシアと子供達にノートと筆記用具を届けた後さっそく作業に取り掛かった。
アクセサリーといってもエリシアは冒険者として外に出るだろうからあまり邪魔にならないものにした方がよさそうだ。
そこでふとエリシアがイヤリングをしていたのを思い出す。普段は髪に隠れて見えないが、青い飾りのついたイヤリングがちらっと見えたことがある。
なら同じ青色で耳飾りを作ろう。
使うのはレジン液と着色剤、そして樹脂製のノンホールピアスパーツだ。
ノンホールピアスパーツとは、ピアス穴が開いていなくてもピアスの様につけられるパーツの事。
柔らかい樹脂なので耳が痛くなりにくいという利点がある。
なんでそんなパーツを俺が持っているのかと言うと、年明けに手芸屋さんで購入した福袋にいくつか入っていたからだ。
福袋ってお得なんだけど、使わないパーツもあるしいつか使うだろうって取って置いても結局使わずじまいだったりするんだよね……。この機会に有効活用しないとな。
そんなわけで開封すらしてなかったパーツの袋を開ける。
これに着けるのはレジンで作る薔薇だ。
薔薇の形をしたシリコンモールドに青く着色したレジンを流し込み、UVライトで硬化させる。
粘土で食べ物を作って実体化させるときは気にしなくてもいいが、これは実体化させないので硬化させる時に気泡が入らない様に注意しながら何回かに分けレジンを流し込み硬化させていく。
しっかりと硬化したのを確認したらレジンでノンホールピアスのパーツと接合。
うむ、悪くない。
俺のセンスだからエリシアが気に行ってくれるかはわからないけど、まずまずの出来だと思う。
シンプルイズベストだ。
ただ残念なことに梱包用の袋がない。
プレゼントにしては味気ないがチャック付きの袋に入れて渡すことにした。
まだ時間があるからとお菓子やパン、ご飯の土台を粘土で作り置きしているとあっと言う間に夕方だ。
作業道具を片付けリビングに顔を出すとエリシアの座学もひと段落したようだった。
「エリシアさん、子供達はどんな感じですか?」
「二人とも吸収が早いわ、座学が終わったら実践してみてもいいかもしれないわね」
子供達の手元を見ればびっちりとノートに文字の練習をした形跡が見られる。
「ニロ兄さん、見てみて!ほら、これ俺の名前!」
「僕のも見て!お名前書けるようになったの!」
見て見てとノートを広げる子供達が可愛くてつい頬が緩んでしまう。
「凄いな二人とも。今日は頑張ったな」
ぽんぽんと頭を撫でれば子供達は嬉しそうに笑う。
その笑顔に父性が目覚めそうだ。
結婚してないけどな!!
空になった食器をキッチンの流しで洗いながら、ふと先程鑑定で出たスキルについて考える。
俺のスキルはミニチュア実体化だ。先ほど見た時はレベルが五だった。
今までは食べ物や、手で持てる程度の消耗品をメインで作って来たが、もしレベルがもっと上がれば実体化させられる大きさも変わったりするのだろうか。
そうだったらいいなあ……。
俺が使える唯一の能力なのでいずれ進化してほしいと切に願う。
そんなことを考えているとエリシアがキッチンに顔を出した。
「ニロ、ちょっといいかしら」
「ちょっと待ってくださいね……はい、なんでしょうか?」
最後の食器を片付け終えてタオルで手を拭き向きなおる。
「ライネルのなんだけど、魔力制御が出来ているなら私が魔法を教えてもいいかしら?いずれ隠蔽魔法や防音魔法を教えられれば、私が長い間ここに来られない事があっても心配が減ると思うの」
「俺はありがたいですけど……いいんですか?」
「もちろんよ」
俺は魔法の知識もないからエリシアが教えてくれるのはありがたい。
いろいろ出来るようになった方がマルセルが大人になった時、役立つだろう。
「エリシアさん、もし可能だったらマルセルにも何か教えてもらえませんか?一人より二人の方がやる気も出るかもしれないし」
厚かましいかもしれないがせっかく教えて貰えるならどちらかでなく、二人とも教えてもらった方がいいだろう。
魔力差はかなりあるが、出来ることが増えた方が子供達の為になりそうだ。
「構わないわ。それじゃ暫くリビングを借りるわね、早速子供達に基本を座学で教えたいから」
さすがエリシアさん、行動が早い!
「あ、そうだ。もしあれば紙と筆記用具を貸してちょうだい、一緒に文字も教えたいから」
「わかりました。用意して持っていきますね」
エリシアさんにはお世話になりっぱなしだ。
何かお礼に、エリシアさんが好きそうな小物でも作ろうかな……。
幸い、レジンでアクセサリーを作った経験もある。粘土さえ使わなければ実体化もしないから身に着けられるものを作ってプレゼントしよう。
そう決めた俺は、リビングで待つエリシアと子供達にノートと筆記用具を届けた後さっそく作業に取り掛かった。
アクセサリーといってもエリシアは冒険者として外に出るだろうからあまり邪魔にならないものにした方がよさそうだ。
そこでふとエリシアがイヤリングをしていたのを思い出す。普段は髪に隠れて見えないが、青い飾りのついたイヤリングがちらっと見えたことがある。
なら同じ青色で耳飾りを作ろう。
使うのはレジン液と着色剤、そして樹脂製のノンホールピアスパーツだ。
ノンホールピアスパーツとは、ピアス穴が開いていなくてもピアスの様につけられるパーツの事。
柔らかい樹脂なので耳が痛くなりにくいという利点がある。
なんでそんなパーツを俺が持っているのかと言うと、年明けに手芸屋さんで購入した福袋にいくつか入っていたからだ。
福袋ってお得なんだけど、使わないパーツもあるしいつか使うだろうって取って置いても結局使わずじまいだったりするんだよね……。この機会に有効活用しないとな。
そんなわけで開封すらしてなかったパーツの袋を開ける。
これに着けるのはレジンで作る薔薇だ。
薔薇の形をしたシリコンモールドに青く着色したレジンを流し込み、UVライトで硬化させる。
粘土で食べ物を作って実体化させるときは気にしなくてもいいが、これは実体化させないので硬化させる時に気泡が入らない様に注意しながら何回かに分けレジンを流し込み硬化させていく。
しっかりと硬化したのを確認したらレジンでノンホールピアスのパーツと接合。
うむ、悪くない。
俺のセンスだからエリシアが気に行ってくれるかはわからないけど、まずまずの出来だと思う。
シンプルイズベストだ。
ただ残念なことに梱包用の袋がない。
プレゼントにしては味気ないがチャック付きの袋に入れて渡すことにした。
まだ時間があるからとお菓子やパン、ご飯の土台を粘土で作り置きしているとあっと言う間に夕方だ。
作業道具を片付けリビングに顔を出すとエリシアの座学もひと段落したようだった。
「エリシアさん、子供達はどんな感じですか?」
「二人とも吸収が早いわ、座学が終わったら実践してみてもいいかもしれないわね」
子供達の手元を見ればびっちりとノートに文字の練習をした形跡が見られる。
「ニロ兄さん、見てみて!ほら、これ俺の名前!」
「僕のも見て!お名前書けるようになったの!」
見て見てとノートを広げる子供達が可愛くてつい頬が緩んでしまう。
「凄いな二人とも。今日は頑張ったな」
ぽんぽんと頭を撫でれば子供達は嬉しそうに笑う。
その笑顔に父性が目覚めそうだ。
結婚してないけどな!!
0
お気に入りに追加
11
あなたにおすすめの小説
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。
どこかで見たような異世界物語
PIAS
ファンタジー
現代日本で暮らす特に共通点を持たない者達が、突如として異世界「ティルリンティ」へと飛ばされてしまう。
飛ばされた先はダンジョン内と思しき部屋の一室。
互いの思惑も分からぬまま協力体制を取ることになった彼らは、一先ずダンジョンからの脱出を目指す。
これは、右も左も分からない異世界に飛ばされ「異邦人」となってしまった彼らの織り成す物語。
せっかく異世界に転生できたんだから、急いで生きる必要なんてないよね?ー明日も俺はスローなライフを謳歌したいー
ジミー凌我
ファンタジー
日夜仕事に追われ続ける日常を毎日毎日繰り返していた。
仕事仕事の毎日、明日も明後日も仕事を積みたくないと生き急いでいた。
そんな俺はいつしか過労で倒れてしまった。
そのまま死んだ俺は、異世界に転生していた。
忙しすぎてうわさでしか聞いたことがないが、これが異世界転生というものなのだろう。
生き急いで死んでしまったんだ。俺はこの世界ではゆっくりと生きていきたいと思った。
ただ、この世界にはモンスターも魔王もいるみたい。
この世界で最初に出会ったクレハという女の子は、細かいことは気にしない自由奔放な可愛らしい子で、俺を助けてくれた。
冒険者としてゆったり生計を立てていこうと思ったら、以外と儲かる仕事だったからこれは楽な人生が始まると思った矢先。
なぜか2日目にして魔王軍の侵略に遭遇し…。
異世界あるある 転生物語 たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?
よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する!
土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。
自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。
『あ、やべ!』
そして・・・・
【あれ?ここは何処だ?】
気が付けば真っ白な世界。
気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ?
・・・・
・・・
・・
・
【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】
こうして剛史は新た生を異世界で受けた。
そして何も思い出す事なく10歳に。
そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。
スキルによって一生が決まるからだ。
最低1、最高でも10。平均すると概ね5。
そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。
しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。
そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで
ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。
追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。
だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。
『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』
不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。
そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。
その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。
前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。
但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。
転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。
これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな?
何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが?
俺は農家の4男だぞ?
「残念でした~。レベル1だしチートスキルなんてありませ~ん笑」と女神に言われ異世界転生させられましたが、転移先がレベルアップの実の宝庫でした
御浦祥太
ファンタジー
どこにでもいる高校生、朝比奈結人《あさひなゆいと》は修学旅行で京都を訪れた際に、突然清水寺から落下してしまう。不思議な空間にワープした結人は女神を名乗る女性に会い、自分がこれから異世界転生することを告げられる。
異世界と聞いて結人は、何かチートのような特別なスキルがもらえるのか女神に尋ねるが、返ってきたのは「残念でした~~。レベル1だしチートスキルなんてありませ~~ん(笑)」という強烈な言葉だった。
女神の言葉に落胆しつつも異世界に転生させられる結人。
――しかし、彼は知らなかった。
転移先がまさかの禁断のレベルアップの実の群生地であり、その実を食べることで自身のレベルが世界最高となることを――
いらないスキル買い取ります!スキル「買取」で異世界最強!
町島航太
ファンタジー
ひょんな事から異世界に召喚された木村哲郎は、救世主として期待されたが、手に入れたスキルはまさかの「買取」。
ハズレと看做され、城を追い出された哲郎だったが、スキル「買取」は他人のスキルを買い取れるという優れ物であった。
若返ったおっさん、第2の人生は異世界無双
たまゆら
ファンタジー
事故で死んだネトゲ廃人のおっさん主人公が、ネトゲと酷似した異世界に転移。
ゲームの知識を活かして成り上がります。
圧倒的効率で金を稼ぎ、レベルを上げ、無双します。
異世界転移物語
月夜
ファンタジー
このところ、日本各地で謎の地震が頻発していた。そんなある日、都内の大学に通う僕(田所健太)は、地震が起こったときのために、部屋で非常持出袋を整理していた。すると、突然、めまいに襲われ、次に気づいたときは、深い森の中に迷い込んでいたのだ……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる