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20-青薔薇の耳飾り

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昼食を終えてセドリックは転移魔法で帰っていった。

空になった食器をキッチンの流しで洗いながら、ふと先程鑑定で出たスキルについて考える。
俺のスキルはミニチュア実体化だ。先ほど見た時はレベルが五だった。
今までは食べ物や、手で持てる程度の消耗品をメインで作って来たが、もしレベルがもっと上がれば実体化させられる大きさも変わったりするのだろうか。

そうだったらいいなあ……。

俺が使える唯一の能力なのでいずれ進化してほしいと切に願う。
そんなことを考えているとエリシアがキッチンに顔を出した。

「ニロ、ちょっといいかしら」
「ちょっと待ってくださいね……はい、なんでしょうか?」

最後の食器を片付け終えてタオルで手を拭き向きなおる。

「ライネルのなんだけど、魔力制御が出来ているなら私が魔法を教えてもいいかしら?いずれ隠蔽魔法や防音魔法を教えられれば、私が長い間ここに来られない事があっても心配が減ると思うの」
「俺はありがたいですけど……いいんですか?」
「もちろんよ」

俺は魔法の知識もないからエリシアが教えてくれるのはありがたい。
いろいろ出来るようになった方がマルセルが大人になった時、役立つだろう。

「エリシアさん、もし可能だったらマルセルにも何か教えてもらえませんか?一人より二人の方がやる気も出るかもしれないし」

厚かましいかもしれないがせっかく教えて貰えるならどちらかでなく、二人とも教えてもらった方がいいだろう。
魔力差はかなりあるが、出来ることが増えた方が子供達の為になりそうだ。

「構わないわ。それじゃ暫くリビングを借りるわね、早速子供達に基本を座学で教えたいから」

さすがエリシアさん、行動が早い!

「あ、そうだ。もしあれば紙と筆記用具を貸してちょうだい、一緒に文字も教えたいから」
「わかりました。用意して持っていきますね」

エリシアさんにはお世話になりっぱなしだ。
何かお礼に、エリシアさんが好きそうな小物でも作ろうかな……。

幸い、レジンでアクセサリーを作った経験もある。粘土さえ使わなければ実体化もしないから身に着けられるものを作ってプレゼントしよう。
そう決めた俺は、リビングで待つエリシアと子供達にノートと筆記用具を届けた後さっそく作業に取り掛かった。

アクセサリーといってもエリシアは冒険者として外に出るだろうからあまり邪魔にならないものにした方がよさそうだ。
そこでふとエリシアがイヤリングをしていたのを思い出す。普段は髪に隠れて見えないが、青い飾りのついたイヤリングがちらっと見えたことがある。
なら同じ青色で耳飾りを作ろう。


使うのはレジン液と着色剤、そして樹脂製のノンホールピアスパーツだ。
ノンホールピアスパーツとは、ピアス穴が開いていなくてもピアスの様につけられるパーツの事。
柔らかい樹脂なので耳が痛くなりにくいという利点がある。

なんでそんなパーツを俺が持っているのかと言うと、年明けに手芸屋さんで購入した福袋にいくつか入っていたからだ。
福袋ってお得なんだけど、使わないパーツもあるしいつか使うだろうって取って置いても結局使わずじまいだったりするんだよね……。この機会に有効活用しないとな。

そんなわけで開封すらしてなかったパーツの袋を開ける。
これに着けるのはレジンで作る薔薇だ。
薔薇の形をしたシリコンモールドに青く着色したレジンを流し込み、UVライトで硬化させる。
粘土で食べ物を作って実体化させるときは気にしなくてもいいが、これは実体化させないので硬化させる時に気泡が入らない様に注意しながら何回かに分けレジンを流し込み硬化させていく。

しっかりと硬化したのを確認したらレジンでノンホールピアスのパーツと接合。

うむ、悪くない。

俺のセンスだからエリシアが気に行ってくれるかはわからないけど、まずまずの出来だと思う。
シンプルイズベストだ。
ただ残念なことに梱包用の袋がない。
プレゼントにしては味気ないがチャック付きの袋に入れて渡すことにした。

まだ時間があるからとお菓子やパン、ご飯の土台を粘土で作り置きしているとあっと言う間に夕方だ。
作業道具を片付けリビングに顔を出すとエリシアの座学もひと段落したようだった。

「エリシアさん、子供達はどんな感じですか?」
「二人とも吸収が早いわ、座学が終わったら実践してみてもいいかもしれないわね」

子供達の手元を見ればびっちりとノートに文字の練習をした形跡が見られる。

「ニロ兄さん、見てみて!ほら、これ俺の名前!」
「僕のも見て!お名前書けるようになったの!」

見て見てとノートを広げる子供達が可愛くてつい頬が緩んでしまう。

「凄いな二人とも。今日は頑張ったな」

ぽんぽんと頭を撫でれば子供達は嬉しそうに笑う。
その笑顔に父性が目覚めそうだ。

結婚してないけどな!!
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