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14-めっちゃくちゃ怒ってらっしゃるうぅ!?
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「その子達から離れろ!」
「なんだお前どこから出てきやがった!?」
家はエリシアの隠蔽魔法によって男たちには見えていないようだ。その為、何もない場所からいきなり俺が現れたように見えたのだろう。
「構うな、あいつは丸腰だ!やっちまえ!」
男たちがそれぞれ鋭い剣を手ににじり寄ってくる。
奴らの一人に捕まっていた男の子は俺の登場によって男たちの注意が逸れ、逃げだせたようで離れた茂みに飛び込んでいくのが見えた。
あの距離ならこれを使っても、あの子達のところまで届かないはずだ!
俺は手の中に隠した武器を男たちの前に掲げた。
「なんだあ!?」
「そんなちっこいもんで俺達と張り合おうってか」
ゲラゲラと笑う男たち。
侮るがいい、これはどんな人間だって悶え苦しむ、ある意味最強の武器なんだから!!
手の中にあるそれのノズルを伸ばし彼らに向けると俺は思い切り噴射する。
「うぎゃあああっ!」
「ひ、ひぎゃああ!!」
「目がっ、目があぁっ!!」
「うえええ、げほがはっ」
「いてえええ、いてええよおっ!」
真っ赤な液体が霧状に噴射され、男たちが顔を覆って倒れ込む。
見たか、これがハバネロ入り唐辛子スプレーの威力だ!!
風に乗って俺の方にもちょっと飛んで来たけどね!!あ、ヤバイ涙がっ……!
咳涙鼻水で阿鼻叫喚に苦しむ男達から武器を取り上げ家の中に放り込む。
玄関先でドアを開けたままのエリシアが眉間に皺をよせ何か言いたそうだったけど、それは後だ。
男の子達が隠れていた茂みに近付いて声をかける。
「君達、悪い人が動けない今のうちにこっちにおいで」
「っ……!」
一人がぴょこんと顔を出した。
黒い耳を何度かぴくぴく動かした後、もう一人の手を引いて駆け寄ってくる。
俺は二人を両腕に抱えると急いで家の中に入り厳重に鍵を閉めチェーンをかけた。
「はあー……なんとかなりました!」
やっと一息ついて振り返ると険しい顔をしたエリシアが俺の頭を両手に作った拳ででガッシリと固定した。
「エエエエリシアさん!?ちょっと、いや、結構痛いんですが!?」
指の関節がぎりぎりとこめかみに食い込んで痛い。
「痛くしているのだから当然よ、ねぇニロ?どうして無鉄砲に飛び出したのかしら?何か持ってたみたいだけど、武器を持った男達の前にほぼ丸腰の状態で挑むなんて頭が湧いてるの?それとも中身が詰まっていないのかしら?」
め、めちゃくちゃ怒ってらっしゃるうぅ!?
「いえ、あの、勝てるというかこれっ、この唐辛子スプレーがあれば何とかなると思ってですね?それに子供達を助けないとと思って……」
「誰かを助けようとする気持ちは大事よ、ええ、とてもね。だけど……あなたが大怪我をしてたかもしれないのよ!?私の様に魔法を使えるわけでも戦えるわけでもないのに!!なんて無茶するの!!」
目を吊り上げて怒るエリシアに思わず後ずさるが、後ろはドアだ。逃げ場はない。
見れば俺と一緒に逃げ込んできた子供達もエリシアの形相に震えていた。
「エリシアさん、とりあえず子供達もいますから中へ……」
「……そうね、私ったら子供の前でつい。でも、本当に心配してたのよ?あなたに何かあったら……私もジャック達も悲しいもの」
「……すみません、以後気を付けます」
「よろしい」
本気で心配してくれた事に嬉しさと気恥ずかしさを感じながら子供達を連れてリビングに向かう。
イスに座らせコップに入れた水を差しだすとよっぽど喉が渇いていたのか二人は一気に飲み干した。
「えっと……君達の事を聞かせて欲しいんだけど。どうしてあいつらに追いかけられてたの?」
おかわりの水をコップに注ぎながら尋ねるが二人は何も言わない。
互いに手を繋いで寄り添っている。怖い目にあったばかりなのだから無理もないだろう。
今はあれこれ聞かない方がいいかもしれない。
「無理に話さなくていいから、名前だけでも教えてくれるかな?俺はニロ、こっちのお姉さんはエリシアさんだよ」
「よろしくね」
自己紹介してエリシアを紹介すると二人は暫く顔を見合わせて、そのうち一人が小さく口を開いた。
「俺、マルセル。こっちは弟のライネル」
「ん、マルセルとライネルだね」
今は名前が分かっただけでも良しとしよう。
まだ警戒はされているけどそれは仕方ないよな、そのうち慣れてくれるといいけど……。
そんなことを考えているとぐううぅと音がしてライネルがお腹を押さえた。
どうやら空腹らしい。
「ちょっと待ってて、何かご飯作るから。エリシアさん、この子達をお願いします」
「えぇ、任せて」
子供達をエリシアに任せキッチンに向かう。
ここは用意していたエビフライの出番だろう。
俺とエリシアの分も含め、四人分のエビフライを用意する。
あとはインスタントのコーンスープと実体化させて作り置きしていたパンだ。
俺としてはエビフライにはご飯が欲しいんだけど、この世界の人にはパンの方が馴染みがあるだろう。
トレーに乗せパンやスープと一緒にリビングへ運ぶ。
「お待たせしました」
「あら、今日は見た事のない食事ね?」
「エビフライという揚げ物です。俺達の分もあるんで少し早いけど食事にしましょうか」
それぞれの前にお皿を並べ、皆で食べ始める。
最初は見たことのない食べ物に戸惑っていたマルセルとライネルだったが、美味しそうに食べるエリシアを見て恐る恐るフォークでエビフライを口に運ぶ。
「んっ……!!これ美味しい!」
「んんっ!!サクサクだあっ!」
エビフライを口に入れた途端、二人の目が輝いた。
気に入ってくれたようで何よりだ。
子供達はお皿に乗ったエビフライをぺろりと平らげた。食べたりなさそうな顔をしていたので俺の分を二人にあげた。
足りない分は後で何か残り物を適当に食べよう。
子供達は遠慮しないでたくさんお食べ!!
「なんだお前どこから出てきやがった!?」
家はエリシアの隠蔽魔法によって男たちには見えていないようだ。その為、何もない場所からいきなり俺が現れたように見えたのだろう。
「構うな、あいつは丸腰だ!やっちまえ!」
男たちがそれぞれ鋭い剣を手ににじり寄ってくる。
奴らの一人に捕まっていた男の子は俺の登場によって男たちの注意が逸れ、逃げだせたようで離れた茂みに飛び込んでいくのが見えた。
あの距離ならこれを使っても、あの子達のところまで届かないはずだ!
俺は手の中に隠した武器を男たちの前に掲げた。
「なんだあ!?」
「そんなちっこいもんで俺達と張り合おうってか」
ゲラゲラと笑う男たち。
侮るがいい、これはどんな人間だって悶え苦しむ、ある意味最強の武器なんだから!!
手の中にあるそれのノズルを伸ばし彼らに向けると俺は思い切り噴射する。
「うぎゃあああっ!」
「ひ、ひぎゃああ!!」
「目がっ、目があぁっ!!」
「うえええ、げほがはっ」
「いてえええ、いてええよおっ!」
真っ赤な液体が霧状に噴射され、男たちが顔を覆って倒れ込む。
見たか、これがハバネロ入り唐辛子スプレーの威力だ!!
風に乗って俺の方にもちょっと飛んで来たけどね!!あ、ヤバイ涙がっ……!
咳涙鼻水で阿鼻叫喚に苦しむ男達から武器を取り上げ家の中に放り込む。
玄関先でドアを開けたままのエリシアが眉間に皺をよせ何か言いたそうだったけど、それは後だ。
男の子達が隠れていた茂みに近付いて声をかける。
「君達、悪い人が動けない今のうちにこっちにおいで」
「っ……!」
一人がぴょこんと顔を出した。
黒い耳を何度かぴくぴく動かした後、もう一人の手を引いて駆け寄ってくる。
俺は二人を両腕に抱えると急いで家の中に入り厳重に鍵を閉めチェーンをかけた。
「はあー……なんとかなりました!」
やっと一息ついて振り返ると険しい顔をしたエリシアが俺の頭を両手に作った拳ででガッシリと固定した。
「エエエエリシアさん!?ちょっと、いや、結構痛いんですが!?」
指の関節がぎりぎりとこめかみに食い込んで痛い。
「痛くしているのだから当然よ、ねぇニロ?どうして無鉄砲に飛び出したのかしら?何か持ってたみたいだけど、武器を持った男達の前にほぼ丸腰の状態で挑むなんて頭が湧いてるの?それとも中身が詰まっていないのかしら?」
め、めちゃくちゃ怒ってらっしゃるうぅ!?
「いえ、あの、勝てるというかこれっ、この唐辛子スプレーがあれば何とかなると思ってですね?それに子供達を助けないとと思って……」
「誰かを助けようとする気持ちは大事よ、ええ、とてもね。だけど……あなたが大怪我をしてたかもしれないのよ!?私の様に魔法を使えるわけでも戦えるわけでもないのに!!なんて無茶するの!!」
目を吊り上げて怒るエリシアに思わず後ずさるが、後ろはドアだ。逃げ場はない。
見れば俺と一緒に逃げ込んできた子供達もエリシアの形相に震えていた。
「エリシアさん、とりあえず子供達もいますから中へ……」
「……そうね、私ったら子供の前でつい。でも、本当に心配してたのよ?あなたに何かあったら……私もジャック達も悲しいもの」
「……すみません、以後気を付けます」
「よろしい」
本気で心配してくれた事に嬉しさと気恥ずかしさを感じながら子供達を連れてリビングに向かう。
イスに座らせコップに入れた水を差しだすとよっぽど喉が渇いていたのか二人は一気に飲み干した。
「えっと……君達の事を聞かせて欲しいんだけど。どうしてあいつらに追いかけられてたの?」
おかわりの水をコップに注ぎながら尋ねるが二人は何も言わない。
互いに手を繋いで寄り添っている。怖い目にあったばかりなのだから無理もないだろう。
今はあれこれ聞かない方がいいかもしれない。
「無理に話さなくていいから、名前だけでも教えてくれるかな?俺はニロ、こっちのお姉さんはエリシアさんだよ」
「よろしくね」
自己紹介してエリシアを紹介すると二人は暫く顔を見合わせて、そのうち一人が小さく口を開いた。
「俺、マルセル。こっちは弟のライネル」
「ん、マルセルとライネルだね」
今は名前が分かっただけでも良しとしよう。
まだ警戒はされているけどそれは仕方ないよな、そのうち慣れてくれるといいけど……。
そんなことを考えているとぐううぅと音がしてライネルがお腹を押さえた。
どうやら空腹らしい。
「ちょっと待ってて、何かご飯作るから。エリシアさん、この子達をお願いします」
「えぇ、任せて」
子供達をエリシアに任せキッチンに向かう。
ここは用意していたエビフライの出番だろう。
俺とエリシアの分も含め、四人分のエビフライを用意する。
あとはインスタントのコーンスープと実体化させて作り置きしていたパンだ。
俺としてはエビフライにはご飯が欲しいんだけど、この世界の人にはパンの方が馴染みがあるだろう。
トレーに乗せパンやスープと一緒にリビングへ運ぶ。
「お待たせしました」
「あら、今日は見た事のない食事ね?」
「エビフライという揚げ物です。俺達の分もあるんで少し早いけど食事にしましょうか」
それぞれの前にお皿を並べ、皆で食べ始める。
最初は見たことのない食べ物に戸惑っていたマルセルとライネルだったが、美味しそうに食べるエリシアを見て恐る恐るフォークでエビフライを口に運ぶ。
「んっ……!!これ美味しい!」
「んんっ!!サクサクだあっ!」
エビフライを口に入れた途端、二人の目が輝いた。
気に入ってくれたようで何よりだ。
子供達はお皿に乗ったエビフライをぺろりと平らげた。食べたりなさそうな顔をしていたので俺の分を二人にあげた。
足りない分は後で何か残り物を適当に食べよう。
子供達は遠慮しないでたくさんお食べ!!
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