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13-ニロの価値
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「ニロの世界の服って動きやすいわね。でもちょっとセンスが独特……まあ、お世話になるんだしいいけどね。でもサイズが合わないから袖が長すぎるわね」
そう呟くのは少しサイズが大きめのティーシャツとジャージに身を包んだエリシアだ。
袖から指先が可愛らしく覗く萌袖を期待していたのだが現実は厳しいもので……エリシアは長めの袖が邪魔だと捲ってしまった。
それはそれでありなんだけど俺としては萌袖が見たかったですっ……!!
残念ではあるが嫌がらず着てもらえただけでも喜ぶべきだろう。
母にあげるつもりで置いていただけと説明するまで、何とも言えない眼差しを向けられていたけど。
俺は女性物の服を大事にしまっておくような変態じゃ……!!ごめんなさい、ホントは少しだけ考えました!!彼シャツを女性に着てほしいと言う願望がありました!!
内心で自分の邪な欲望を謝罪しながら淹れなおした紅茶をエリシアに差し出す。
「どうぞ。喉が乾いたら自由に飲んでください。あっちがキッチンで……あ、あとで道具の使い方とか教えますね。覚えてもらえたら自由に紅茶とか飲めますし……それからエリシアさんが使う部屋も片づけてあるんで後で案内します」
「ありがとう。何から何まで悪いわね……やっぱり後で追加料金払うわ。王都の宿屋よりサービスが良いんだもの」
「でもそれは……」
「いいから受け取って。私の気持ちってことで」
エリシアは譲るつもりがない様なので俺は渋々頷く。
まあいつかは買い物しに、この世界の街にも行ってみたいしお金はあっても損はないだろう。
そう結論を出したところで、寛いでいたエリシアが急に立ち上がった。
「エリシアさん?どうしました?」
驚いて声をかけると彼女は「しっ」と唇に人差し指を当て音を立てない様にとジェスチャーしてくる。
良くわからないが何か起きたのだろうかと息をひそめじっとしていると、不意に外から話し声が聞こえているのに気が付いた。
「外に誰かいるわ……三、いや四人ね」
囁くような声でエリシアが呟く。
「分かるんですか?」
同じように囁く程度の声量で尋ねると彼女はこくんと頷き人差し指で空中に円を描く。するとその場所に魔法陣がぼんやりと浮かび上がり続いて四人の男女が映し出される、冒険者なのか武装している。
映像を空中に映し出すのはどうやらエリシアの魔法みたいだ。
「さっきお邪魔した時、外からこの家は見つからない様に隠蔽魔法をかけておいたの。だから見つからないとは思うけど防音魔法まではかけてなかったから彼らが離れるまではなるべく静かにしていて」
小声のエリシアの言葉にこくりと頷く。
魔法、何でもありだな。
暫く物音を立てない様に静かにしていると十分くらいで近付づいていた男女は離れて行った。
「ふう。もういいわよ。彼らが戻ってこないうちに防音魔法もかけておくわ」
そいうってエリシアは空中に円を描きさっきとは違う魔方陣を発動させた。
魔法陣は大きく広がると部屋の壁をすり抜け家をすっぽりと包み込む。これが防音の魔法らしい。
「ありがとうございます、魔法かけてもらって……でも、俺の家って見つかったらそんなにマズイですか?」
まだ見ぬ異世界の住宅とは違うのかもしれないが、珍しい建物だな、くらいで済むと思うんだが。
俺がそう告げるとエリシアは眉間に皺を寄せた。
「当然でしょ!最初にニロと出会ったのが私達だったから良かったものの、ガラの悪い奴らに見つかってたら今頃ニロはこの家を奪われたり誘拐されたりしてたわ!この家も、貴方も、それだけの価値があるのよ」
「価値……ですか?」
家の価値ならまあ分からなくもない。
だけど俺に価値?俺はただの一般市民なんだけどな……。
「そうよ。ニロの作る食事は正直貴族の屋敷で出てくる料理を上回るわ。出してくれるお菓子だってどれも絶品で珍しいし、お金になるの。それを金儲けに利用しようって人間は少なくなわ、自分が利益を得るために職人を買収したり誘拐して無理矢理働かせたりする悪人だっている。だからもっと危機感をもって生きなきゃだめよ!」
「は、はい。気を付けます」
「よろしい。今回は私が家を隠す魔法をかけてあげたから暫くは大丈夫だけどね」
「暫くって……どのくらいですか?」
「んー……この大きさなら一ヶ月ってとこかしら。もし魔法の効果が切れたらその時は私に言えばかけ直してあげるわよ、有料だけど」
しっかりお金はとるらしいが月額の防犯対策と思えば問題ない。
「わかりました。その時はお願いします」
「ん、任せて」
その他にもエリシアにこの世界の治安について話を聞いていると再び家の外で話し声が聞こえてきた。
思わず声を抑えた俺に、エリシアはくすくす笑う。
「もう静かにしなくていいのよ、防音魔法が掛かかってるんだから」
「あ、そうでした」
苦笑いを浮かべ今度はどんな人が来たのだろうと窓を覗くとそこには五、六歳の男の子が二人、手を繋ぎながら歩いてるのが見える。
粗末な服を着て頭には黒くて丸い獣耳が付いていた。
「エリシアさん、あの子たちって……?」
エリシアを窓辺に呼び見てもらう。
ここは異世界だしやはりファンタジー定番の獣人だろうか?
「あら、珍しい。あの黒くて丸い耳はパンダ獣人の特徴よ」
「パンダ獣人……」
この世界にもパンダが居るらしい。
「でもこんなところに子供が二人だけなんて……変ね」
エリシアがそう呟いた時、森の奥から如何にもガラが悪そうな武装した男が五人ほど現れた。
「いたぞ!捕まえろ!」
「逃げるな奴隷め!!」
野太い声が聞こえ、逃げ出した子供達に追いついた男がひとりを捕まえた。
「兄さん!」
「弟を離せ!」
捕まった男の子が悲鳴を上げると、もう一人が太い木の棒を手に男たちに立ち向かう。
あんな子供が大人の男五人に勝てるはずがない!
「ちょっとニロ!?」
気が付くと俺はエリシアの制止を振り切って家を飛び出していた。
そう呟くのは少しサイズが大きめのティーシャツとジャージに身を包んだエリシアだ。
袖から指先が可愛らしく覗く萌袖を期待していたのだが現実は厳しいもので……エリシアは長めの袖が邪魔だと捲ってしまった。
それはそれでありなんだけど俺としては萌袖が見たかったですっ……!!
残念ではあるが嫌がらず着てもらえただけでも喜ぶべきだろう。
母にあげるつもりで置いていただけと説明するまで、何とも言えない眼差しを向けられていたけど。
俺は女性物の服を大事にしまっておくような変態じゃ……!!ごめんなさい、ホントは少しだけ考えました!!彼シャツを女性に着てほしいと言う願望がありました!!
内心で自分の邪な欲望を謝罪しながら淹れなおした紅茶をエリシアに差し出す。
「どうぞ。喉が乾いたら自由に飲んでください。あっちがキッチンで……あ、あとで道具の使い方とか教えますね。覚えてもらえたら自由に紅茶とか飲めますし……それからエリシアさんが使う部屋も片づけてあるんで後で案内します」
「ありがとう。何から何まで悪いわね……やっぱり後で追加料金払うわ。王都の宿屋よりサービスが良いんだもの」
「でもそれは……」
「いいから受け取って。私の気持ちってことで」
エリシアは譲るつもりがない様なので俺は渋々頷く。
まあいつかは買い物しに、この世界の街にも行ってみたいしお金はあっても損はないだろう。
そう結論を出したところで、寛いでいたエリシアが急に立ち上がった。
「エリシアさん?どうしました?」
驚いて声をかけると彼女は「しっ」と唇に人差し指を当て音を立てない様にとジェスチャーしてくる。
良くわからないが何か起きたのだろうかと息をひそめじっとしていると、不意に外から話し声が聞こえているのに気が付いた。
「外に誰かいるわ……三、いや四人ね」
囁くような声でエリシアが呟く。
「分かるんですか?」
同じように囁く程度の声量で尋ねると彼女はこくんと頷き人差し指で空中に円を描く。するとその場所に魔法陣がぼんやりと浮かび上がり続いて四人の男女が映し出される、冒険者なのか武装している。
映像を空中に映し出すのはどうやらエリシアの魔法みたいだ。
「さっきお邪魔した時、外からこの家は見つからない様に隠蔽魔法をかけておいたの。だから見つからないとは思うけど防音魔法まではかけてなかったから彼らが離れるまではなるべく静かにしていて」
小声のエリシアの言葉にこくりと頷く。
魔法、何でもありだな。
暫く物音を立てない様に静かにしていると十分くらいで近付づいていた男女は離れて行った。
「ふう。もういいわよ。彼らが戻ってこないうちに防音魔法もかけておくわ」
そいうってエリシアは空中に円を描きさっきとは違う魔方陣を発動させた。
魔法陣は大きく広がると部屋の壁をすり抜け家をすっぽりと包み込む。これが防音の魔法らしい。
「ありがとうございます、魔法かけてもらって……でも、俺の家って見つかったらそんなにマズイですか?」
まだ見ぬ異世界の住宅とは違うのかもしれないが、珍しい建物だな、くらいで済むと思うんだが。
俺がそう告げるとエリシアは眉間に皺を寄せた。
「当然でしょ!最初にニロと出会ったのが私達だったから良かったものの、ガラの悪い奴らに見つかってたら今頃ニロはこの家を奪われたり誘拐されたりしてたわ!この家も、貴方も、それだけの価値があるのよ」
「価値……ですか?」
家の価値ならまあ分からなくもない。
だけど俺に価値?俺はただの一般市民なんだけどな……。
「そうよ。ニロの作る食事は正直貴族の屋敷で出てくる料理を上回るわ。出してくれるお菓子だってどれも絶品で珍しいし、お金になるの。それを金儲けに利用しようって人間は少なくなわ、自分が利益を得るために職人を買収したり誘拐して無理矢理働かせたりする悪人だっている。だからもっと危機感をもって生きなきゃだめよ!」
「は、はい。気を付けます」
「よろしい。今回は私が家を隠す魔法をかけてあげたから暫くは大丈夫だけどね」
「暫くって……どのくらいですか?」
「んー……この大きさなら一ヶ月ってとこかしら。もし魔法の効果が切れたらその時は私に言えばかけ直してあげるわよ、有料だけど」
しっかりお金はとるらしいが月額の防犯対策と思えば問題ない。
「わかりました。その時はお願いします」
「ん、任せて」
その他にもエリシアにこの世界の治安について話を聞いていると再び家の外で話し声が聞こえてきた。
思わず声を抑えた俺に、エリシアはくすくす笑う。
「もう静かにしなくていいのよ、防音魔法が掛かかってるんだから」
「あ、そうでした」
苦笑いを浮かべ今度はどんな人が来たのだろうと窓を覗くとそこには五、六歳の男の子が二人、手を繋ぎながら歩いてるのが見える。
粗末な服を着て頭には黒くて丸い獣耳が付いていた。
「エリシアさん、あの子たちって……?」
エリシアを窓辺に呼び見てもらう。
ここは異世界だしやはりファンタジー定番の獣人だろうか?
「あら、珍しい。あの黒くて丸い耳はパンダ獣人の特徴よ」
「パンダ獣人……」
この世界にもパンダが居るらしい。
「でもこんなところに子供が二人だけなんて……変ね」
エリシアがそう呟いた時、森の奥から如何にもガラが悪そうな武装した男が五人ほど現れた。
「いたぞ!捕まえろ!」
「逃げるな奴隷め!!」
野太い声が聞こえ、逃げ出した子供達に追いついた男がひとりを捕まえた。
「兄さん!」
「弟を離せ!」
捕まった男の子が悲鳴を上げると、もう一人が太い木の棒を手に男たちに立ち向かう。
あんな子供が大人の男五人に勝てるはずがない!
「ちょっとニロ!?」
気が付くと俺はエリシアの制止を振り切って家を飛び出していた。
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