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22.王弟ルート
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マリーナをヒロインにした乙女ゲームの攻略対象は全部で四人。
一人目は次期国王とされる第一王子。
二人目は第一王子の側近である騎士の青年。
三人目は同じく側近の公爵子息。
そして四人目が王弟のジークさん。
他の攻略対象の名前はうろ覚えだが、ジークさんのルートは不思議なくらいはっきりと思い出せる。
乙女ゲームの中でヒロインは貴族の学園に入学するかしないかを選択することができる。
『入学する』を選択するとそこから第一王子と側近二人のルートに入るのだが『しない』を選択するとジークさんのルートに入ることが出来る。
彼のルートは学園に入学せず公爵令嬢として領地を視察に行ったマリーナとジークさんが出会い次第に惹かれていく物語だ。
ジークさんことジークハルト・エイヴァンは権力争いに巻き込まれるのが嫌で王位継承権を破棄し世界を旅していた。
しかし旅の資金が底を尽き倒れてしまったところをマリーナが助ける。
そして何度か逢瀬を重ねる度に惹かれ合う二人。
その二人を邪魔するのは悪役令嬢スザンナだ。
元々公爵に愛されたマリーナが気に食わなくて嫌がらせをしていたスザンナは、二人の仲を知ってジークハルトとマリーナをまとめて亡き者にしようと暗殺集団を雇いけしかける。
けれどマリーナからスザンナに嫌がらせをされているという話を聞いていたジークハルトは、スザンナを警戒していた。
証拠を掴みスザンナを断罪するためにジークハルトは兄である国王に頭を下げて臣下として仕える代わりに自由を捨てて、マリーナを守る力を手にするのだ。
そして力を得たジークハルトによりスザンナは罪を暴かれ投獄される。
去り際にジークさんは公爵家が私に手出しできないように圧力をかけられる、と言った。
もし私が望んでいたら彼は自分の自由と引き換えに私を守ろうとしてくれたのかもしれない。
その気持ちはとても嬉しい。
でも、駄目だ。
ジークさんには自由でいてほしい。
乙女ゲームの中では最終的にヒロインと結ばれてハッピーエンドだったけれど、自ら選んだ自由を捨てたジークさんは果たして本当に幸せだったのだろうか。
ヒロインにとってはハッピーエンドだったとしてもジークさんにとっては?
いくら王位継承権を破棄したとしても権力争いに巻き込もうとする輩は多いだろう。
乙女ゲームではヒロインの為にジークさんは自分を犠牲にする道を選んだ。
でも私はジークさんに自分を犠牲にしてほしくはない。
(明日ジークさんが来たら……ちゃんと伝えよう、私の為にジークさんが自分を犠牲にする必要はないってこと)
そんな事を考えながら私はきこり小屋での一日を終えた。
◇◇◇
翌日、夕方になってもジークさんは来なかった。
その代わりにお父さんが日持ちする食べ物をバスケットに入れて届けに来た。
「ねぇお父さん。ジークさんは?」
ジークさんは基本的に約束を守る人だ。
急に用事でもできたのかと思い尋ねて見ればお父さんは眉間に皺を寄せ難しい顔をした。
「……どうやら公爵家のご令嬢に気に入られたみたいでな、今朝からずっとまとわりつかれているんだ」
マリーナがずっとついて回っている為、私の元に来ることが出来ないジークさんはお父さんにその役目を頼んだらしい。
「……あの子が、ジークさんを……」
何だか胸の辺りがもやもやする。
ジークさんが村の女性達に言い寄られてるのを見ても何も思わなかったのに、彼女がジークさんの傍にいると思うと不愉快に思えた。
お父さんはそんな私の気持ちに気が付いたのか少し複雑そうな顔をして村に戻っていった。
明日はきっとジークさんが来てくれる。
そう思いながら翌日を迎えたがその日だけでなく、その次の日もさらにその次の日もジークさんがきこり小屋を訪れる事はなかった。
一人目は次期国王とされる第一王子。
二人目は第一王子の側近である騎士の青年。
三人目は同じく側近の公爵子息。
そして四人目が王弟のジークさん。
他の攻略対象の名前はうろ覚えだが、ジークさんのルートは不思議なくらいはっきりと思い出せる。
乙女ゲームの中でヒロインは貴族の学園に入学するかしないかを選択することができる。
『入学する』を選択するとそこから第一王子と側近二人のルートに入るのだが『しない』を選択するとジークさんのルートに入ることが出来る。
彼のルートは学園に入学せず公爵令嬢として領地を視察に行ったマリーナとジークさんが出会い次第に惹かれていく物語だ。
ジークさんことジークハルト・エイヴァンは権力争いに巻き込まれるのが嫌で王位継承権を破棄し世界を旅していた。
しかし旅の資金が底を尽き倒れてしまったところをマリーナが助ける。
そして何度か逢瀬を重ねる度に惹かれ合う二人。
その二人を邪魔するのは悪役令嬢スザンナだ。
元々公爵に愛されたマリーナが気に食わなくて嫌がらせをしていたスザンナは、二人の仲を知ってジークハルトとマリーナをまとめて亡き者にしようと暗殺集団を雇いけしかける。
けれどマリーナからスザンナに嫌がらせをされているという話を聞いていたジークハルトは、スザンナを警戒していた。
証拠を掴みスザンナを断罪するためにジークハルトは兄である国王に頭を下げて臣下として仕える代わりに自由を捨てて、マリーナを守る力を手にするのだ。
そして力を得たジークハルトによりスザンナは罪を暴かれ投獄される。
去り際にジークさんは公爵家が私に手出しできないように圧力をかけられる、と言った。
もし私が望んでいたら彼は自分の自由と引き換えに私を守ろうとしてくれたのかもしれない。
その気持ちはとても嬉しい。
でも、駄目だ。
ジークさんには自由でいてほしい。
乙女ゲームの中では最終的にヒロインと結ばれてハッピーエンドだったけれど、自ら選んだ自由を捨てたジークさんは果たして本当に幸せだったのだろうか。
ヒロインにとってはハッピーエンドだったとしてもジークさんにとっては?
いくら王位継承権を破棄したとしても権力争いに巻き込もうとする輩は多いだろう。
乙女ゲームではヒロインの為にジークさんは自分を犠牲にする道を選んだ。
でも私はジークさんに自分を犠牲にしてほしくはない。
(明日ジークさんが来たら……ちゃんと伝えよう、私の為にジークさんが自分を犠牲にする必要はないってこと)
そんな事を考えながら私はきこり小屋での一日を終えた。
◇◇◇
翌日、夕方になってもジークさんは来なかった。
その代わりにお父さんが日持ちする食べ物をバスケットに入れて届けに来た。
「ねぇお父さん。ジークさんは?」
ジークさんは基本的に約束を守る人だ。
急に用事でもできたのかと思い尋ねて見ればお父さんは眉間に皺を寄せ難しい顔をした。
「……どうやら公爵家のご令嬢に気に入られたみたいでな、今朝からずっとまとわりつかれているんだ」
マリーナがずっとついて回っている為、私の元に来ることが出来ないジークさんはお父さんにその役目を頼んだらしい。
「……あの子が、ジークさんを……」
何だか胸の辺りがもやもやする。
ジークさんが村の女性達に言い寄られてるのを見ても何も思わなかったのに、彼女がジークさんの傍にいると思うと不愉快に思えた。
お父さんはそんな私の気持ちに気が付いたのか少し複雑そうな顔をして村に戻っていった。
明日はきっとジークさんが来てくれる。
そう思いながら翌日を迎えたがその日だけでなく、その次の日もさらにその次の日もジークさんがきこり小屋を訪れる事はなかった。
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