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08 聖女の乱心
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気が付くと俺は見知らぬ森の中に倒れていた。
硬い土の感触に草の匂いがする。
体を起こしてみると驚くほど重く怠かった。体が動かないほどではないが痛みもある。
辺りを見回してみるとすぐ傍に血塗れの聖女が倒れていた。意識が無いようで目は閉じられているがその頬は涙でぐっしょりと濡れていた。
(……助かった、のか)
自分はマリサの攻撃を真正面から受け止めてしまった。
こうして助かったのは聖女の体に残る力のお陰だろう。
一人納得していると小さな唸り声がして聖女がゆっくりと起き上がった。
「起きたか?おい聖女、あの礼拝堂で何があった?」
「……」
尋ねても聖女はぴくりとも顔をあげない。
「おい!聞いてんの――」
「ハンナ!!ハンナは!?」
俺の声など届いていないように聖女は慌てて辺りをキョロキョロと見回す。
「すぐ、すぐ治さないと……っ今なら、まだ聖なる力を使えば、きっとハンナを……!」
「おい……っ」
「ハンナは絶対死なせない!ハンナっ!」
ふらつきながら立ち上がり正気を失ったかのように辺りを見回しながら歩き出そうとする聖女に、俺は何とも言えない感情を覚えた。
いつもならば大事な人を失い嘆き悲しむ人間を見て、面白おかしく笑って居たのに何故かそんな気にはならない。
聖女の頬を両手で挟み無理矢理自分と視線を合わせると現実を突きつける。
「あのシスターは死んだ!!聖女、お前が一番わかるだろう!!」
その言葉に聖女は目を大きく見開くと震える唇からぽつりと声を漏らす。
「し、んだ……?ハンナが……あ……、あぁ、あぁあ"ぁ"っ!!」
現実を拒絶するように聖女は絶叫する。
「おいっ!?しっかりしろ!」
驚いて落ち着かせようとするも聖女は嫌がる子供のように叫び続けた。
焦る反面、心が壊れるというのはこういうことをいうのだろうかと頭の片隅で思った。
(このままだとまずい……!)
こんな風に叫んでは喉を潰すし吐き出すばかりでまともに呼吸ができないだろう。
俺は拳を握ると聖女の腹部目掛けて打ち込んだ。
「あ、ぐっ」
意識を失いだらりと倒れ込む聖女を支えながら小さく舌打ちをする。
入れ替わった当初ならばこのか弱い体で何をしようと頑丈な体にダメージを与えることは出来なかった。それなのに今聖女は俺の与えた衝撃であっさり意識を失っている。こっちが負傷してるにも関わらず、だ。
聖女が精神がかなり消耗しているのだろう。
今ならば思い切りぶつかって元に戻ることも出来るのでは、と一瞬考えたが戻れる確証はない。
「面倒ばっか増やしやがって……」
そう吐き捨てると意識のない聖女を背負い、怠い体をなんとか動かしながら歩き出す。
ここがどこだが分からないがひとまず落ち着ける場所を探さなければ。
「重いんだよクソがっ……ちゃんと鍛えとけモヤシ娘!」
悪態をつきながらも足を進めていくと、小さな小屋を見つけた。
せめてあそこまでと足を動かし何とか小屋にたどり着くと、そこは随分前から空き家になっているのか家具もなく埃っぽかった。だが外で過ごすよりはマシだろう。
俺は聖女を比較的綺麗な床に寝かせ、近くの壁を背に座り込む。その瞬間どっと疲れが押し寄せてきて俺は抵抗虚しく眠りに落ちてしまった。
硬い土の感触に草の匂いがする。
体を起こしてみると驚くほど重く怠かった。体が動かないほどではないが痛みもある。
辺りを見回してみるとすぐ傍に血塗れの聖女が倒れていた。意識が無いようで目は閉じられているがその頬は涙でぐっしょりと濡れていた。
(……助かった、のか)
自分はマリサの攻撃を真正面から受け止めてしまった。
こうして助かったのは聖女の体に残る力のお陰だろう。
一人納得していると小さな唸り声がして聖女がゆっくりと起き上がった。
「起きたか?おい聖女、あの礼拝堂で何があった?」
「……」
尋ねても聖女はぴくりとも顔をあげない。
「おい!聞いてんの――」
「ハンナ!!ハンナは!?」
俺の声など届いていないように聖女は慌てて辺りをキョロキョロと見回す。
「すぐ、すぐ治さないと……っ今なら、まだ聖なる力を使えば、きっとハンナを……!」
「おい……っ」
「ハンナは絶対死なせない!ハンナっ!」
ふらつきながら立ち上がり正気を失ったかのように辺りを見回しながら歩き出そうとする聖女に、俺は何とも言えない感情を覚えた。
いつもならば大事な人を失い嘆き悲しむ人間を見て、面白おかしく笑って居たのに何故かそんな気にはならない。
聖女の頬を両手で挟み無理矢理自分と視線を合わせると現実を突きつける。
「あのシスターは死んだ!!聖女、お前が一番わかるだろう!!」
その言葉に聖女は目を大きく見開くと震える唇からぽつりと声を漏らす。
「し、んだ……?ハンナが……あ……、あぁ、あぁあ"ぁ"っ!!」
現実を拒絶するように聖女は絶叫する。
「おいっ!?しっかりしろ!」
驚いて落ち着かせようとするも聖女は嫌がる子供のように叫び続けた。
焦る反面、心が壊れるというのはこういうことをいうのだろうかと頭の片隅で思った。
(このままだとまずい……!)
こんな風に叫んでは喉を潰すし吐き出すばかりでまともに呼吸ができないだろう。
俺は拳を握ると聖女の腹部目掛けて打ち込んだ。
「あ、ぐっ」
意識を失いだらりと倒れ込む聖女を支えながら小さく舌打ちをする。
入れ替わった当初ならばこのか弱い体で何をしようと頑丈な体にダメージを与えることは出来なかった。それなのに今聖女は俺の与えた衝撃であっさり意識を失っている。こっちが負傷してるにも関わらず、だ。
聖女が精神がかなり消耗しているのだろう。
今ならば思い切りぶつかって元に戻ることも出来るのでは、と一瞬考えたが戻れる確証はない。
「面倒ばっか増やしやがって……」
そう吐き捨てると意識のない聖女を背負い、怠い体をなんとか動かしながら歩き出す。
ここがどこだが分からないがひとまず落ち着ける場所を探さなければ。
「重いんだよクソがっ……ちゃんと鍛えとけモヤシ娘!」
悪態をつきながらも足を進めていくと、小さな小屋を見つけた。
せめてあそこまでと足を動かし何とか小屋にたどり着くと、そこは随分前から空き家になっているのか家具もなく埃っぽかった。だが外で過ごすよりはマシだろう。
俺は聖女を比較的綺麗な床に寝かせ、近くの壁を背に座り込む。その瞬間どっと疲れが押し寄せてきて俺は抵抗虚しく眠りに落ちてしまった。
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