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友人のトムとリサ
しおりを挟むサクラ・アンダーソンは、大学でトムとリサという親しい友人を得ていた。トムはプログラミングが得意で、皮肉屋ながらユーモアに溢れた性格だった。一方、リサは美術専攻の学生で、感受性が豊かで、誰にでも優しい微笑みを向ける癒しの存在だった。サクラは二人と過ごす時間が大好きだったが、心の奥底ではある秘密を抱えたままだった。
ある日の午後、三人は大学近くのカフェで勉強の合間に休憩を取っていた。温かいカフェラテの湯気が漂う中、トムがふざけながら「サクラ、またそんな真面目な顔して何考えてんの?」と聞いてきた。
サクラは少し笑ったが、すぐに真剣な表情に戻った。「ねぇ、ちょっと話したいことがあるんだけど、聞いてくれる?」
トムとリサは顔を見合わせ、すぐに頷いた。「もちろん」とリサが言い、トムも「なんだよ、大げさだな」と冗談めかして言った。
サクラは深く息を吸い、言葉を選びながら話し始めた。「私、実はずっと自分の心の中で感じてたことがあるんだ。小さい頃から、兄みたいになりたいって思ってた。それが単なる憧れじゃなくて、本当に…自分がそうあるべきなんじゃないかって。」
二人は驚いた表情を見せたが、何も言わずに彼女の話を待った。サクラは続けた。「最近、あるメールが届いたんだ。『あなたの夢を叶えることは可能です』って書いてあって。リンク先を見たら、性別の移行についての情報があったの。」
リサがそっとサクラの手に触れた。「それを見て、どう思ったの?」
サクラは少し間を置いて答えた。「最初は怖かった。でも、同時に…これは私が本当に自分を見つけるためのチャンスなんじゃないかって思ったんだ。でも、どうすればいいのか分からなくて。」
トムが腕を組みながら言った。「なるほど。そのメールが本物かどうかは置いといて、それがサクラに響いたってことだよな。それ、結構大事なことだぜ。」
リサが静かに頷いた。「サクラ、それってすごく勇気がいることだと思う。でも、私たちはどんな決断をしても、あなたを応援するよ。いつもあなたの味方だから。」
その言葉に、サクラは目が潤んだ。「ありがとう、本当に。二人に話してよかった。これからどうするか、ちゃんと考えてみる。」
トムがいつもの調子で言った。「おいおい、泣くなって。俺たちは泣かせるためにここにいるんじゃないんだぞ。それより、そのメールの送り主、何者なんだろうな。もしかして、すごい秘密結社だったりして。」
三人はその場で笑い合い、緊張が少しほぐれた。サクラは自分の中で重く閉ざしていた扉を、ほんの少しだけ開けた気がした。トムとリサに話したことで、彼女はこれからも一人で悩む必要がないことを実感したのだった。
カフェを出る頃には、夕焼けが三人の背中を照らしていた。その光の中で、サクラは新しい一歩を踏み出す決意を強くしていた。
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