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森山からの誘い
しおりを挟む大学の昼休み、優菜はキャンパスのベンチで課題をまとめていた。すると、同じサークル仲間の森山が声をかけてきた。森山は爽やかな笑顔と穏やかな雰囲気を持った青年で、サークル内でも人気がある。
「優菜、ちょっといい?」
「うん、どうしたの?」
森山は少し緊張した様子で言葉を選びながら話し始めた。
「今週末、空いてるかな?もしよかったら、一緒に出かけない?」
突然の誘いに優菜は一瞬驚いたが、森山の真剣な眼差しを見て断る理由もなかった。
「いいよ。どこに行くの?」
「映画とか、あと美味しいお店も知ってるんだ。一緒に楽しめたら嬉しいな。」
こうして、二人のデートが決まった。
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### 「デートの日」
週末、優菜は少し緊張しながら待ち合わせ場所に向かった。鏡の前で何度もコーディネートを確認したブラウスとスカートの組み合わせは、自分でも珍しく思えるほど「女性らしい」選択だった。
待ち合わせ場所には森山が先に到着しており、優菜を見るなり手を振って微笑んだ。
「お待たせ!」
「いや、俺が早く来すぎただけだから。」
二人はまず映画館へ向かった。観た映画は軽快なラブコメディで、上映中にはお互いに笑いあったり、時々感想を小声で言い合ったりと楽しい時間を過ごした。
映画の後は近くのカフェでお茶をしながらお互いの趣味やサークル活動の話をした。森山は優菜の話に興味津々で、しきりに質問をしてきた。
「優菜って、本当に話しやすいよね。もっといろんな話を聞きたいな。」
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### 「森山の告白」
次に二人は少し歩いて夕食へ。森山が選んだレストランは雰囲気が良く、料理も美味しかった。デートも終盤に差し掛かる頃、森山が真剣な表情で口を開いた。
「優菜、今日一日ありがとう。本当に楽しかった。」
「私もすごく楽しかったよ。誘ってくれてありがとう。」
その言葉に安心したのか、森山は一呼吸置いてから続けた。
「実は……君にすごく興味があるんだ。」
優菜は驚いて森山を見つめた。
「え?」
「いや、その……君のことをもっと知りたい。優菜って、他の誰とも違う魅力があるっていうか、一緒にいると安心するんだ。」
森山の真剣な眼差しに、優菜は一瞬言葉を失った。
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### 「戸惑う優菜」
彼の気持ちは嬉しかった。けれど、優菜には心の奥に引っかかるものがあった。自分が本当はタイムトラベルで女性になった存在であり、元の体は男性だったという事実。これを隠したまま、彼の気持ちに応えることはできるのだろうか?
「ありがとう、森山くん。でも、ちょっと驚いてる……。」
優菜は精一杯の笑顔を作りながら、曖昧な答えを返した。
森山は優菜の戸惑いを感じ取ったのか、それ以上は踏み込まずに微笑んだ。
「うん、ごめん。急にこんなこと言って。今日みたいに、ただ楽しい時間を一緒に過ごせるだけで十分だよ。」
優菜は少しほっとしながらも、自分の中で整理がつかない気持ちに揺れていた。
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### 「帰り道」
デートの帰り道、森山と別れて一人になった優菜は空を見上げた。
「私、このままでいいのかな……。」
女性としての自分、そして誰にも言えない自分の秘密。それらが優菜の中で交錯しながら、今日の楽しい時間が彼女に少しの切なさをもたらしていた。
「森山くん……悪い人じゃないんだけどな。」
優菜は部屋の片隅に置かれた全身鏡に映る自分を一瞥し、溜息をついた。女子寮の部屋は綺麗で居心地が良かったが、どうしてもまだ自分の居場所だと感じられない。今日一日、慣れない女性の体での生活に振り回されたことを思い返しながら、ふと時計を見ると22時を回っていた。
「今日は疲れたな……お風呂でも入ってスッキリしよう。」
パジャマを片手に持ち、バスルームへ向かう。寮の個室には小さなバスルームが備わっていて、そこは彼女の唯一のプライベートな空間だった。
バスルームに入ると、優菜はスカートとブラウスをそっと脱ぎ始めた。衣服を畳みながら鏡に映る自分の姿にまた目が行ってしまう。
「……やっぱり、まだ慣れないな。」
自分の体が、以前の男性としての自分とは全く違うものになっている。すらりとした腕や脚、そして女性らしい曲線の体。胸元をそっと手で触れると、柔らかい感触に戸惑うと同時に、自分が本当に「女性」になっているという実感が込み上げてきた。
「これが……今の私なんだ。」
そう呟くと、彼女はシャワーのスイッチを入れ、温かな水流を浴びた。
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### 「一日を振り返る」
シャワーを浴びながら、今日一日を振り返る。
「森山くんにデートに誘われたのは本当に驚いたな……。でも、楽しかった。」
女子として初めて経験するデート。男性だった頃には感じなかった視点や心の動きが自分の中にあったことを思い出す。森山の優しさや真剣な眼差しは、どこかくすぐったい気持ちにさせた。
「でも……私、本当のことを話せないままでいいのかな。」
彼の好意を受け入れるには、自分の秘密を明かさなければならない。しかし、それができる自信はまだなかった。
また、大学での出来事も思い出す。慌てて男子トイレに入りかけてしまった瞬間や、他の女子たちとの雑談にうまく溶け込めたことも、全てが新鮮で刺激的だった。
「意外と、女子としての日常も悪くないのかも。」
そう思いながらも、元の自分に戻れるのか、このまま女性としての人生を歩むのか、未来の選択肢が頭をよぎる。
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### 「湯船の中でのひととき」
シャワーを浴び終えると、湯船にゆっくりと身を沈めた。湯の中で手足を伸ばしながら、心と体の緊張がほどけていくのを感じる。
「本当に不思議だな……。元の自分とは違う感覚がたくさんあるけど、少しずつ慣れてきてるのかな。」
湯気が立ち上る中、目を閉じて静かに呼吸を整える。今日感じた様々な感情が一つ一つ溶けていくようだった。
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### 「新たな決意」
湯船から上がり、パジャマを着て部屋に戻ると、優菜はベッドに腰掛けながら窓の外を眺めた。月明かりが差し込む部屋は静かで心地よかった。
「明日からも、しっかりやっていこう。」
自分の新しい体と生活に対する戸惑いはまだ残っているが、それでも前向きにこの状況に向き合おうと思う優菜だった。
「もしかしたら、これも一つのチャンスかもしれないしね。」
布団に潜り込み、目を閉じた優菜の表情には、どこか希望の色が浮かんでいが、森山が言った「君のことをもっと知りたい」と言葉がとても気になった。
優菜は心の中で呟きながら、今後どうするべきかを一晩中ベッドの中で考えた。
そして優菜は森山との関係をこれ以上続ける事に危険を感じて森山には何も言わずに、優菜の姿のままで高校生の時代に行くことを決意した。
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