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突然の告白
しおりを挟むキャンプから数日が経ち、夏休みもいよいよ終わりが近づいていた。優菜はどこか落ち着かない気持ちを抱えていた。楽しい思い出がたくさんできた夏だったが、心の奥には複雑な感情が渦巻いていた。
自分自身だった「優人」とともに過ごしたこの夏。その「優人」から誘いを受ける形で、今日、二人で会うことになったのだ。
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### 「川沿いの公園で」
待ち合わせ場所は川沿いの静かな公園だった。日が傾き始め、涼しい風が吹く中、優菜はベンチに座って優人を待っていた。
「優菜!」
振り向くと、優人が手を振りながら駆け寄ってきた。
「待たせた?」
「ううん、今来たところ。」
そう答えながら、優菜の胸は少し早く鼓動を刻んでいた。過去の自分とこうして向き合う状況が、どこか非現実的で緊張してしまう。
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### 「言葉のきっかけ」
二人で歩きながら、川沿いの景色を眺める。優人は少しぎこちない様子だった。普段はもっと軽口を叩いたり冗談を言ったりするのに、今日は静かだ。
やがて優人が立ち止まり、小さく息を吐いた。
「優菜、ちょっと話があるんだ。」
優菜は心臓が跳ね上がるのを感じた。
「うん……なに?」
優人は顔を赤らめながらも、しっかりと優菜の目を見つめて言った。
「俺さ……ずっと思ってたんだけど、優菜のことが好きなんだ。」
その瞬間、優菜の時間が止まったように感じた。まさか、自分自身である優人から告白される日が来るなんて、思ってもみなかったからだ。
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### 「優菜の答え」
一瞬の沈黙の後、優菜は口を開いた。
「……どうして、私のことを好きだと思ったの?」
優人は少し困ったように笑って言った。
「なんだろうな……最初はただ、優菜ってどこか不思議な感じがして、気になってた。でも、いろいろ話したり一緒に過ごしてるうちに、優菜の優しさとか、落ち着いてるけど楽しそうに笑うところとか、全部が好きになった。」
その言葉に、優菜の心は複雑な感情でいっぱいになった。優人は真剣だ。それが伝わるからこそ、どう答えるべきか迷ってしまう。
「ありがとう。でも……。」
優菜の声は少し震えていた。自分自身である優人が自分に抱いている感情に応えられるのか――その答えを出すのは難しい。
「ちょっと時間をもらってもいいかな?」
優人は少し驚いたようだったが、すぐに頷いた。
「もちろんだよ。急にこんなこと言って、ごめんな。でも、ちゃんと伝えたかったんだ。」
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### 「別れ際」
日が完全に沈む頃、二人は公園を出ることにした。
「今日はありがとう。」と優菜が小さく笑って言うと、優人も笑顔で答えた。
「こちらこそ。」
二人は歩きながら、普段通りの会話を交わす。だが、心の中ではそれぞれが違う感情を抱えていた。
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### 「優菜の決意」
家に帰った優菜は、ベッドに横になりながら今日のことを思い返していた。優人の真剣な表情、言葉の一つひとつが頭に浮かんでは消える。
自分自身としての優人と、今の自分である優菜。その複雑な関係を乗り越えて、どう答えるべきなのか。
しかし、一つだけ確かなことがあった。それは、優人の気持ちが本物であること。そして、夏美や隆司とともに過ごした夏の思い出を通じて、自分もまた優人のことを特別に思っているということだ。
優菜は小さく深呼吸をして、心の中で決意した。
「ちゃんと向き合おう。優人に、私の本当の気持ちを伝えるために。」
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