タイムトラベルノート

廣瀬純一

文字の大きさ
上 下
12 / 12

突然の告白

しおりを挟む

キャンプから数日が経ち、夏休みもいよいよ終わりが近づいていた。優菜はどこか落ち着かない気持ちを抱えていた。楽しい思い出がたくさんできた夏だったが、心の奥には複雑な感情が渦巻いていた。  

自分自身だった「優人」とともに過ごしたこの夏。その「優人」から誘いを受ける形で、今日、二人で会うことになったのだ。  

---

### 「川沿いの公園で」

待ち合わせ場所は川沿いの静かな公園だった。日が傾き始め、涼しい風が吹く中、優菜はベンチに座って優人を待っていた。  

「優菜!」  

振り向くと、優人が手を振りながら駆け寄ってきた。  
「待たせた?」  
「ううん、今来たところ。」  

そう答えながら、優菜の胸は少し早く鼓動を刻んでいた。過去の自分とこうして向き合う状況が、どこか非現実的で緊張してしまう。  

---

### 「言葉のきっかけ」

二人で歩きながら、川沿いの景色を眺める。優人は少しぎこちない様子だった。普段はもっと軽口を叩いたり冗談を言ったりするのに、今日は静かだ。  

やがて優人が立ち止まり、小さく息を吐いた。  
「優菜、ちょっと話があるんだ。」  

優菜は心臓が跳ね上がるのを感じた。  
「うん……なに?」  

優人は顔を赤らめながらも、しっかりと優菜の目を見つめて言った。  
「俺さ……ずっと思ってたんだけど、優菜のことが好きなんだ。」  

その瞬間、優菜の時間が止まったように感じた。まさか、自分自身である優人から告白される日が来るなんて、思ってもみなかったからだ。  

---

### 「優菜の答え」

一瞬の沈黙の後、優菜は口を開いた。  
「……どうして、私のことを好きだと思ったの?」  

優人は少し困ったように笑って言った。  
「なんだろうな……最初はただ、優菜ってどこか不思議な感じがして、気になってた。でも、いろいろ話したり一緒に過ごしてるうちに、優菜の優しさとか、落ち着いてるけど楽しそうに笑うところとか、全部が好きになった。」  

その言葉に、優菜の心は複雑な感情でいっぱいになった。優人は真剣だ。それが伝わるからこそ、どう答えるべきか迷ってしまう。  

「ありがとう。でも……。」  

優菜の声は少し震えていた。自分自身である優人が自分に抱いている感情に応えられるのか――その答えを出すのは難しい。  

「ちょっと時間をもらってもいいかな?」  

優人は少し驚いたようだったが、すぐに頷いた。  
「もちろんだよ。急にこんなこと言って、ごめんな。でも、ちゃんと伝えたかったんだ。」  

---

### 「別れ際」

日が完全に沈む頃、二人は公園を出ることにした。  
「今日はありがとう。」と優菜が小さく笑って言うと、優人も笑顔で答えた。  
「こちらこそ。」  

二人は歩きながら、普段通りの会話を交わす。だが、心の中ではそれぞれが違う感情を抱えていた。  

---

### 「優菜の決意」

家に帰った優菜は、ベッドに横になりながら今日のことを思い返していた。優人の真剣な表情、言葉の一つひとつが頭に浮かんでは消える。  

自分自身としての優人と、今の自分である優菜。その複雑な関係を乗り越えて、どう答えるべきなのか。  

しかし、一つだけ確かなことがあった。それは、優人の気持ちが本物であること。そして、夏美や隆司とともに過ごした夏の思い出を通じて、自分もまた優人のことを特別に思っているということだ。  

優菜は小さく深呼吸をして、心の中で決意した。  
「ちゃんと向き合おう。優人に、私の本当の気持ちを伝えるために。」  

---
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

奇妙な日常

廣瀬純一
大衆娯楽
新婚夫婦の体が入れ替わる話

高校生とUFO

廣瀬純一
SF
UFOと遭遇した高校生の男女の体が入れ替わる話

体内内蔵スマホ

廣瀬純一
SF
体に内蔵されたスマホのチップのバグで男女の体が入れ替わる話

ビキニに恋した男

廣瀬純一
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

秘密のキス

廣瀬純一
青春
キスで体が入れ替わる高校生の男女の話

兄の悪戯

廣瀬純一
大衆娯楽
悪戯好きな兄が弟と妹に催眠術をかける話

未来への転送

廣瀬純一
SF
未来に転送された男女の体が入れ替わる話

処理中です...