カジュアルな性転換

廣瀬純一

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近未来?

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未来の日本では、性転換が極めて簡単になり、特別なパンストを履くだけで瞬時に身体が男性から女性、または女性から男性へと変わる技術が普及していた。そのパンストは「性転換パンスト」と呼ばれ、医療技術の進歩とともに開発され、政府も認可したため、誰もが手軽に購入し利用できるようになっていた。これにより、性別の境界は曖昧になり、性別の選択が日常の一部として扱われるようになっていた。

特に新宿の歓楽街にあるおかまバーやオナベバーでは、この性転換パンストの影響が顕著だった。かつては性別に基づくアイデンティティが中心だったが、今では日替わりで性別を変えるパフォーマーたちが集まり、バーはますます多様な性の表現を受け入れる場となっていた。

おかまバー「カメレオン」では、スタッフもお客も性転換パンストを日常的に使用していた。例えば、マリという名前の人気パフォーマーは、夜のショーのたびに性別を自由に変え、観客を魅了していた。マリはある時は美しい女性として、またある時はハンサムな男性としてステージに立ち、その変化が彼女の魅力の一部になっていた。

「今夜はどっちのマリが見られるかな?」と、常連客の間ではその日のマリの性別が一つの楽しみとなっていた。

オナベバー「逆転の城」も同様に、性転換パンストを使うことが一般的だった。ここでは、女性が男性として振る舞うことが一昔前の「オナベ」の定義だったが、性転換パンストのおかげで物理的な性別の違いがなくなった今では、単に性別を演じるというより、キャラクターとしての表現が重要視されるようになっていた。

一方で、社会全体では性別に対する固定観念が徐々に薄れつつあった。「男だから」「女だから」という役割分担や期待は消え去り、人々は自分の性別を自由に選択し、時に一日の中でも性別を変えながら生活していた。職場でも、朝出社したときは男性だった人が、昼休みには女性として同僚とランチを楽しむという風景が日常化していた。

「今日はどの性別でいこうか?」というのが、新たな「今日の服は何を着よう?」と同じくらい自然な会話の一部となった。性転換パンストの普及により、性別に縛られることなく、人々は自分の「その日の気分」に合わせて性を選べる社会が現実のものとなったのだ。

性転換パンストの技術は、単に身体的な変化だけでなく、ホルモンバランスや声帯の調整、筋力の変化までも瞬時に可能にするため、完全に異性としての機能を一時的に獲得することができた。それによって、恋愛関係や家庭生活もより自由で柔軟なものとなり、パートナーが性別を変えたとしても、それが特別なことではなくなっていた。

未来のこの社会では、性別は固定されたものではなく、自己表現の一つの要素に過ぎない。おかまバーやオナベバーが、その自由な性別選択の象徴的な場所として、ますます多くの人々に支持されていた。
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