入れ替わった双子

水泳大会

ある夏の日、学校では水泳大会が開催されることになった。美咲のクラスは、水泳部のエースである彼女に大きな期待を寄せていた。美咲は小さい頃から水泳が得意で、何度も大会で優勝してきたからだ。

しかし、その前の晩、例の入れ替わりが起こった。いつものように響が目を覚ますと、見慣れたはずの自分の部屋ではなく、美咲の部屋の天井が目に飛び込んできた。

「あぁ、またかよ……」と響はため息をついた。

しかし、今日はいつもと違った緊張感があった。今日は美咲が出場する**水泳大会**の日だったのだ。

「やばい！俺、美咲の体で水泳なんてできるわけないだろ！」

響はすぐに美咲の部屋に飛び込み、入れ替わった自分の体にいる美咲に向かって声をかけた。

「美咲、今日はどうすんだよ！？お前、水泳大会じゃん！」

美咲は落ち着いて響を見つめ、少し困った顔をしながらも答えた。

「響、お願い。私、今日の大会どうしても出たいの。みんなも期待してるし……」

「でも俺、水泳なんてまともに泳げないぞ！しかも、お前みたいに速くなんて絶対無理だ！」

「大丈夫だよ、私の体なら自然に動けるはず。それに、響ならできるよ。今までだってお互いの役割を何とかこなしてきたでしょ？」

響は不安げに頷いたものの、美咲の信頼に応えたい気持ちもあった。

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水泳大会の会場である学校のプールに着いた響（美咲の体）は、クラスメイトたちから期待の眼差しを受けていた。美咲の友達の中村さんが近づいてきて、にっこり笑いながら声をかけた。

「美咲、今日も頼りにしてるよ！エースは君だからね！」

響は内心焦りながらも、「あ、うん、頑張るよ……」とぎこちなく返事をした。

いよいよ競技が始まり、響は100メートル自由形のレースに出場することになった。美咲の体で泳ぐことにまだ慣れていない響は、心臓がバクバクしていた。スタートラインに立ち、周りの選手たちが真剣な表情で準備をしているのを見て、ますますプレッシャーを感じた。

「どうしよう、絶対無理だ……」

だが、そのとき、プールサイドから美咲（響の体）がこちらを見て、小さく頷いて見せた。それを見た瞬間、響は少しだけ落ち着きを取り戻した。

「美咲ならこういうときどうする？集中しろ、響……美咲の体を信じるんだ」

スタートの合図が鳴り響き、響は一斉にプールへ飛び込んだ。水の感触が体を包み込み、美咲の体が自然と動き始めた。普段は泳ぐのが苦手な響だったが、美咲の体は違った。まるで水の中で自分の意思を持っているかのように、スムーズに進んでいく。

「なんだ、この感覚……美咲の体って、すごい！」

最初はぎこちなかったが、徐々にリズムをつかんでいく。周りの選手たちが視界に入っても、焦らずに美咲の体の動きに身を任せた。呼吸も自然にできているし、腕のストロークも軽やかだ。響は、自分が今まで経験したことのないほど速く泳いでいることに驚いた。

そして、ゴールが近づいてきた。響は全力でフィニッシュを目指し、最後の力を振り絞って壁にタッチした。

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プールから上がると、クラスメイトたちが歓声を上げて駆け寄ってきた。

「美咲、すごい！圧勝だよ！」  
「さすがエース！」

響はぜいぜいと息をつきながら、まだ状況を飲み込めずにいた。自分が、本当にこのレースで勝てたのだ。

「俺が……勝ったのか？」

そのとき、プールサイドで響の体に入った美咲が笑顔で駆け寄ってきた。

「響、すごいじゃん！やっぱりできたでしょ！」

「いや、これ美咲の体がすごいんだよ！俺じゃ絶対無理だって……」

二人は顔を見合わせて笑い合った。体は入れ替わっていても、お互いを信じて乗り越えたことが、二人をさらに強く結びつけた瞬間だった。

その日、響は改めて思った。たとえ入れ替わりが続いたとしても、信頼し合えばどんな困難も乗り越えられる。美咲の強さを知ったことで、彼自身も少しだけ成長したように感じていた。