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気分転換の遊園地
しおりを挟む葵(悠の体)と悠(葵の体)は、凜の提案で週末に遊園地に行くことになった。体が入れ替わっているという奇妙な状況に頭を悩ませ続けていた二人にとって、凜の言葉は救いだった。
「たまには気分転換も必要よ。悩んでばかりじゃ何も解決しないんだから!」
「でも…こんな状態で遊園地って、なんだか変な感じ。」
「いいじゃん、誰も入れ替わってるなんて気づかないって。」
悠(葵の体)が少し渋る中、凜に押し切られる形で遊園地に行くことが決まった。
***
### 遊園地到着
当日、遊園地の入り口に立つ三人。快晴の空に観覧車がそびえ立ち、周囲は楽しそうな笑い声で満ちていた。
「わー、久しぶりに来たけど、やっぱりテンション上がるね!」
凜は目を輝かせながら言った。
「こんなに混んでると、誰かにぶつからないか心配だよ。」
葵(悠の体)は少し引き気味だったが、凜に腕を引っ張られて半ば強引に進むことに。
「まずは何から行く?」
凜がガイドマップを見ながら尋ねると、悠(葵の体)は即答した。
「絶叫系だろ!スリルがあるやつ!」
「悠、今のその体で言うと説得力が…。」
葵(悠の体)は苦笑いしながら答えた。
***
### スリルと笑い
最初に三人が乗ったのはジェットコースター。悠(葵の体)は大はしゃぎし、凜も楽しそうだったが、葵(悠の体)は乗り物酔いしそうな顔をしていた。
「も、もういい…次は穏やかなのがいい…。」
ジェットコースターを降りた葵は顔を青ざめさせながら呟いた。
「えー、まだ一つ目だよ!次はお化け屋敷行こうよ!」
凜は全く気にせず次の候補を提案した。
「いいね、お化け屋敷!怖がる葵の顔が見たい!」
悠(葵の体)は満面の笑みで言ったが、それが自分の顔であることを一瞬忘れていた。
「…それ、今は自分の顔だからね。」
葵はジト目で言い返した。
***
### お化け屋敷での事件
暗闇の中、お化け屋敷を進む三人。最初は凜が前を歩き、悠が真ん中、葵が最後尾だったが、途中で突然現れた幽霊の人形に凜が大声を上げた。
「ひゃあああっ!」
「凜、大丈夫?」
悠(葵の体)は凜の肩を支えようとしたが、そこで足元に置かれた仕掛けに引っかかり、二人とも転んでしまった。
その瞬間、後ろから来ていた葵がぶつかり、三人は文字通り「積み重なった」状態に。
「ちょ、重い!だれの足が顔に当たってるの!?」
「私じゃないわよ!悠でしょ!」
「いや、俺はちゃんと支えようとしただけだ!」
暗闇の中で慌てふためく三人だったが、やがて笑い声に包まれた。
***
### 大切な時間
遊園地を一日中楽しんだ三人は、最後に観覧車に乗ることにした。
「やっぱり、こうやって何も考えずに遊ぶのっていいね。」
葵(悠の体)が静かに言った。
「うん。少しは気が紛れたみたいでよかった。」
凜は微笑みながら、観覧車の窓の外を見た。
「でも…あと三ヶ月か。」
悠(葵の体)が呟くと、車内の空気が少しだけ沈んだ。
「まあまあ、悩むのはまた今度にしようよ。せっかく楽しい時間を過ごしたんだから!」
凜が明るく言うと、二人も頷いた。
観覧車の頂上に差しかかったとき、三人は窓の外に広がる美しい夜景を見つめた。その瞬間だけは、体が入れ替わったことも忘れ、ただ目の前の景色に心を奪われていた。
「なんだか、不思議だね。」
「うん。でも、こういう時間も大切だよね。」
三人の絆が少しだけ強くなった、そんな一日だった。
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