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告白された二人
しおりを挟む悠と葵が体を入れ替えたまま過ごし始めて数か月。二人は日常生活に慣れつつあったが、予期せぬ出来事が二人を試すことになる。
***
### 悠(葵の体)が告白される
放課後、教室でノートを片付けていた悠(葵の体)に、同じクラスの男子・翔太が話しかけてきた。
「葵、ちょっといい?」
翔太は普段からクラスで人気の高い爽やかなタイプで、葵(本物)も密かに「カッコいいな」と思っていた人物だ。
悠は内心ドキリとしながら、「あ、うん、何?」と答えた。翔太は少し緊張した様子で、悠を教室の外に連れ出す。
「実は、ずっと前から言いたいことがあったんだ。」
「え…?」
「俺、葵のことが好きなんだ。もしよかったら、付き合ってくれないか?」
突然の告白に、悠は頭が真っ白になった。翔太の真剣な瞳に、断るのがどれだけ難しいか瞬時に悟る。しかし、悠は自分が「葵ではない」ことを思い出し、困惑した表情を浮かべた。
「えっと、その…」
悠は必死に言葉を探しながら、「ちょっと考えさせてほしい」とだけ返し、その場を逃げるように去った。
***
### 葵(悠の体)も告白される
その頃、葵(悠の体)は運動部の後輩である女子・美咲に呼び止められていた。美咲は頬を赤らめながら、葵(悠の体)に視線を向けてきた。
「先輩、あの…ずっと言いたかったんですけど…」
「え、なに?」
「先輩のこと、好きです!私と付き合ってください!」
思いがけない展開に、葵は思わず笑いそうになるのを堪えた。しかし、ここで軽く流すわけにはいかないことも理解していた。
(まさか悠の体で告白されるなんて…これ、悠にバレたら大変なことになるかも。)
葵は困りながらも「ありがとう。でも、ちょっと今は考えさせてほしい」とだけ言い、その場をなんとか切り抜けた。
***
### 二人の相談
その夜、二人はお互いの家でリモート通話をしながら、今日の出来事を報告し合った。
「なあ、葵。今日、翔太に告白されたんだけど…どうすればいいんだ?」
「えっ!?翔太君が…?それで、なんて言ったの?」
「考えさせてって答えた。いや、だって俺、葵の体なんだぞ?付き合うとか無理だろ!」
「そりゃそうだよね。でも、翔太君が私に告白してくれるなんて、ちょっと嬉しいかも…」
葵は照れくさそうに笑った。
「嬉しいとか言ってる場合じゃないだろ!それどころか、俺の体でも美咲に告白されたんだよ!」
「えっ!?美咲ちゃんが!?それでなんて答えたの?」
「同じく考えさせてって言ったけど…これ、どうにかしないとマズくない?」
二人はため息をつきながら頭を抱えた。自分たちが入れ替わっていることは誰にも言えない。だからこそ、この告白をどう処理するかが難しい問題だった。
***
### 翔太と美咲、それぞれの思い
翌日、翔太は悠(葵の体)を再び放課後に呼び出した。
「昨日、ちゃんと考えられた?」
悠は覚悟を決めて、「実は、私には他に好きな人がいるの」と伝えた。翔太は少し驚いたようだったが、「そっか。でも、ちゃんと言ってくれてありがとう」と笑顔で引き下がった。
一方、葵(悠の体)も美咲に同じように断る言葉を選び、「ごめん、今は誰とも付き合うつもりがないんだ」と伝えた。美咲は寂しそうな表情を見せたが、「先輩らしい答えですね」と納得してくれた。
***
### 二人の絆が深まる
その夜、再び通話を始めた二人は、告白を無事に断ったことを報告し合った。
「いやー、あれはマジで緊張した。翔太って本当に真剣だったんだよな。」
「美咲ちゃんもだよ。でも、なんか、こういうのって不思議だよね。」
「何が?」
「私たち、こんなにお互いの大変なところをカバーし合ってるんだもん。普通の友達じゃ絶対に無理な関係だよね。」
葵の言葉に、悠は少し照れくさそうに笑った。
「まあ、確かにそうかもな。でも、お前の体で告白されるのはもうゴメンだぞ。」
「それはお互い様でしょ!」
二人はお互いの大変さを改めて実感し、入れ替わりがもたらす奇妙な日常を乗り越えていく決意を固めたのだった。
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