タクミのバレーボール

廣瀬純一

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朝の衝撃

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高校生の佐藤タクミは、どこにでもいる普通の男子高校生だった。スポーツは好きだけれど、特別な運動神経もないし、部活も軽音部でそこまで活動的なわけではなかった。

タクミは、いつもと同じように目を覚ました。カーテンの隙間から差し込む柔らかな朝日が、彼の顔に優しく当たっている。少しぼんやりした頭を抱えながら、いつものようにベッドから体を起こそうとすると、何か違和感があった。肩にかかる髪の毛や、体がやけに軽いように感じる。

「なんだろう…体が変な感じがする…」

まだ完全に目が覚めていないタクミは、いつもの癖で目をこすりながらベッドから立ち上がった。ふと床に置かれた鏡が目に入る。ぼんやりとした視界が徐々にクリアになっていくと、鏡に映った自分の姿に驚愕した。

「えっ…?!」

鏡に映っていたのは、完全に女の子の姿をした自分だった。髪の毛が肩にかかる長さで、顔立ちもどこか柔らかくなり、肌も滑らかでツヤがある。パジャマの上からでも、体つきが以前と全く違うことがはっきりとわかる。

タクミは慌てて両手で顔を触った。小さく、柔らかい輪郭。まつげが長く、目元がどこか涼しげだ。そして驚くべきことに、胸の部分にも明らかな変化があった。パジャマの上から確認すると、そこにははっきりと女性らしい膨らみがある。慌てて後ずさりし、ベッドに腰を下ろすタクミ。

「なんで…どうしてこんなことに…」

信じられない気持ちと混乱が交錯し、頭が真っ白になった。夢かと思い、何度も頬をつねってみるが、痛みがリアルで、どうやら夢ではないようだ。体の動きもどこかしなやかで、これまでとは違う。

もう一度鏡の前に立ち、細かく自分の姿を観察する。顔つきは確かにタクミ自身の面影があるが、それでもどこから見ても女の子の顔だ。慌てて部屋中を探し回るが、これといった手がかりは見当たらない。

「とにかく、まずは学校に行かないと…いや、待てよ、この姿で学校なんか行けるのか?」

タクミは深呼吸し、落ち着こうとするが、次々と湧き上がる疑問が頭をよぎる。友達や家族はこの変化にどう反応するだろうか?どうやって説明すればいいのか?タクミはしばらくの間、その場で途方に暮れながら座り込んだが、やがて意を決して立ち上がり、制服のクローゼットに向かった。

「まずは、何とかしてこの状況に慣れるしかない…か。」

彼の一日は、これまでとはまるで違ったものになりそうだ。
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