小学生をもう一度

廣瀬純一

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制服とスカート

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松岡翔子――もとい翔太は、自分が今、小学三年生の女の子として生きているという事実をまだ完全には受け入れられていなかった。しかし、その朝は早々に現実を突きつけられた。  

クローゼットを開けてみると、吊り下がっているのはフリルがついたブラウス、チェック柄のスカート、そして赤いリボン。どれも、翔太が一度も着たことのないものばかりだ。  

「これを着て学校に行くのか…」  

半信半疑ながら、時間も迫っている。翔子――いや、翔太は、意を決して制服を手に取り、着替え始めた。  

---

### **初めてのスカート**  

鏡に映った自分の姿は、どこからどう見ても小学三年生の女の子だった。白いブラウスの上に水色のセーラー服風の上着を羽織り、チェック柄のスカートがふわりと膝上で揺れている。  

「これが女の子の服か…なんだかスースーするな。」  

スカートの感覚に戸惑いながらも、なんとか準備を済ませた翔太が玄関に向かうと、チャイムが鳴った。  

「翔子ちゃん、行こー!」  

ドアを開けると、そこには幼馴染の佐藤美紀がいた。翔子のすぐ近所に住む美紀は、翔太がこの状況に放り込まれる前からの知り合いで、クラスメイトでもある。  

「おはよう、翔子ちゃん!今日も早いね。」  

「お、おはよう…。」  

翔太はぎこちない笑顔で応じた。美紀が翔子に話しかけるたびに、自分が本当に「翔子」として見られているのだと実感させられる。  

---

### **登校の道**  

二人並んで歩く登校の道。美紀はいつも通り、楽しそうに話していた。  

「昨日の宿題、ちょっと難しかったよねー。翔子ちゃん、できた?」  

「え、あ…まあ、なんとか。」  

宿題の話どころか、昨日の出来事すら思い出せない翔太。けれど、話題が途切れるのも気まずくて、適当に相槌を打ちながら歩く。  

一方で、スカートを履いて歩く感覚がどうにも気になって仕方がない。風が吹くたびに裾が揺れるのが妙に落ち着かない。  

「翔子ちゃん、スカートが気になるの?」美紀が不意に笑いながら言った。「そんなに裾ばっかり気にしてたら、みんなに変だと思われちゃうよ?」  

「う、うん、そうだね…。」  

言い訳しようにも、どうにもならない。翔太は心の中で「女の子って大変だな…」と呟いた。  

---

### **学校に着くと**  

校門に近づくと、友達たちが集まっているのが見えた。翔太――いや、翔子の名前を呼ぶ声が聞こえ、彼女たちが手を振っている。  

「翔子ちゃん!おはよー!」  

「あ、うん、おはよう!」  

ぎこちない笑顔で挨拶しながら、翔太は改めて思った。この新しい生活がどれだけ続くのか分からないけれど、とりあえず周りに馴染むことが最優先だと。  

「よし、今日もなんとかやり過ごそう。」  

そう決意しながら、翔太――いや翔子は、美紀と一緒に校舎の中へと足を踏み入れた。これが、自分の新しい日常の始まりだった。
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