イヤホン型意識転送装置

廣瀬純一

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装置のバグ

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戻れない僕たち**

東京の大学に通う雄大(ゆうだい)は、ずっと遠距離恋愛中の彼女・咲(さき)に会いたいと思っていた。しかし彼女が住む福岡まではなかなか行けない。そこで雄大は、密かに開発していた「意識転送装置」を使い、福岡に住む姉の春菜(はるな)の体を借りて彼女と会うことにした。

春菜もこのアイデアに乗り気で、二人はワイヤレスイヤホン型の装置を装着し、意識を交換。ついに雄大は姉の体で福岡の街に降り立ち、久々に咲と会うことができた。だが、その日、思わぬトラブルが二人を待ち受けていた…。

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**1章:久しぶりのデート**

姉の体で待ち合わせ場所のカフェに入ると、咲が雄大(姉の体)を見つけて手を振った。

「春菜さん、今日はありがとうございます!雄大くん、最近ずっと忙しいみたいで…」

咲は、雄大の「姉」として会いに来たつもりで嬉しそうに微笑んだ。雄大は少し戸惑いつつも、「ううん、こちらこそ会えて嬉しいわ」と姉のフリを装いながら答えた。久しぶりに見る彼女の笑顔に、胸が温かくなった。

二人はカフェで話をし、街を歩きながら彼女の近況や悩みを聞いた。彼女が日々どれほど彼を思ってくれているかが伝わってきて、雄大は少し胸が痛んだ。

「いつか、ちゃんと君に会いに行くからね…」と心の中で呟きながら、雄大は咲との時間を楽しんでいた。

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**2章:不穏な兆候**

デートの終盤、急に頭がズキッと痛んだ。その瞬間、視界が一瞬暗くなり、足元がふらつく感覚がしたが、すぐに収まった。雄大は「意識転送装置」の影響かもしれないと思いつつ、咲に気づかれないように平静を装った。

「春菜さん、大丈夫ですか?顔色が悪いみたい…」と、心配そうに咲が言った。

「え、ええ、大丈夫よ。少し疲れが出ただけだと思うわ」と言ってなんとか切り抜けたが、不安が胸をよぎった。装置の異常なんて今までなかったのに、何かのバグでも起きてしまったのだろうか?

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**3章:戻れない現実**

その日の夜、雄大は福岡の春菜のアパートに戻り、早速元の体に戻るために意識転送装置を起動しようとした。しかし、何度スイッチを押しても装置が反応しない。

「…嘘だろ、なんで動かないんだ?」

東京にいる春菜にも連絡を取り、装置の調子を確認してもらったが、彼女もまったく反応がないと言う。お互いに操作を試みるが、何度やっても意識が元に戻らない。

「まさか、僕たち…ずっとこのままなのか?」

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**4章:日常生活の混乱**

翌日から、二人はそれぞれの生活を「入れ替わったまま」続けなければならなくなった。雄大は姉の体で福岡の生活をしながら、彼女の仕事に必要なスケジュールや人間関係について必死で勉強する羽目に。職場では何度か「春菜ちゃん、最近ちょっと変わったね?」と指摘されるが、なんとか「ちょっと疲れてるだけ」とごまかした。

一方、東京の春菜も雄大の大学に通わなければならなかったが、授業の内容が難しすぎて全くついていけない。彼女は頭を抱えながらも、弟の代わりにノートを取り、大学生活を続けようと努力していた。

「雄大、あんた普段こんな勉強してるの!?もう少しリスペクトしてあげるべきだったかも…」と姉は内心で呟いた。

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**5章:咲との関係に訪れる危機**

ある日、咲が再び春菜(雄大の意識が入ったまま)に会いたいと言ってきた。彼女は「雄大が会いに来てくれないのが寂しい」と本音を漏らし、涙ぐんでいた。

その瞬間、雄大は胸が痛くなり、思わず彼女を抱きしめた。しかし、それが咲にとって「彼氏の姉」に見えるということを思い出し、すぐに離れた。

「春菜さん、なんだか最近すごく優しいですね…」

「…あ、ありがとう」

雄大は必死で言葉を選びながら、彼女の寂しさを慰めようとするが、どうにももどかしい思いが募る。いつかまた本当の自分として彼女に会えるのだろうか――その不安が、彼の心を蝕んでいった。

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**6章:元に戻るための決意**

雄大と春菜は、この異常を解決するために、それぞれ調査と修理を開始することを決意した。雄大は姉の友人や同僚に頼みながら装置の修理を試み、春菜も東京で専門の技術者を探して何とか元に戻ろうと努力を続けた。

「姉ちゃん、絶対に元の体に戻るから。それまで僕の生活、できるだけ支えてほしい」

「うん、わかった。お互い、なんとか耐えよう」

こうして二人は、互いに支え合いながら生活していく覚悟を決めた。しかし、心の中ではそれぞれの体がいつか戻ることを願いながら、長い日々が続いていくのだった。

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**エピローグ**

結局、二人が元の体に戻れる日はまだ来ていない。だが、その経験を通じて、雄大は姉の強さと優しさを知り、春菜は弟の真剣さと恋愛の悩みを理解するようになった。家族だからこそわかること、そして体が入れ替わったからこそ気づいた「他人の人生の重さ」を、それぞれの胸に刻んだ。

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