兄になった妹

廣瀬純一

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真奈と悠人

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**登場人物**  
- **姉:真奈(まな)** 26歳、外資系企業に勤めるキャリアウーマン。真面目でしっかり者。  
- **弟:悠人(ゆうと)** 20歳、大学2年生で、まだ少し子供っぽい性格。気楽で自由な生活を送っている。

---

それは、何でもない普通の朝のはずだった。姉の**真奈**と弟の**悠人**は、たまたま同じ日に珍しく一緒に朝ごはんを食べていた。

「仕事とか大変そうだね、姉ちゃん。会社でバリバリやってる姿、想像つかないよ。俺には無理だなあ」  
悠人が気軽に言った。

「悠人こそ、大学生活なんて気楽そうじゃない?私は毎日プレゼンや会議、締め切りに追われてヘトヘトなのに」  
真奈は軽くため息をつきながら、朝食のトーストをかじる。

その会話を最後に、不思議なことが起こった。

---

次に目を覚ましたとき、真奈は見知らぬベッドに横たわっていた。見上げた天井も違えば、周囲の部屋も自分のものではない。慌てて起き上がり、鏡を見た瞬間、彼女は絶叫した。

鏡の中に映っていたのは――**弟の悠人**だった。

「え、ええっ!?な、なんで悠人がここに…!?いや、これ、私!?私が悠人に!?どういうこと!?!?」

同じころ、悠人も異変に気づいた。彼はいつもと違う体の重さと、違和感に気付き、ベッドから飛び起きる。

「…な、なんだよこれ!?俺、姉ちゃん!?うわ、髪長っ!腕が細い!えええ、どうなってんだよこれ!!」

どうやら、真奈と悠人は**体が入れ替わってしまった**のだ。

---

### 1日目:ドキドキの「交換生活」

最初はパニックになった2人だったが、どうにも元に戻る方法が見つからず、仕方なく**お互いの役割を果たすことにした**。真奈は悠人として大学に行き、悠人は真奈として会社に行かなければならない。

#### 真奈(悠人として大学生活を体験)

「お、悠人、今日はちゃんと出席するんだな!」  
友人たちに囲まれ、真奈は戸惑った。大学なんて卒業して数年経つし、講義内容なんて全然わからない。さらに、自由気ままな大学生活に慣れている弟の友達とどう接すればいいのかも、全くわからなかった。

「こ、こんな感じでいいのかな…」と、周囲に合わせようとする真奈。

しかし、講義に出てみると、彼女の真面目な性格が災いして、思わず質問をしようとしてしまう。

「教授、その理論についてもっと詳しく説明してもらえませんか?」と、手を挙げた瞬間、周囲がざわつく。

「悠人が真面目に質問してるぞ!?珍しいな…」

友人たちが驚き、クスクスと笑い出す中で、真奈は顔を真っ赤にして慌てて引き下がった。

「弟、普段どんだけ適当に生きてるのよ…恥ずかしい!」

だが、彼女は次第に大学生の自由な雰囲気に慣れていき、講義後には悠人の友達たちと昼食をとりながら、のんびり話す時間を楽しむことができた。

「こういうのも悪くないかも…」

#### 悠人(真奈として会社に出社)

一方、悠人は姉の体でオフィスに出社し、混乱していた。

「スーツ、窮屈だし、ヒールで歩くの難しい…!」

朝の通勤電車からして、すでに彼には地獄だった。スーツ姿の女性として満員電車に押し込まれ、会社に着いたころにはすでにぐったりしていた。

「姉ちゃん、毎日こんなことしてんのか…」

そして、会議に出るとさらに驚きが待っていた。資料を準備し、プレゼンをしなければならない状況で、悠人は冷や汗が止まらない。

「えっと…こちらが、プロジェクトの…概要で…」

周りの同僚たちが真剣な顔で彼の発表を見守る中、悠人は必死に姉の記憶を探りながらプレゼンを進めたが、途中で言葉に詰まってしまう。

「…なんとか、これで…お願いします!」

プレゼンが終わると、同僚たちは微妙な表情で拍手を送った。

「真奈さん、いつもならもっとキレがあるのに、どうしたんだろう?」とささやき合う声が聞こえ、悠人は心の中で叫んだ。

「無理だよ!こんな緊張感、俺には耐えられないって!」

しかし、昼休みには同僚たちとランチに行き、仕事の合間に雑談を交わす場面で少しずつ和んでいく。姉の友達は皆優しく、悠人は「姉ちゃん、意外と楽しくやってるんだな…」と、彼女の大人の生活を垣間見ることができた。

---

### 2人の成長

数日が経ち、真奈は悠人の大学生活にすっかり馴染み、講義中に友人たちと冗談を言い合うようになっていた。悠人も、姉の同僚たちと協力しながら、少しずつ仕事に慣れていった。

しかし、2人はお互いの生活がどれだけ大変か、そして自分たちがどれだけそれぞれ違う道を歩んでいるのかを深く理解し始めた。

ある日、仕事から帰った悠人は真奈に言った。

「姉ちゃん、俺、今まで姉ちゃんがどんだけ頑張ってるか、全然わかってなかったよ。毎日大変だよな…俺には無理だわ。」

真奈も頷いて答えた。

「私も、悠人がどれだけ楽しそうに見えても、実際は勉強や友人関係に気を遣ってることを知ったよ。簡単そうに見えるけど、それなりに努力してるんだね。」

---

### エピローグ

結局、どうにかして2人は元の体に戻ることができた。元に戻ったとき、2人は以前よりもお互いのことを深く理解し合い、尊敬するようになった。

「次は絶対に入れ替わりたくないけど、いい経験だったかもね。」  
そう言い合って、2人は微笑んだ。

そして、それぞれ自分の生活に戻ったが、今では少しだけ成長し、違った視点で自分の毎日を楽しむようになった。

---

### 終わり

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