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入れ替わりのビーチ
しおりを挟む夏の夕暮れ、潮の香りが漂う海岸で、海水浴を楽しんでいたカナとタクヤは、笑顔に包まれていた。空はまだ明るいが、遠くの雲行きが怪しくなり始めている。カナは空を見上げて眉をひそめた。
「タクヤ、ちょっと雲が…」
「大丈夫だよ、もう少しだけ泳いだら帰ろう」
タクヤは無邪気に笑い、海の方に向かおうとする。カナは少し心配そうに彼の背中を見つめたが、結局は彼についていくことにした。波打ち際でふたりは手を取り合い、砂の上に足を滑らせる。海の水は少し冷たく、彼らの肌を引き締める。
突然、空が光り、轟音が大地を震わせた。稲妻が水平線を裂き、そのまま彼らのすぐ近くに落ちた。カナは驚いてタクヤにしがみついたが、次の瞬間、彼女の視界は白くなり、意識が遠のいていく。
---
目が覚めた時、カナは砂の上に倒れていた。頭が割れるように痛むが、どうにか立ち上がり、周囲を見渡す。タクヤもすぐ近くでうつ伏せになっているのが見えた。
「タクヤ、大丈夫?」
しかし、彼の返事はなく、カナは不安を感じながら彼の肩に手を置いた。その瞬間、自分の手が違和感を持っていることに気付く。手が大きく、指が太い…まるで男性の手だ。驚いて自分の体を見下ろすと、目に入ってきたのはタクヤの体。
「な、なんで…?」
カナは混乱し、タクヤの体を揺さぶる。彼もゆっくりと目を開け、顔を上げた。だが、その顔にはカナの表情が映っている。
「カナ…?俺、どうしたんだ…」
タクヤの声も、カナの声そのものだった。ふたりは恐怖に凍りつき、しばらくその場で動けなかった。彼らはお互いの顔を見つめ、沈黙が続いた。
「これって、夢だよね…?」
カナが震える声で言った。
「いや、夢じゃない…俺たち、入れ替わってる…」タクヤは震えた声で答える。
ふたりは何が起こったのか理解できず、ただ途方に暮れていた。落雷のショックで何かがおかしくなり、ふたりの魂が入れ替わってしまったのだ。ふたりは海岸に座り込み、どうすれば元に戻れるのかを考えたが、答えは見つからない。
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その夜、ふたりはそのまま近くの宿に泊まることにした。だが、問題はすぐに表面化する。お互いの体で過ごすことは、想像以上に困難だった。タクヤの体で歩くカナは、筋肉の動きに慣れず、重さにも戸惑う。反対に、タクヤはカナの細く柔らかい体に驚き、どう動いていいかわからない。
さらに、心の中にお互いのプライバシーが介入してくることも、ふたりにとって大きな試練だった。タクヤはカナの感情の揺れに気づき始め、彼女が普段どれだけ自分を守っていたのかを理解するようになる。一方でカナも、タクヤの強がりや表に出さない不安を感じ取り、彼の内面を初めて知る。
「こんなこと、全然知らなかった…」
カナは、タクヤの気持ちを深く理解する中で呟いた。
「俺だって、カナがこんなに繊細で強いなんて、今まで気づけなかったよ」
ふたりは次第に、ただ体が入れ替わっただけでなく、心もまた深く繋がっていくのを感じ始めていた。
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何日か過ぎたが、元に戻る方法は依然として見つからなかった。しかし、ふたりは次第にそれを受け入れ始めていた。最初は戸惑い、混乱していたが、今ではお互いの体で過ごすことに少しずつ慣れてきた。そして、心の奥にあった不安や誤解が解消されていくのを感じていた。
ある日、ふたりは再び海に行くことにした。同じ場所で、再び何かが起こるのではないかと、どこかで期待していたのだ。だが、海は穏やかで、雷が落ちる気配はまったくなかった。
「もう戻れないのかもね…」
カナがそう呟くと、タクヤは静かに頷いた。
「でも、それも悪くないかもしれない。お互いをこんなに理解できたのは、このおかげだし」
カナは微笑んでタクヤを見つめた。「そうだね。今のままでも、私たち、ちゃんとやっていける気がする」
ふたりは再び手を取り合い、穏やかな波の音を聞きながら歩き出した。
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