ビキニに恋した男

治験施設へ

博史は治験に参加する決意を固めた後、少し早起きして東京郊外の静かな街にある研究施設に向かった。駅から歩いて15分ほどの場所にある施設は、外観こそ普通のオフィスビルのようだが、中に入ると近未来的な雰囲気が漂っていた。白い壁、ガラス張りのオフィス、そして静かな空気。スタッフたちは清潔な白衣を着ており、受付の女性が微笑んで迎えてくれた。

「ようこそ、木村様。本日は治験の詳細をご説明させていただきます。どうぞこちらへ。」

案内された部屋は、落ち着いた色調の個室だった。研究者の一人である中年男性が現れ、博史に向かって丁寧に頭を下げた。

「木村さんですね。私はこのプロジェクトを担当している吉川と申します。本日は治験の選択肢についてご説明させていただきます。」

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### **治験の選択肢**

吉川は手元のタブレットを操作しながら、2つの選択肢について説明を始めた。

「今回の治験は、体形やホルモンバランスを変化させるための新しい技術を試すものです。従来の方法であるホルモン療法と、今回新たに開発された遺伝子を組み替えるナノロボット注射の2つの選択肢をご用意しています。それぞれに特徴とリスクがありますので、しっかりとご理解いただいた上で選んでいただければと思います。」

ホルモン療法の説明は、博史にも聞き覚えがあるものだった。女性ホルモンを投与することで徐々に体形や肌質が変化し、時間をかけて望む体に近づける方法だ。

「ただし、ホルモン療法は効果が現れるまでに時間がかかります。1年以上の治療期間が必要で、個人差もあります。また、副作用として情緒が不安定になることも報告されています。」

一方、ナノロボット注射は博史にとって未知の領域だった。

「こちらが今回の目玉であるナノロボット注射です。最新の技術で、体内に注射したナノロボットが特定の遺伝子を組み替え、細胞レベルで変化を促進します。効果は非常に速く、数週間で目に見える変化が期待できます。ただし、これは新しい技術であるため、長期的な影響については未知の部分もあります。」

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### **選択の時間**

博史は椅子に座りながら、説明を真剣に聞いていた。ホルモン療法は安全性が高いが、時間がかかる。ナノロボット注射は速いが未知数。選択の難しさに、博史は眉間にしわを寄せた。

「木村さん、どうぞご質問があれば遠慮なくお聞きください。」吉川は優しく微笑みかけた。

「ナノロボット注射……実際にはどのくらいの期間で変化が現れるんですか？」

「個人差はありますが、早ければ2週間ほどで効果を実感できるでしょう。特に脂肪分布の変化や肌の質感は、最初に現れる変化のひとつです。」

博史はタブレットに映し出されたシュミレーション画像を見つめた。細身で中性的な体つきが、次第に理想の体形に近づいていく。自分がずっと追い求めてきたビジョンが目の前に広がっている気がした。

「……じゃあ、そのナノロボットのリスクってどれくらいなんですか？」

「確かに未知の部分はありますが、これまでの臨床試験では深刻な副作用は確認されていません。ただ、長期的な影響に関しては完全には解明されていない点をご理解いただければと思います。」

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### **決断**

博史はしばらく考え込んだ。彼の中で、不安と期待がせめぎ合う。

「時間がかかっても安全な方法を選ぶべきか、それとも……」

だが、心の中で問いかける声が聞こえた。

**「ずっと悩んできたんだろう？これがその悩みから解放されるチャンスなんじゃないのか？」**

博史は顔を上げ、決意を込めた表情で答えた。

「僕は……ナノロボット注射を選びます。」

吉川はその言葉を聞いて頷き、書類を用意した。

「承知しました。それでは同意書にサインをお願いします。治験は明日から開始です。最初の注射を行い、その後1週間の観察期間に入ります。」

博史はペンを握り、書類にサインをした。新たな自分への第一歩を踏み出す瞬間だった。  

「これで、少しは自信が持てる自分になれるかもしれない……」  

そう心に誓いながら、博史は新たな未来を想像して微笑んだ。