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謎のメール
しおりを挟む博史がリビングのソファに腰を下ろし、いつものようにスマホをいじっていた日曜日の昼下がり。窓の外は薄曇りで、鳥の鳴き声が時折聞こえる。いつも通りの平凡な日だと思っていた。
メールの通知音がスマホから響き、博史はそれを開いた。送り主は見覚えのない名前だった。件名は簡潔に「ご案内:治験ボランティアの募集」。
「なんだこれ……?」
訝しみながらメールを開くと、内容はさらに奇妙だった。
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### **謎のメール**
> **件名**:あなたの願いを叶えられるかもしれません
> **本文**:
> 拝啓
>
> 突然のご連絡をお許しください。私たちは最先端の研究を行う医療機関です。この度、特定の身体的願望を実現する可能性を探る治験を開始しました。
>
> ご興味があれば、ぜひボランティアとしてご参加ください。具体的な内容や詳細については、下記のリンクをご覧ください。
>
> [詳細を確認する]
>
> あなたの願いを叶える一歩となることを願っています。
>
> 敬具
博史はメールを読み終わると、しばらく画面を凝視していた。
「願いを叶える?……なんだこれ、怪しすぎるだろ。」
リンクには手を触れず、メールを閉じようとしたが、その瞬間、自分の中に湧き上がる微妙な感情を無視できなかった。
「もし本当だったら……?」
ここ数週間、恋人の彩に話したばかりの悩みが胸に蘇る。自分がビキニを着て似合う体になりたいという、長年抱えてきた願望。それを叶える手段があるかもしれないという一縷の望みが、好奇心を刺激していた。
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### **悩む博史**
メールを閉じた後も、博史はずっとその内容が頭から離れなかった。
「どうせスパムか、変な広告なんだろうけど……。」
しかし、体が勝手に動くように再びメールを開いてしまう。リンクの存在が、心の奥でくすぶる彼の願いを揺さぶっていた。
「……いや、でもこれ、詐欺だったらどうするんだよ。」
頭では警戒しているが、心のどこかで「もし本物なら」という考えが湧き上がる。彼は何度もスマホの画面を見つめたり閉じたりを繰り返した。
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### **彩の一言**
その時、台所で食器を片付けていた彩がリビングに顔を出した。
「博史、さっきから何見てるの?すごい真剣な顔してるけど。」
「えっ?あ、いや、なんでもないよ。」
彩の問いに慌ててスマホを隠す博史。しかし、そんな様子を見逃す彩ではなかった。
「怪しい~、隠し事してるでしょ。見せてみなさい。」
彩は彼のスマホを覗き込もうと身を乗り出してくる。
「ちょっ、これは本当にただのメールだから!」
「メール?何の?」
彩に迫られ、博史は観念してメールの内容を見せることにした。
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### **二人で考える**
彩はメールを読み、しばらく考え込むように腕を組んだ。
「怪しいけど……でも、面白そうじゃない?」
「面白いって……こんなの普通は詐欺とか変な勧誘だと思うだろ。」
博史は冷静に否定しようとしたが、彩の目は輝いていた。
「でもさ、試しに調べてみるくらいならいいんじゃない?もし本物だったら、博史の願いが叶うかもしれないんでしょ。」
彩の言葉に押されるように、博史は意を決してリンクをクリックすることを決めた。
「……分かったよ。とりあえず調べるだけな。」
画面をタップすると、意外にも清潔感のある研究機関のホームページが表示された。その瞬間、博史の中に小さな希望が芽生えた。
「これ、本当に……何かあるかも。」
二人の新たな冒険の幕開けは、こうして始まったのだった。
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