未来への転送

廣瀬純一

文字の大きさ
上 下
1 / 6

転送装置

しおりを挟む
10年後の未来へと旅立つことを決めたリョウと沙織。物質転送装置を使えば一瞬で未来の自分たちと出会うことができる。ふたりは長い付き合いの末に結婚を考えるようになり、未来の世界でどんな生活が待っているのかを確かめようと決意したのだ。

「本当に行くんだね、沙織」と、リョウは緊張した表情で言った。装置の起動音が耳に響き、青い光がゆっくりと二人を包んでいく。沙織は微笑みながら彼の手をぎゅっと握り、「もちろんよ。あなたと未来を一緒に見たいもの」と答える。

やがて、転送装置が強烈な光を放ち、二人は光に飲み込まれるようにして未来へと送り出された。

---

目が覚めたとき、リョウは自分の体がいつもと違う感覚に包まれていることに気づいた。重心が変わり、腕の位置も妙にしっくりこない。彼は慌てて鏡を探し、見つけると恐る恐る自分の顔を覗き込んだ。そこに映っていたのは、自分ではなく、なんと沙織の顔だったのだ。

「うそだろ…」リョウは息を呑み、手で顔を触るが、柔らかい頬や、普段とは違う長い髪の感触が手に伝わってくる。頭が混乱し、これは夢かと疑うしかなかった。

同じころ、沙織も目を覚まし、自分の体が妙にがっしりとしていることに気づく。周囲を見回し、自分の視界がいつもよりも高いことに違和感を覚えながら、手を挙げるとそれはリョウの手だった。まさかと思いながら、彼女もまた鏡を探し、そこに映った自分の姿を見て震えた。

---

「リョウ!あなたなの?本当に?」沙織が、見慣れた自分の姿をしたリョウに尋ねる。リョウも混乱したまま、「沙織、俺も信じられないが…これはどうやら、本当のようだ…」と答える。

彼らは状況を把握しようと必死だった。装置の制御パネルにアクセスしようと試みるが、未来のシステムはまるで別物で、今の彼らには理解できない暗号で保護されていた。

どうやら転送装置の不具合によって、二人は意図せず体が入れ替わってしまったらしい。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

性転換タイムマシーン

廣瀬純一
SF
バグで性転換してしまうタイムマシーンの話

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

夫の妊娠

廣瀬純一
大衆娯楽
妊娠した妻と体が入れ替わった夫が妊娠して出産をする話

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

13歳女子は男友達のためヌードモデルになる

矢木羽研
青春
写真が趣味の男の子への「プレゼント」として、自らを被写体にする女の子の決意。「脱ぐ」までの過程の描写に力を入れました。裸体描写を含むのでR15にしましたが、性的な接触はありません。

令嬢の名門女学校で、パンツを初めて履くことになりました

フルーツパフェ
大衆娯楽
 とある事件を受けて、財閥のご令嬢が数多く通う女学校で校則が改訂された。  曰く、全校生徒はパンツを履くこと。  生徒の安全を確保するための善意で制定されたこの校則だが、学校側の意図に反して事態は思わぬ方向に?  史実上の事件を元に描かれた近代歴史小説。

就職面接の感ドコロ!?

フルーツパフェ
大衆娯楽
今や十年前とは真逆の、売り手市場の就職活動。 学生達は賃金と休暇を貪欲に追い求め、いつ送られてくるかわからない採用辞退メールに怯えながら、それでも優秀な人材を発掘しようとしていた。 その業務ストレスのせいだろうか。 ある面接官は、女子学生達のリクルートスーツに興奮する性癖を備え、仕事のストレスから面接の現場を愉しむことに決めたのだった。

処理中です...