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二枚目のメモ
しおりを挟む翌朝、大輔と奈々はそれぞれの体で目覚めると、まず前日のメモの話題で盛り上がった。
「『答えはお互いの心の中にある』ってどういう意味だろう。」
大輔が奈々の体で髪を整えながら問いかけると、奈々は苦笑しながら答えた。
「直接的にはわからないけど…もしかして、私たちが相手の体で何か学ぶべきことがあるって意味じゃない?」
「学ぶべきこと…か。」
大輔は奈々の言葉に納得しつつも、何か腑に落ちない感覚が残っていた。
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### **仕事の中で見えてくるもの**
その日、大輔は奈々の体で、午前中に取引先と会う重要な打ち合わせを任された。相手は強引な交渉をすることで有名な企業の担当者だった。
「三浦さん、我々としては、この条件を譲れないんです。」
担当者は硬い表情で言い放つ。大輔は心の中で冷や汗をかきながらも、奈々の柔らかな物腰を意識して話を切り出した。
「確かに貴社の条件は重要ですが、双方にとってより良い結果を目指したいと思います。」
奈々の記憶を頼りに、冷静な言葉を選びつつ相手を説得する。次第に担当者の態度が和らぎ、最後には双方に納得のいく合意に至った。
「三浦さん、さすがだね。」
上司の田村が後ろから声をかけてきたが、大輔は内心、奈々への尊敬を新たにしていた。
「これが奈々さんの仕事のスタイルか…俺も見習わないとな。」
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一方、奈々も大輔の体で新しい発見をしていた。職場での大輔は、意外にも周囲から頼られる存在だった。
「佐藤さん、これ手伝ってもらえる?」
「助かるよ、いつもありがとう!」
そんな言葉が次々に飛んできて、奈々は少し驚いた。
「大輔さんって、自然と周りに気を配ってるんだ…私が知らない一面がたくさんある。」
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### **夜の再会**
仕事を終えて家に戻ると、2人はいつものように反省会を始めた。お互いにその日あった出来事を報告し合い、入れ替わり生活の中で気づいたことを共有する。
「大輔さん、あなたってすごく周りから信頼されてるのね。」
奈々が感心したように言うと、大輔は照れくさそうに頭をかいた。
「奈々さんこそ、交渉とか調整のセンスがすごいよ。俺にはあんなに柔らかく話せない。」
少し照れ臭い空気が流れた後、大輔はふと思い出して言った。
「そういえば、今日またあのメモを受け取ったんだ。」
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### **2枚目のメモ**
今回のメモには、こう書かれていた。
> 「鍵は相手の心を理解すること。」
「これってやっぱり、今の私たちの状況に関係あるんじゃない?」
奈々が興奮気味に言うと、大輔も頷いた。
「お互いに学ぶべきことがある。…もしかして、入れ替わりが終わるのは、それを達成したときなのか?」
次の日から、2人はさらに相手の生活や考え方を深く理解しようと努力を始めた。日々の体験を通じて、仕事や人間関係だけでなく、自分自身についても新たな気づきを得ていく。
だが、そんな矢先、2人の前に現実を揺るがす出来事が訪れる――。
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