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運命のキス
しおりを挟む運命の出会い
夏の終わり、空にはまだ夏の名残を感じさせる青空が広がっていた。大学のキャンパスは秋学期の開始に向けて徐々に活気を取り戻しつつある。そんな中、翔太は友人に誘われて参加したサークルの新歓パーティーで、彼女に出会った。
彼女の名前は奈緒。明るくて快活、誰にでも気軽に話しかけるタイプだったが、その笑顔の裏にはどこかミステリアスな雰囲気が漂っていた。翔太は彼女に一目で惹かれ、自然と話しかけていた。
「よ、よかったら飲み物、一緒に選ばないか?」
「うん、いいよ!」
話しているうちに、お互いに共通の趣味があることが分かり、二人の距離は急速に縮まっていった。パーティーの終盤、自然な流れで二人はキャンパスを一緒に歩きながら話し込んでいた。
不思議なキス
夜風が涼しく感じられる頃、二人は人気の少ない大学の中庭にたどり着いた。ベンチに座り、奈緒がふいにこんなことを言った。
「翔太君、これ、信じられないかもしれないけど、私ね、ある“特別な力”を持ってるんだ。」
翔太は冗談だと思い笑ったが、奈緒は真剣な表情だった。
「どういうこと?」
「実は、私…キスをすると、その相手と“入れ替わる”ことができるの。」
翔太はますます彼女の言葉を信じられなかった。しかし、奈緒は少し躊躇しながらも、彼に近づいた。
「本当に信じてほしい。でも、もし試してみたいなら、ここで私とキスしてみて。」
冗談のような提案に、翔太の心臓はドキドキしていたが、なぜかその瞬間、奈緒の瞳に引き込まれるような感覚を覚えた。そして、気がつくと、彼は彼女にそっと唇を重ねていた。
その瞬間、世界がぐるりと回転するような感覚が翔太を襲った。目を開けると、自分の視界が全く違って見えることに気付いた。手を見れば、そこには細い指とスリムな腕があった。そして自分の声で驚いた言葉が発せられた。
「これ…奈緒の声!?」
翔太は奈緒の身体の中に入っていた。対面に座るのは自分自身の姿――奈緒が翔太の身体に入っている。
「ほら、言ったでしょ?これは、私が持っている“力”なんだ。」
入れ替わった世界
翔太と奈緒は、その夜、しばらくの間入れ替わったままだった。お互いの身体を感じながら、慣れない動作や感覚に戸惑いながらも、面白がる部分もあった。奈緒は翔太の姿で歩きながら、「男って、こんなに力があるんだ」と感心し、翔太は奈緒の高いヒールに戸惑いながら、「これ、歩きにくすぎるだろ」と叫んだ。
だが、時間が経つにつれて、翔太はふと不安になった。
「これ、どうやって戻るんだ?」
「心配しないで、もう一度キスすれば元に戻るの。でも…あんまり何度も使うものじゃないんだ。」
奈緒の言葉にはどこか意味深な響きがあったが、翔太は深く考えずに「じゃあ、元に戻ろう」と言って再びキスをした。瞬く間に、翔太は自分の身体に戻り、元通りの感覚を取り戻した。
「すごい…本当に入れ替わるなんて。」
翔太は驚きと興奮で言葉を失っていたが、奈緒は少し複雑な表情を浮かべていた。
秘密の代償
その後、奈緒の「力」を知った翔太は、何度か奈緒と一緒にその体験を楽しむようになった。お互いの身体を借りて、普段ではできないことを試したり、入れ替わることで気づかなかった新しい視点を学んだりした。
しかし、ある日、奈緒はこう告げた。
「翔太、これ以上この力を使うのはやめよう。」
「どうして?面白いし、お互いのことももっと理解できるじゃないか。」
奈緒は少し俯き、声を潜めて言った。
「この力には“代償”があるの。何度も使うと…だんだん元に戻れなくなるの。」
その言葉を聞いた翔太は息を呑んだ。そんな重大なリスクがあったのかと気づかされ、これ以上軽々しくその力を使うことはできないと感じた。
最後のキス
それから数日が経ち、二人はできるだけ普通の生活を送ろうとしたが、翔太の心の中には奈緒との入れ替わりで感じたものが忘れられなかった。彼女の生活、彼女の思考、彼女が抱える悩みや喜び――それらは翔太にとって、彼女をさらに深く知るきっかけとなった。
そして、ある夕暮れ、奈緒は翔太に言った。
「私、もうすぐ留学するんだ。」
「え…そんな話、聞いてないよ!」
「ごめん、言いそびれてた。でも、私、ずっとこの瞬間を大切にしたかったから、黙ってたの。」
翔太は胸が締め付けられるような感覚に襲われた。彼女が遠くに行ってしまう。そう思うと、どうしても彼女と最後にもう一度、深く繋がりたくなった。
「最後にもう一度…キスしよう。」
奈緒は少しだけ迷ったが、ゆっくりと頷いた。二人は静かに向き合い、もう一度、唇を重ねた。
その瞬間、彼らの身体は再び入れ替わり、今度はしばらく戻れないという不安が頭をよぎった。しかし、その感覚の中で、翔太は奈緒がどれほど自分を大切に思ってくれていたか、彼女が抱えていた想いの重さを痛感した。
繋がり続ける想い
奈緒が留学に旅立つその日、翔太は彼女に手を振りながら、「もう一度キスすれば戻れる」と心の中で自分に言い聞かせた。しかし、それでも彼女の気持ちを知れたことに感謝し、遠く離れていても繋がり続ける想いを信じて、翔太は静かに見送った。
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