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第一話

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殿下は無能な私が好きでした。

 無能な私が危なっかしそうで可愛い、好きだと面と向かって言われたこともあります。
最初は私も殿下に好かれるために無能を装っていました。

 でも、もう馬鹿らしくなりました。
魔法だって、使えないふりをしないといけないですし、
そのせいで同じ貴族のお嬢様方に馬鹿にされるのもうんざりです。

 だから決めたんです。
私、有能になってお嬢様方を見返してやろうと。
無能な私しか好きじゃない殿下も、もう入りません。
有能になって婚約破棄してやります!

 もともと礼儀作法などは教養として身についていますし、
まずは魔法の上達からでしょうか?
私の魔法属性は氷なので質より量で押し切るほうがよいと昔、魔法学校の先生に言われたことがあります。

 しかし、最近は滅多に魔法を使っていなかったので上達するにはかなりの時間が必要になるでしょう。

 ここはいっちょ、楽して有能になってしまいましょうか。

 この世界には魔鉱石というものがあります
魔鉱石は全ての元素、火・水・氷・草・雷・光・闇、分存在しており、各々の魔法属性に合った魔鉱石を身につけることで魔法の質や量が爆発的にあがるのです。

 有能になると言っているのに、最初から魔鉱石に頼るのは狡いような気もしますが質の良い魔鉱石を手に入れるには運が良くなければ、例え貴族でも難しいです。

 運も実力のうちと言いますし、許容範囲です!

 こうして私は、魔鉱石専門の宝石店にて下から5番目の…
言い換えると1番質の良い魔鉱石を手に入れられました!

 試しに魔法石をつけて魔法を使ってみると、自分サイズの氷しか作れなかったのが、なんと私の部屋ぐらい作れるようになりました! 詳しくすると20メートルくらいです♡

 魔鉱石の力……恐るべし。

 あと必要なのはコミュニケーション力とダンスでしょうか?
コミュニケーション力は自分でもあるほうだと思いますし、
やるとしたらダンスでしょうか……

 実は私、ダンスが苦手でパーティーにでても踊らないことがほとんどです。

 さて、この難題をどうやって解決しましょうか…
考え込んでいた時、部屋のドアをノックする音が聞こえました
「ソフィア様、御食事の用意ができました」
どうやら侍女の1人のサラが来たようです。

「はい、わかりましたよサラ。申し訳ないのですが、今日は部屋で食べてもいいですか?」
サラは心配そうに「わかりました」と言うとご飯の支度をしに行ってしまいました。


 それからいろいろ考えましたが、ダンスはやっぱり地道に練習するしかないようですね。
あとでサラに内密でダンスの先生を呼んでもらうよう行っておきましょう。

 こうして、地獄の2週間が始まりました。
毎日寝ても起きてもダンスの練習。
私からやりたいと言ったのですが、先生も厳しく、とても大変でした。

 特に間違えて先生の足を踏んでしまった時、先生の顔が鬼のようになるのです!
踏まないようにヒヤヒヤしながら必死に練習しました。

 そしてついに…ついに!先生からのお墨付きをもらい地獄のダンス練習は幕を閉じました。

 こうして、有能になるために切磋琢磨と行動していると
リニーシェ公爵からパーティーの招待状が届きました。
これは私が有能になったことをアピールするチャンスです!
すぐに参加する旨を伝え、新しいドレスも新調しました。
どうやら殿下も参加するそうなので気が抜けません。

 ついにパーティーの日になりました。
ドキドキしながら殿下にエスコートしてもらい会場に入ります

 まず最初にダンスの時間がやってきました。
「ソフィア、私と一曲踊っていただけますか?」
いつもは断っていたダンスのお誘い、今日は堂々と受けられます!

「よろこんで」
殿下から差し出された手を取り、ホールに移動します。
殿下は怪訝そうな顔をしていましたがすぐにいつもの表情に戻りました。

 ダンスが始まりました。殿下がリードしてくれているので私は細かい振り付けに専念しました。

 結果から言うと大成功!
ダンスが終わるとわっとお嬢様方に囲まれて、お褒めの言葉をいただきました!
練習した甲斐があると言うものです♡

 殿下は呆然と、あらぬ方向を見つめておりました。
今までダンスも踊れなかった無能婚約者が、急に完璧にダンスを踊って見せたんですもの。残念ですよね…

 極めつけには氷魔法も最後に少しだけ披露しました。
私を馬鹿にしていた子達は血相を変えてこちらを見つめておりました。ちょっとだけ、良い気分になってしまいました♡

 さて、これだけ有能さをアピールしたのですから今すぐにでも殿下から婚約破棄の言葉が出てきてもおかしくありません。

 予想通り、殿下は大股でこちらに近づいてきました。
ついに婚約破棄と身を固めていると、衝撃の言葉が殿下から出てきました。

「ソフィア!まさか君にダンスと魔法の才能があったとは!」

 ………へ!?

「今までの君も好きだったけれど、今の君はもっと好きだ!」

 あらあらあら???

「ずっと前から思っていたのだが……結婚しよう!」

 こうして、私と殿下は結婚することになりました。
まさか、こんなことになるとは予想していませんでした。

 でも、悪い気はしません。
殿下は無能だった私も、有能な私もどっちも愛してくれるみたいなので!

end
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