89 / 90
最後の戦い
しおりを挟む聖女ルーンが助けてくれなければヘルフレイムで焼き殺されていた。
ロミが催眠術の様な状態から解いたのだろう。助かった。
「愚か者が。予の人形としていればよかったものを。死ね! 」
教皇が再びヘルフレイムを数発放った。
オレは業火のダメージが有り、まだ立ち上がれない。
「聖なる咆哮<インディグネーション>。カノンさん、私が守ります。皆さん、攻めてください! 」
聖女ルーンが叫ぶ。聖女ルーンが皆を守ってくれる。
僕の魔法とは聖魔法の威力が段違いだ。さすがは聖女と言ったところか。
チャンスだ。脚を引きずりながらも教皇に斬りかかる。
ミトが火の矢を放ち、ロミも絶対零度<アブソリュートゼロ>を教皇に放つ。
オレも最大火力を叩き込んでやる。
矢が突き刺さり、ロミの魔法で教皇の脚が止まる。今だ。
「くらえっ! 狼神斬り!」
草薙の剣は教皇には効かない。ライカ頼む。
教皇の胸を剣で突き刺した。剣が教皇の体を貫通して、血が吹き出す。
手応えありだ。
「見事だ。だがこんなものでは予は死なぬぞ。」
教皇がオレを杖で弾き飛ばした。
教皇が叫ぶと傷が塞がる。化物め。
「どうした。怖気づいたか。無理もない。ここがお前たち人間の限界だ。」
心臓をえぐっても死なないとなると、どうすれば勝てるんだ。
ロミを見ると首を横に振る。策はないようだ。
困った。どうすれば勝てる。教皇を追い詰めているはずだ。
「カノンさん、その杖です。教皇は杖を手放したところを見たことがありません! 」
教皇が聖女ルーンを睨む。
「生贄と言わず、先に殺しておけばよかったな。」
教皇が飛び、後衛に居た聖女ルーンめがけて斬りかかる。
しまった。ロミもミトも急な攻勢に反応できない。
オレは無意識に体を投げ出してルーンの前に立ち攻撃を庇っていた。
オレの背中を杖で斬られた。
痛いどころではない。鎧は割れ吹き飛ばされる。
聖女ルーンの上に乗る形でうつ伏せで倒れた。
「カノンさん大丈夫ですか。すぐに回復魔法をかけます! 」
まずい、血が出すぎている。視界がふらつく。
ルーンは必死に回復魔法をかけてくれているが、動くことが出来ない。
教皇はオレにトドメを刺そうと杖を振り上げる。
ロミとミトも教皇に攻撃するが、意にも介さず、杖を振り下ろす。
『カノン、私を呼んで。』
「ライカ頼む! 」
意識が遠のきそうになりながらライカの名を呼ぶ。
教皇が振り下ろした腕にフェンリルに変化したライカが噛みつく。
教皇の腕と杖が飛び、教皇が後退りした。
「こんな奥の手を隠していたとはな。不覚。」
杖が手元にないからか、腕は再生していない。チャンスだ。
聖女ルーンの回復で体が動く。
止めを刺さないと殺られる。
「ライカ戻れ!」
ライカが剣に戻り手に取る。
これで終わりだ。
「くらえっ! 狼神斬り! 」
教皇が崩れ落ちる。頼む。もう立たないでくれ。
狼神剣を使いすぎた。もう体力は残っていない。
膝をついて剣で自分の体を支える。
教皇が倒れたまま、血を吐く。
オレは勝ったのか。
「愚かな。予のシナリオ通りに動いていれば幸せになれたものを。愚かな人間たちだ。」
「愚かなのはお前だ。なんでも自分の思い通りにできるとは思うな。」
「カノン、お前は今の戦争が溢れている世の中が正しいと思うのか。」
「分からない。だが、正しいと思う道を歩む事はできるさ。」
「まだ青いな。」
「そうか。理想を掲げられるのも人間のよさだろ。」
「そうかもしれぬ。だが、その理想に縛られた現状はどうだ。人間同士で争い、奴隷を作り経済を回している。そんな世の中を俺たち魔人が武力で支配するそれが一番良いのだ。」
「武力で支配しても幸せにはならないさ。」
オレは立ち上がり、教皇の前に立つ。
「終わりだ教皇。最後に何か言うことはあるか。」
「忘れるな。まだ脅威は去っていない。魔王の復活は必ず成される。必ずだ。」
「そうか。そうなればまた止めるまでだ。」
教皇の首を撥ねた。
終わりだ。なんとか倒せた。オレだけの力では到底教皇には届かなかった。
ロミやミト、ライカに聖女ルーンの力がなければ散っていただろう。
「ウォォォォォォォォォォォ! 」
オレは喜びを爆発させて、咆哮を上げた。
ライカが人間に戻り、抱きついてきた。
「やったね、カノン。」
「ああ。ライカのおかげだ。何度も心が折れそうになった。助かった。」
ライカの頭をポンポンして、頭を撫でる。
「えへへ。少しはカノンたちの力になれたかな。」
「もちろんだ。ライカがいなかったら死んでいたよ。」
「そうかな。よかった。」ライカがニコッと笑った。
ロミとミトが近づいてくる。グータッチをして、お互いを労う。
「やったな。」
「やったね。僕もさすがに死を覚悟したよ。教皇の強さは桁違いだったさ。」
「私は疲れたわ。さっさと城に戻って報告しましょ。」
「あの、皆さんありがとうございました。」
聖女ルーンが深々と頭を下げる。
「皆さんがいなければ魔王復活を止められなかったでしょう。本当にありがとうございました。」
ロミがルーンの肩をぽんと叩く。
「何も言わなくていいさ。ルーンもよく頑張ったね。」
ルーンがポロポロと涙を流す。
「………はい。」
ルーンは父の暴走によって迷惑をかけられた身ではあるが、世間はそうは思わないだろう。
これから大変なのは目に見えている。
それでも彼女は教皇を止めるために、勇気を持って戦ってくれた。
「ロミ、この杖はどうする。」
「一旦、城に持っていこう。どこかに封印しないとまた同じ過ちが繰り返される。」
オレは教皇が使っていた杖を拾う。
持つだけで意識が持っていかれそうになる。
これはどこかに封印しないといけないな。
「城が心配だ。教会の奴らも気になる。急いで戻ろう。」
外からは音がしないのが気になる。戦闘が終わったということだろうか。
それでも地下だから聞こえていない可能性もある。
オレたちは走って教会を出た。
0
お気に入りに追加
983
あなたにおすすめの小説
「専門職に劣るからいらない」とパーティから追放された万能勇者、教育係として新人と組んだらヤベェ奴らだった。俺を追放した連中は自滅してるもよう
138ネコ@書籍化&コミカライズしました
ファンタジー
「近接は戦士に劣って、魔法は魔法使いに劣って、回復は回復術師に劣る勇者とか、居ても邪魔なだけだ」
パーティを組んでBランク冒険者になったアンリ。
彼は世界でも稀有なる才能である、全てのスキルを使う事が出来るユニークスキル「オールラウンダー」の持ち主である。
彼は「オールラウンダー」を持つ者だけがなれる、全てのスキルに適性を持つ「勇者」職についていた。
あらゆるスキルを使いこなしていた彼だが、専門職に劣っているという理由でパーティを追放されてしまう。
元パーティメンバーから装備を奪われ、「アイツはパーティの金を盗んだ」と悪評を流された事により、誰も彼を受け入れてくれなかった。
孤児であるアンリは帰る場所などなく、途方にくれているとギルド職員から新人の教官になる提案をされる。
「誰も組んでくれないなら、新人を育て上げてパーティを組んだ方が良いかもな」
アンリには夢があった。かつて災害で家族を失い、自らも死ぬ寸前の所を助けてくれた冒険者に礼を言うという夢。
しかし助けてくれた冒険者が居る場所は、Sランク冒険者しか踏み入ることが許されない危険な土地。夢を叶えるためにはSランクになる必要があった。
誰もパーティを組んでくれないのなら、多少遠回りになるが、育て上げた新人とパーティを組みSランクを目指そう。
そう思い提案を受け、新人とパーティを組み心機一転を図るアンリ。だが彼の元に来た新人は。
モンスターに追いかけ回されて泣き出すタンク。
拳に攻撃魔法を乗せて戦う殴りマジシャン。
ケガに対して、気合いで治せと無茶振りをする体育会系ヒーラー。
どいつもこいつも一癖も二癖もある問題児に頭を抱えるアンリだが、彼は持ち前の万能っぷりで次々と問題を解決し、仲間たちとSランクを目指してランクを上げていった。
彼が新人教育に頭を抱える一方で、彼を追放したパーティは段々とパーティ崩壊の道を辿ることになる。彼らは気付いていなかった、アンリが近接、遠距離、補助、“それ以外”の全てを1人でこなしてくれていた事に。
※ 人間、エルフ、獣人等の複数ヒロインのハーレム物です。
※ 小説家になろうさんでも投稿しております。面白いと感じたらそちらもブクマや評価をしていただけると励みになります。
※ イラストはどろねみ先生に描いて頂きました。
アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~
明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!!
『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。
無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。
破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。
「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」
【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?
無限初回ログインボーナスを貰い続けて三年 ~辺境伯となり辺境領地生活~
桜井正宗
ファンタジー
元恋人に騙され、捨てられたケイオス帝国出身の少年・アビスは絶望していた。資産を奪われ、何もかも失ったからだ。
仕方なく、冒険者を志すが道半ばで死にかける。そこで大聖女のローザと出会う。幼少の頃、彼女から『無限初回ログインボーナス』を授かっていた事実が発覚。アビスは、三年間もの間に多くのログインボーナスを受け取っていた。今まで気づかず生活を送っていたのだ。
気づけばSSS級の武具アイテムであふれかえっていた。最強となったアビスは、アイテムの受け取りを拒絶――!?
せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。
シスターヴレイヴ!~上司に捨て駒にされ会社をクビになり無職ニートになった俺が妹と異世界に飛ばされ妹が勇者になったけど何とか生きてます~
尾山塩之進
ファンタジー
鳴鐘 慧河(なるがね けいが)25歳は上司に捨て駒にされ会社をクビになってしまい世の中に絶望し無職ニートの引き籠りになっていたが、二人の妹、優羽花(ゆうか)と静里菜(せりな)に元気づけられて再起を誓った。
だがその瞬間、妹たち共々『魔力満ちる世界エゾン・レイギス』に異世界召喚されてしまう。
全ての人間を滅ぼそうとうごめく魔族の長、大魔王を倒す星剣の勇者として、セカイを護る精霊に召喚されたのは妹だった。
勇者である妹を討つべく襲い来る魔族たち。
そして慧河より先に異世界召喚されていた慧河の元上司はこの異世界の覇権を狙い暗躍していた。
エゾン・レイギスの人間も一枚岩ではなく、様々な思惑で持って動いている。
これは戦乱渦巻く異世界で、妹たちを護ると一念発起した、勇者ではない只の一人の兄の戦いの物語である。
…その果てに妹ハーレムが作られることになろうとは当人には知るよしも無かった。
妹とは血の繋がりであろうか?
妹とは魂の繋がりである。
兄とは何か?
妹を護る存在である。
かけがいの無い大切な妹たちとのセカイを護る為に戦え!鳴鐘 慧河!戦わなければ護れない!
【完結】異世界転移した私がドラゴンの魔女と呼ばれるまでの話
yuzuku
ファンタジー
ベランダから落ちて死んだ私は知らない森にいた。
知らない生物、知らない植物、知らない言語。
何もかもを失った私が唯一見つけた希望の光、それはドラゴンだった。
臆病で自信もないどこにでもいるような平凡な私は、そのドラゴンとの出会いで次第に変わっていく。
いや、変わらなければならない。
ほんの少しの勇気を持った女性と青いドラゴンが冒険する異世界ファンタジー。
彼女は後にこう呼ばれることになる。
「ドラゴンの魔女」と。
※この物語はフィクションです。
実在の人物・団体とは一切関係ありません。
S級パーティを追放された無能扱いの魔法戦士は気ままにギルド職員としてスローライフを送る
神谷ミコト
ファンタジー
【祝!4/6HOTランキング2位獲得】
元貴族の魔法剣士カイン=ポーンは、「誰よりも強くなる。」その決意から最上階と言われる100Fを目指していた。
ついにパーティ「イグニスの槍」は全人未達の90階に迫ろうとしていたが、
理不尽なパーティ追放を機に、思いがけずギルドの職員としての生活を送ることに。
今までのS級パーティとして牽引していた経験を活かし、ギルド業務。ダンジョン攻略。新人育成。そして、学園の臨時講師までそつなくこなす。
様々な経験を糧にカインはどう成長するのか。彼にとっての最強とはなんなのか。
カインが無自覚にモテながら冒険者ギルド職員としてスローライフを送るである。
ハーレム要素多め。
※隔日更新予定です。10話前後での完結予定で構成していましたが、多くの方に見られているため10話以降も製作中です。
よければ、良いね。評価、コメントお願いします。励みになりますorz
他メディアでも掲載中。他サイトにて開始一週間でジャンル別ランキング15位。HOTランキング4位達成。応援ありがとうございます。
たくさんの誤字脱字報告ありがとうございます。すべて適応させていただきます。
物語を楽しむ邪魔をしてしまい申し訳ないですorz
今後とも応援よろしくお願い致します。
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる