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最後の戦い

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 聖女ルーンが助けてくれなければヘルフレイムで焼き殺されていた。
 ロミが催眠術の様な状態から解いたのだろう。助かった。

 「愚か者が。予の人形としていればよかったものを。死ね! 」

 教皇が再びヘルフレイムを数発放った。

 オレは業火のダメージが有り、まだ立ち上がれない。

 「聖なる咆哮<インディグネーション>。カノンさん、私が守ります。皆さん、攻めてください! 」

 聖女ルーンが叫ぶ。聖女ルーンが皆を守ってくれる。
 僕の魔法とは聖魔法の威力が段違いだ。さすがは聖女と言ったところか。

 チャンスだ。脚を引きずりながらも教皇に斬りかかる。

 ミトが火の矢を放ち、ロミも絶対零度<アブソリュートゼロ>を教皇に放つ。
 オレも最大火力を叩き込んでやる。

 矢が突き刺さり、ロミの魔法で教皇の脚が止まる。今だ。

 「くらえっ! 狼神斬り!」

 草薙の剣は教皇には効かない。ライカ頼む。

 教皇の胸を剣で突き刺した。剣が教皇の体を貫通して、血が吹き出す。

 手応えありだ。
 
 「見事だ。だがこんなものでは予は死なぬぞ。」

 教皇がオレを杖で弾き飛ばした。
 教皇が叫ぶと傷が塞がる。化物め。
 
 「どうした。怖気づいたか。無理もない。ここがお前たち人間の限界だ。」

 心臓をえぐっても死なないとなると、どうすれば勝てるんだ。

 ロミを見ると首を横に振る。策はないようだ。
 困った。どうすれば勝てる。教皇を追い詰めているはずだ。

 「カノンさん、その杖です。教皇は杖を手放したところを見たことがありません! 」

 教皇が聖女ルーンを睨む。

 「生贄と言わず、先に殺しておけばよかったな。」

 教皇が飛び、後衛に居た聖女ルーンめがけて斬りかかる。

 しまった。ロミもミトも急な攻勢に反応できない。

 オレは無意識に体を投げ出してルーンの前に立ち攻撃を庇っていた。
 オレの背中を杖で斬られた。

 痛いどころではない。鎧は割れ吹き飛ばされる。
 聖女ルーンの上に乗る形でうつ伏せで倒れた。

 「カノンさん大丈夫ですか。すぐに回復魔法をかけます! 」

 まずい、血が出すぎている。視界がふらつく。
 ルーンは必死に回復魔法をかけてくれているが、動くことが出来ない。

 教皇はオレにトドメを刺そうと杖を振り上げる。
 ロミとミトも教皇に攻撃するが、意にも介さず、杖を振り下ろす。

 『カノン、私を呼んで。』

 「ライカ頼む! 」

 意識が遠のきそうになりながらライカの名を呼ぶ。

 教皇が振り下ろした腕にフェンリルに変化したライカが噛みつく。
 教皇の腕と杖が飛び、教皇が後退りした。

 「こんな奥の手を隠していたとはな。不覚。」

 杖が手元にないからか、腕は再生していない。チャンスだ。
 聖女ルーンの回復で体が動く。
 
 止めを刺さないと殺られる。

 「ライカ戻れ!」

 ライカが剣に戻り手に取る。
 これで終わりだ。

 「くらえっ! 狼神斬り! 」

 教皇が崩れ落ちる。頼む。もう立たないでくれ。

 狼神剣を使いすぎた。もう体力は残っていない。
 膝をついて剣で自分の体を支える。

 教皇が倒れたまま、血を吐く。

 オレは勝ったのか。

 「愚かな。予のシナリオ通りに動いていれば幸せになれたものを。愚かな人間たちだ。」

 「愚かなのはお前だ。なんでも自分の思い通りにできるとは思うな。」

 「カノン、お前は今の戦争が溢れている世の中が正しいと思うのか。」

 「分からない。だが、正しいと思う道を歩む事はできるさ。」

 「まだ青いな。」

 「そうか。理想を掲げられるのも人間のよさだろ。」

 「そうかもしれぬ。だが、その理想に縛られた現状はどうだ。人間同士で争い、奴隷を作り経済を回している。そんな世の中を俺たち魔人が武力で支配するそれが一番良いのだ。」

 「武力で支配しても幸せにはならないさ。」

 オレは立ち上がり、教皇の前に立つ。

 「終わりだ教皇。最後に何か言うことはあるか。」

 「忘れるな。まだ脅威は去っていない。魔王の復活は必ず成される。必ずだ。」

 「そうか。そうなればまた止めるまでだ。」

 教皇の首を撥ねた。

 終わりだ。なんとか倒せた。オレだけの力では到底教皇には届かなかった。
 ロミやミト、ライカに聖女ルーンの力がなければ散っていただろう。

 「ウォォォォォォォォォォォ! 」

 オレは喜びを爆発させて、咆哮を上げた。

 ライカが人間に戻り、抱きついてきた。

 「やったね、カノン。」

 「ああ。ライカのおかげだ。何度も心が折れそうになった。助かった。」

 ライカの頭をポンポンして、頭を撫でる。

 「えへへ。少しはカノンたちの力になれたかな。」

 「もちろんだ。ライカがいなかったら死んでいたよ。」

 「そうかな。よかった。」ライカがニコッと笑った。 

 ロミとミトが近づいてくる。グータッチをして、お互いを労う。

 「やったな。」

 「やったね。僕もさすがに死を覚悟したよ。教皇の強さは桁違いだったさ。」

 「私は疲れたわ。さっさと城に戻って報告しましょ。」

 「あの、皆さんありがとうございました。」

 聖女ルーンが深々と頭を下げる。

 「皆さんがいなければ魔王復活を止められなかったでしょう。本当にありがとうございました。」

 ロミがルーンの肩をぽんと叩く。

 「何も言わなくていいさ。ルーンもよく頑張ったね。」

 ルーンがポロポロと涙を流す。

 「………はい。」

 ルーンは父の暴走によって迷惑をかけられた身ではあるが、世間はそうは思わないだろう。
 これから大変なのは目に見えている。
 それでも彼女は教皇を止めるために、勇気を持って戦ってくれた。

 「ロミ、この杖はどうする。」

 「一旦、城に持っていこう。どこかに封印しないとまた同じ過ちが繰り返される。」
 
 オレは教皇が使っていた杖を拾う。
 持つだけで意識が持っていかれそうになる。
 これはどこかに封印しないといけないな。

 「城が心配だ。教会の奴らも気になる。急いで戻ろう。」

 外からは音がしないのが気になる。戦闘が終わったということだろうか。
 それでも地下だから聞こえていない可能性もある。

 オレたちは走って教会を出た。
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