83 / 90
ライカVSクロスナー
しおりを挟む私は戸惑っていた。いきなり知らない場所に飛ばされたからだ。カノンやミト、ロミとはバラバラの場所に飛ばされたらしい。ここは広場だろうか。教会の中なのは間違えないと思う。
「外れだな。少女を攻撃するのは気が引ける。」
目の前には大剣を持った男が立っている。
「なあ、嬢ちゃん。大人しく殺されてくれねえか。」
「嬢ちゃんじゃないよ、私はライカ。お兄ちゃんの名前は。」
「はあ。俺はクロスナーだ。」
「なんで私がクロスナーと戦わないといけないの。」
クロスナーと名乗った男はため息をつきながらもこちらに近づいてくる。
「しょうがないが殺らねえと教皇に怒られるからな。恨まないでくれよ。」
クロスナーが大剣を振り上げ、「オラッ」と声を上げて斬る。
私はカノンにもらった小刀を持っているが今まで実践で使ったことはない。
震える手で小刀を握りしめて大剣の斬撃を防ごうとするが、小刀とともに私は数メートルはふっ飛ばされた。
「おいおい、抵抗しないでくれ。しょうがないんだ。」
小刀を探すが、数メートル先に転がっている。取ろうとするが、間に合わない。
クロスナーが私の胸ぐらをつかみ、持ち上げる。
「私を殺したら、次はカノンを殺すの。」
「すまないな。俺たちはカノンたちを殺せと命令されているんだ。」
「本当にそれはクロスナーがしたいことなの。」
クロスナーが私から目を背ける。
「まあ…な。」
「なんで…私はいいけど、カノンがなにをしたっていうの。」
私は死んでもいい。カノンたちには迷惑しかかけていないからだ。いつも自分がいなければよかったと思っている。でもカノンやロミ、ミトには幸せになってほしいと常に思っている。
「そりゃ、カノンとは昔は仲間だったが、今では敵だ。敵は殺すのが当たり前だろ。」
「仲間だったのなら、殺さなくてもいいじゃない。死んだら悲しむ人がいるんだよ。」
「嬢ちゃんの言うことも分かる。だがな、俺は孤児だった。昔は帝国から、今は教会から認められないとまたあの頃の生活に戻ってしまうんだよ。戦場で存在意義を示し続ける必要があるんだ。」
クロスナーは悲しそうに笑った。
「大丈夫だ。すぐにあの世で再会できる。あばよ嬢ちゃん。」
クロスナーにも事情があるのだろう。悪い人とは思えない。
でも私は…私はカノンたちを守りたい。足を引っ張ているけど、私だって仲間なんだ。カノンを守る力がほしい。私がカノンを守る。守るから。
私を光が包む。
「なんだ。おい、何をした。」
クロスナーが大剣で斬るがジャンプして躱す。
どうやら、フェンリルに变化したみたいだ。今までフェンリルになると意思は保てなかったけど、今は意識を持って戦えている。
「クロスナーのことかわいそうだとおもうけど、カノンは私が守る。」
私はクロスナーに飛びかかる。さっきまで大きく見えていたクロスナーが小さく見える。
「くそっ。お前あの森に居たやつだな。油断させるなんて許せねえ。ぶっ殺してやる。」
クロスナーの腕を噛もうとしたが、大剣が飛んできたのでバックステップで躱す。
「それは私じゃない。でもカノンを殺そうとする人は許さない。」
クロスナーに飛びかかり、右脚、左脚で交互に攻撃する。クロスナーの鎧がどんどん削れていく。
「ふざけんな。」
クロスナーは大剣を振るがゆっくり振っている様に感じる。私が速くなっているのかな。
大剣の斬撃を躱し、左腕に噛みつく。
「クソがっ!」
クロスナーの腕を噛みちぎると、血が吹き出る。
「本気を出す。もう一切の同情はなしだ! 」
クロスナーが叫び、魔人化していく。腕も再生して生えてきた。
「こいよ嬢ちゃん。ぶっ殺してやる。」
クロスナーの攻撃速度が上がり、大剣を軽い物を扱うかのように振る。
速いけど、私のほうが疾い。
連続で攻撃を避けて、前脚で振り下ろす。
クロスナーは大剣で受けるが、ノックバックする。
一刻も早くカノンのところに戻らないと。
決めようと連続で前脚で攻撃する。
「それはもう見切ったぜ! 」
クロスナーが前脚を押しのけて腹を斬った。
痛い。痛いけど、いつもカノンは傷だらけになっても私たちを守ってくれた。
今度こそ私が守る番だ。
クロスナーから距離を取る。私には剣が使えないから頭を飛ばすしかない。でもどうやって。戦闘経験のなさが出る。どうやってクロスナーを倒せば良いんだろう。
「なにを考えている。俺からいくぜ! 決着をつけようぜ嬢ちゃん! 」
クロスナーの構えた剣が光る。どうやらエネルギーを貯めている様だ。
「くらえっ! 全てを破壊しろ! 溜め斬り! 」
クロスナーの大剣を振り下ろす速度は速い。
私は反転して尻尾を叩きつける。
「グワッ。」
カウンターが決まった。死角から飛んできた尻尾が直撃する。
尻尾が胸に直撃して、クロスナーが大剣を落とす。手応えがあった。骨は何本か折ったはず。
剣を落とした今がチャンスだ。飛びかかり顔を噛む。
「クソがっ。俺様が負けるだと! 」
首から上を引きちぎった。
広場を静寂が包む。勝った。勝ったんだ。
体の真ん中から力が湧き上がる感覚、無意識に雄叫びを上げていた。
カノンのところに戻ろう。場所はわからないけど、カノンの匂いがする方に進めば迷わずにたどり着けるはずだ。
0
お気に入りに追加
983
あなたにおすすめの小説
バイトで冒険者始めたら最強だったっていう話
紅赤
ファンタジー
ここは、地球とはまた別の世界――
田舎町の実家で働きもせずニートをしていたタロー。
暢気に暮らしていたタローであったが、ある日両親から家を追い出されてしまう。
仕方なく。本当に仕方なく、当てもなく歩を進めて辿り着いたのは冒険者の集う街<タイタン>
「冒険者って何の仕事だ?」とよくわからないまま、彼はバイトで冒険者を始めることに。
最初は田舎者だと他の冒険者にバカにされるが、気にせずテキトーに依頼を受けるタロー。
しかし、その依頼は難度Aの高ランククエストであることが判明。
ギルドマスターのドラムスは急いで救出チームを編成し、タローを助けに向かおうと――
――する前に、タローは何事もなく帰ってくるのであった。
しかもその姿は、
血まみれ。
右手には討伐したモンスターの首。
左手にはモンスターのドロップアイテム。
そしてスルメをかじりながら、背中にお爺さんを担いでいた。
「いや、情報量多すぎだろぉがあ゛ぁ!!」
ドラムスの叫びが響く中で、タローの意外な才能が発揮された瞬間だった。
タローの冒険者としての摩訶不思議な人生はこうして幕を開けたのである。
――これは、バイトで冒険者を始めたら最強だった。という話――
レベルアップに魅せられすぎた男の異世界探求記(旧題カンスト厨の異世界探検記)
荻野
ファンタジー
ハーデス 「ワシとこの遺跡ダンジョンをそなたの魔法で成仏させてくれぬかのぅ?」
俺 「確かに俺の神聖魔法はレベルが高い。神様であるアンタとこのダンジョンを成仏させるというのも出来るかもしれないな」
ハーデス 「では……」
俺 「だが断る!」
ハーデス 「むっ、今何と?」
俺 「断ると言ったんだ」
ハーデス 「なぜだ?」
俺 「……俺のレベルだ」
ハーデス 「……は?」
俺 「あともう数千回くらいアンタを倒せば俺のレベルをカンストさせられそうなんだ。だからそれまでは聞き入れることが出来ない」
ハーデス 「レベルをカンスト? お、お主……正気か? 神であるワシですらレベルは9000なんじゃぞ? それをカンスト? 神をも上回る力をそなたは既に得ておるのじゃぞ?」
俺 「そんなことは知ったことじゃない。俺の目標はレベルをカンストさせること。それだけだ」
ハーデス 「……正気……なのか?」
俺 「もちろん」
異世界に放り込まれた俺は、昔ハマったゲームのように異世界をコンプリートすることにした。
たとえ周りの者たちがなんと言おうとも、俺は異世界を極め尽くしてみせる!
アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~
明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!!
『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。
無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。
破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。
「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」
【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?
無限初回ログインボーナスを貰い続けて三年 ~辺境伯となり辺境領地生活~
桜井正宗
ファンタジー
元恋人に騙され、捨てられたケイオス帝国出身の少年・アビスは絶望していた。資産を奪われ、何もかも失ったからだ。
仕方なく、冒険者を志すが道半ばで死にかける。そこで大聖女のローザと出会う。幼少の頃、彼女から『無限初回ログインボーナス』を授かっていた事実が発覚。アビスは、三年間もの間に多くのログインボーナスを受け取っていた。今まで気づかず生活を送っていたのだ。
気づけばSSS級の武具アイテムであふれかえっていた。最強となったアビスは、アイテムの受け取りを拒絶――!?
せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。
シスターヴレイヴ!~上司に捨て駒にされ会社をクビになり無職ニートになった俺が妹と異世界に飛ばされ妹が勇者になったけど何とか生きてます~
尾山塩之進
ファンタジー
鳴鐘 慧河(なるがね けいが)25歳は上司に捨て駒にされ会社をクビになってしまい世の中に絶望し無職ニートの引き籠りになっていたが、二人の妹、優羽花(ゆうか)と静里菜(せりな)に元気づけられて再起を誓った。
だがその瞬間、妹たち共々『魔力満ちる世界エゾン・レイギス』に異世界召喚されてしまう。
全ての人間を滅ぼそうとうごめく魔族の長、大魔王を倒す星剣の勇者として、セカイを護る精霊に召喚されたのは妹だった。
勇者である妹を討つべく襲い来る魔族たち。
そして慧河より先に異世界召喚されていた慧河の元上司はこの異世界の覇権を狙い暗躍していた。
エゾン・レイギスの人間も一枚岩ではなく、様々な思惑で持って動いている。
これは戦乱渦巻く異世界で、妹たちを護ると一念発起した、勇者ではない只の一人の兄の戦いの物語である。
…その果てに妹ハーレムが作られることになろうとは当人には知るよしも無かった。
妹とは血の繋がりであろうか?
妹とは魂の繋がりである。
兄とは何か?
妹を護る存在である。
かけがいの無い大切な妹たちとのセカイを護る為に戦え!鳴鐘 慧河!戦わなければ護れない!
元英雄 これからは命大事にでいきます
銀塊 メウ
ファンタジー
異世界グリーンプラネットでの
魔王との激しい死闘を
終え元の世界に帰還した英雄 八雲
多くの死闘で疲弊したことで、
これからは『命大事に』を心に決め、
落ち着いた生活をしようと思う。
こちらの世界にも妖魔と言う
化物が現れなんだかんだで
戦う羽目に………寿命を削り闘う八雲、
とうとう寿命が一桁にどうするのよ〜
八雲は寿命を伸ばすために再び
異世界へ戻る。そして、そこでは
新たな闘いが始まっていた。
八雲は運命の時の流れに翻弄され
苦悩しながらも魔王を超えた
存在と対峙する。
この話は心優しき青年が、神からのギフト
『ライフ』を使ってお助けする話です。
S級パーティを追放された無能扱いの魔法戦士は気ままにギルド職員としてスローライフを送る
神谷ミコト
ファンタジー
【祝!4/6HOTランキング2位獲得】
元貴族の魔法剣士カイン=ポーンは、「誰よりも強くなる。」その決意から最上階と言われる100Fを目指していた。
ついにパーティ「イグニスの槍」は全人未達の90階に迫ろうとしていたが、
理不尽なパーティ追放を機に、思いがけずギルドの職員としての生活を送ることに。
今までのS級パーティとして牽引していた経験を活かし、ギルド業務。ダンジョン攻略。新人育成。そして、学園の臨時講師までそつなくこなす。
様々な経験を糧にカインはどう成長するのか。彼にとっての最強とはなんなのか。
カインが無自覚にモテながら冒険者ギルド職員としてスローライフを送るである。
ハーレム要素多め。
※隔日更新予定です。10話前後での完結予定で構成していましたが、多くの方に見られているため10話以降も製作中です。
よければ、良いね。評価、コメントお願いします。励みになりますorz
他メディアでも掲載中。他サイトにて開始一週間でジャンル別ランキング15位。HOTランキング4位達成。応援ありがとうございます。
たくさんの誤字脱字報告ありがとうございます。すべて適応させていただきます。
物語を楽しむ邪魔をしてしまい申し訳ないですorz
今後とも応援よろしくお願い致します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる