69 / 90
エマのパーティ加入
しおりを挟む警戒して剣を握り締める。扉が開いた。入ってきたのは帝国騎士No.Ⅱのエマだ。
まさかエマも教会側に付いただなんて…嘘だろ。エマと戦えばここにいる何人かは守りきれない。
先に最大火力を叩き込む。オレは草薙の剣で斬りかかる。
「待て。カノン、エマは仲間だ。」
エマの後からルノガー将軍が入ってきた。エマを斬るギリギリのところで剣を止めた。
「どうも参っておるようじゃの、カノン。まあ剣を置いてくれ。落ち着いて話そう。」
「ルノガー将軍、さすがに焦りましたよ。」
「ああ。すまない。遅くなった。監視を欺くのに時間がかかってな。ここもバレている可能性が高い。次回からは別の場所で会おう。クロスケ経由でカノンたちには場所を伝えるようにする。」
「ええ。とにかく将軍も無事で良かったです。実はロミが攫われました。」
「密偵の者から報告を聞いておる。とにかく、レミやカノンたちが無事で良かった。」
そう言うと、ルノガー将軍とエマが椅子に座った。オレも合わせて席に座る。
「申し訳ないが、ロミを救い出すのは後回しだ。教会には帝国側から接触してみる。カノンたちには魔法具の回収を頼みたい。」
「分かりました、ロミのことはお願いします。オレたちは南の水の神殿に向かおうかと思っています。」
「うむ。実はそのことなんだが、エマを連れて行かないかカノン。」
「エマをですか。」
エマがいれば大幅に戦力アップだ。騎士時代は魔法も剣もオレと同じくらいの実力が会ったんだ。ありがたい申し出ではある。
「そうだ。信用たる他の騎士と冒険者に北と西は念のために向かわせている。カノンたちには南と東を担当してほしい。状況を考えると教会より先行して魔法具を集めたい。帝国騎士最大の戦力を導入してもおかしくはないだろう。」
「はい。エマをお借りします。必ず魔法具を教会より先に手に入れます。」
「そうだな。カノンたちのことを頼むぞ、エマ。」
エマがハッと言い、敬礼した。
「魔法具を入手しやすいと思われる南の水の神殿に先に向かいます。その後、魔法具を手に入れれようが入れまいが、東のエルフ村に進みます。」
「それで頼む。帝国側も手一杯でな。カノンたちには迷惑をかける。」
「いえ。これくらいしかオレたちには出来ませんから。」
「ところで、研究所に火をつけたのはエドガーで間違いないのか。」
「残念ながら犯人はエドガーです。本人が言っていました。それにエドガーは魔人化していました。今はまだ人間の意識を保っていますが、今後はどうなるか分かりません。」
「そうか…エドガーは見つけ次第、殺してくれ。すまなかった。全てワシの責任じゃ。」
ルノガー将軍の目は寂しそうだ。
「分かりました。オレがエドガーを止めます。」
「他の裏切った騎士たちも同様に頼む。今後、帝国の前に立ちふさがる可能性が高いだろう。」
沈黙が部屋を包む。由々しき事態だ。こちらが魔法具を既に一個抑えているとは言え、ロミがいないのだ。オレ自身も焦りがある。
「皆、憂い顔をするな。大丈夫だ。いかなるピンチも帝国は乗り越えてきた。ワシもまだまだ現役じゃ。教会なんざワシが倒してやる。」
ルノガー将軍は気を使ってくれている。これが帝国軍のトップの立ち振る舞いか。オレも参考にしないといけない。皆、不安になるのは当然なのだから。
「そうならないように頑張りますよ。ルノガー将軍がまた腰を痛めてもいけませんからね。」
「ハッハッハ。そう言うな、ワシは生涯現役じゃ。」
オレも努めて明るく振る舞う。
「今日のところは帝都を少し離れた南の村でご馳走を用意した。そこで英気を養ってほしい。向かうのは明日でいいだろう。エマは帝国の鎧は着ずにカノンたちに同行してくれ。」
「ご配慮。ありがとうございます。」
「ワシは行けんが、それくらいはさせてくれ。エマが地下水路を案内する。地下水路から帝都を抜けられるだろう。」
「分かりました。今日はその村で休ませてもらいます。明日、南の神殿に向かって出発します。」
「そうだな。カノン達とは以前と同じやり方で手紙で連絡をとろう。ワシからも送るが、この手紙は教会に見られる前提じゃ。重要な内容の伝達はクロスケにお願いしよう。」
レミの肩にとまっていたクロスケがカァと鳴いた。
「よし。レミはワシに付いてきてくれ。誰にも気づかれず研究に没頭出来る場所を用意しておるからな。」
「分かりました。」
「次、皆と会う時は魔法具を一つでも多く集めてくれ。そしてなにより、無事でいてくれ。頼んだぞ! 帝国に栄光あれ! 」
「「「帝国に栄光あれ! 」」」
久しぶりに帝国に栄光あれと言ったな。騎士を辞めてから初めて言った。少しだけ懐かしい気持ちになった。
エマを中心に地下水路を進む。
普段は寡黙なエマが今日は饒舌だ。
「こっちにいったら帝都の魔法学校。こっちはギルド。全て主要の建物とつながっているの。」
「そうか。今日はよく喋るなエマ。気を遣わせて申し訳ないな。」
「そんなんじゃない。」
水路を数十分進むと帝都を抜けた。外は真っ暗でこれなら誰にも見られずに村まで辿り着けそうだ。
村に到着して指定された家に入る。
豪華な食事と酒が用意されている。
「ルノガー将軍も太っ腹だな。ありがたい。明日からまともな飯は食べられないかもしれないから食べておこう。」
皆で席に着き食事を始める。少し暗いな。ロミが居ないんだ当然か。
「ライカ、これ美味しいぞ。いっぱい食べな。」
「…うん。」
「ミトも今日は酒を一緒に飲もう。」
「あんた、元気ね。わかったわよそんな目で見ないで。お酒に付き合うから。」
オレは明るく振る舞う。ルノガー将軍を見習うオレが皆を引っ張る。
「エマは酒飲めるようになったのか。」
「嗜む程度。カノンなんか不自然。」
「まあそう言うなよ。オレだって不安だ、不安だけど落ち込むのは違うと思う。オレはオレに出来ることをやるだけだ。休息も冒険者の仕事だろ。教会は必ず倒すし、ロミも救い出すさ。」
皆が黙り込む。これはオレの本心だ。
「そうね。私もカノンに賛成。私も今日はのむわ。ロミのことが頭から離れないけど、今は英気を養うことしかできないものね。」
「ああそうだ。ロミにこんな姿を見られたら怒られるさ。」
ミトが酒を一気に飲み干した。
「私も力になる。ロミお姉ちゃんを救い出すもん。」
「もちろんだよライカ。ロミを助けるにはライカの力も必要だ。」
ライカもフォークで肉を刺して食べはじめた。
「カノンに嫉妬する。カノンは冒険者じゃなく、騎士に戻るべき。」
「オレは騎士に未練はない。そうだ、エマも冒険者になってみるか。さすがにルノガー将軍には怒られると思うが、冒険者もなかなか面白いぞ。」
「カノンが冗談を言うようになった。生意気。」
オレは騎士の時代には冗談は言わなかったが、変わったみたいだ。
その後、明日に影響しないように少し抑えて酒を楽しんだ。食事はライカが全て平らげた。
どんよりとした雰囲気も払拭できたし、明日には南の神殿だ。必ず魔法具を手に入れてやる。
0
お気に入りに追加
984
あなたにおすすめの小説
【完結】8私だけ本当の家族じゃないと、妹の身代わりで、辺境伯に嫁ぐことになった
華蓮
恋愛
次期辺境伯は、妹アリーサに求婚した。
でも、アリーサは、辺境伯に嫁ぎたいと父に頼み込んで、代わりに姉サマリーを、嫁がせた。
辺境伯に行くと、、、、、
【完結】聖女が世界を呪う時
リオール
恋愛
【聖女が世界を呪う時】
国にいいように使われている聖女が、突如いわれなき罪で処刑を言い渡される
その時聖女は終わりを与える神に感謝し、自分に冷たい世界を呪う
※約一万文字のショートショートです
※他サイトでも掲載中
精霊魔法は使えないけど、私の火力は最強だった
SA
恋愛
精霊魔法が盛んな国の、精霊魔法で有名な家門に、精霊魔法がまったく使えない『技能なし』として生まれた私。
精霊術士として優秀な家族に、『技能なし』でも役に立つと認めてもらいたくて、必死に努力していた。
そんなある日、魔物に襲われた猫を助けたことが発端となり、私の日常に様々な変化が訪れる。
『成人して、この家門から出ていきたい』
そう望むようになった私は、最後の儀が終わり、成人となった帰り道に、魔物に襲われ崖から転落した。
優秀な妹を助けるため、技能なしの私は兄に見殺しにされたのだ。
『精霊魔法の技能がないだけで、どうしてこんなに嫌われて、見捨てられて、死なないといけないの?』
私の中で眠っていた力が暴走する。
そんな私に手を差しのべ、暴走から救ってくれたのは…………
*誤字脱字はご容赦を。
*帝国動乱編6-2で本編完結です。
転生初日に妖精さんと双子のドラゴンと家族になりました
ひより のどか
ファンタジー
ただいま女神様に『行ってらっしゃ~い』と、突き落とされ空を落下中の幼女(2歳)です。お腹には可愛いピンクと水色の双子の赤ちゃんドラゴン抱えてます。どうしようと思っていたら妖精さんたちに助けてあげるから契約しようと誘われました。転生初日に一気に妖精さんと赤ちゃんドラゴンと家族になりました。これからまだまだ仲間を増やしてスローライフするぞー!もふもふとも仲良くなるぞー!
初めて小説書いてます。完全な見切り発進です。基本ほのぼのを目指してます。生暖かい目で見て貰えらると嬉しいです。
※主人公、赤ちゃん言葉強めです。通訳役が少ない初めの数話ですが、少しルビを振りました。
※なろう様と、ツギクル様でも投稿始めました。よろしくお願い致します。
※カクヨム様と、ノベルアップ様とでも、投稿始めました。よろしくお願いしますm(_ _)m
夫と妹に裏切られて全てを失った私は、辺境地に住む優しい彼に出逢い、沢山の愛を貰いながら居場所を取り戻す
夏目萌
恋愛
レノアール地方にある海を隔てた二つの大国、ルビナとセネルは昔から敵対国家として存在していたけれど、この度、セネルの方から各国の繁栄の為に和平条約を結びたいと申し出があった。
それというのも、セネルの世継ぎであるシューベルトがルビナの第二王女、リリナに一目惚れした事がきっかけだった。
しかしリリナは母親に溺愛されている事、シューベルトは女好きのクズ王子と噂されている事から嫁がせたくない王妃は義理の娘で第一王女のエリスに嫁ぐよう命令する。
リリナには好きな時に会えるという条件付きで結婚に応じたシューベルトは当然エリスに見向きもせず、エリスは味方の居ない敵国で孤独な結婚生活を送る事になってしまう。
そして、結婚生活から半年程経ったある日、シューベルトとリリナが話をしている場に偶然居合わせ、実はこの結婚が自分を陥れるものだったと知ってしまい、殺されかける。
何とか逃げる事に成功したエリスはひたすら逃げ続け、力尽きて森の中で生き倒れているところを一人の男に助けられた。
その男――ギルバートとの出逢いがエリスの運命を大きく変え、全てを奪われたエリスの幸せを取り戻す為に全面協力を誓うのだけど、そんなギルバートには誰にも言えない秘密があった。
果たして、その秘密とは? そして、エリスとの出逢いは偶然だったのか、それとも……。
これは全てを奪われた姫が辺境地に住む謎の男に溺愛されながら自分を陥れた者たちに復讐をして居場所を取り戻す、成り上がりラブストーリー。
※ ファンタジーは苦手分野なので練習で書いてます。設定等受け入れられない場合はすみません。
※他サイト様にも掲載中。
愛されない花嫁は初夜を一人で過ごす
リオール
恋愛
「俺はお前を妻と思わないし愛する事もない」
夫となったバジルはそう言って部屋を出て行った。妻となったアルビナは、初夜を一人で過ごすこととなる。
後に夫から聞かされた衝撃の事実。
アルビナは夫への復讐に、静かに心を燃やすのだった。
※シリアスです。
※ざまあが行き過ぎ・過剰だといったご意見を頂戴しております。年齢制限は設定しておりませんが、お読みになる場合は自己責任でお願い致します。
優秀な姉の添え物でしかない私を必要としてくれたのは、優しい勇者様でした ~病弱だった少女は異世界で恩返しの旅に出る~
日之影ソラ
ファンタジー
前世では病弱で、生涯のほとんどを病室で過ごした少女がいた。彼女は死を迎える直前、神様に願った。
もしも来世があるのなら、今度は私が誰かを支えられるような人間になりたい。見知らぬ誰かの優しさが、病に苦しむ自分を支えてくれたように。
そして彼女は貴族の令嬢ミモザとして生まれ変わった。非凡な姉と比べられ、常に見下されながらも、自分にやれることを精一杯取り組み、他人を支えることに人生をかけた。
誰かのために生きたい。その想いに嘘はない。けれど……本当にこれでいいのか?
そんな疑問に答えをくれたのは、平和な時代に生まれた勇者様だった。
非論理的LOVE 〜思考型上司と新人エンジニアの恋〜
ストロングベリー
BL
「社内恋愛など非合理的。ありえねぇよ」荒々しくそう言った男は、自らの論理の壁が崩れることをまだ知らない——
システム開発会社で技術責任者を務める音川はヨーロッパの血を引く圧倒的な美貌を持つが、本人は一切無頓着。鍛え上げた身体とぶっきらぼうな物言いのせいで一見威圧的だが、部下には優しく、技術力向上のために尽力する仕事一筋の男だ。
常に冷静沈着、モラル意識も高く、フェアな態度を貫いているため社内からの信頼も厚い。
ある日、社内で起きた事件をきっかけに、開発部に新人が配属される。彼は驚異的なプログラミングの能力を持ち、音川はいち早くそれを見抜くが——
その新人を前にすると、音川は自身のコントロールを失い、論理の鎧が剥がれていくのを止められない。
論理と感情の間で葛藤する二人の社会人ロマンス
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる