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エマのパーティ加入
しおりを挟む警戒して剣を握り締める。扉が開いた。入ってきたのは帝国騎士No.Ⅱのエマだ。
まさかエマも教会側に付いただなんて…嘘だろ。エマと戦えばここにいる何人かは守りきれない。
先に最大火力を叩き込む。オレは草薙の剣で斬りかかる。
「待て。カノン、エマは仲間だ。」
エマの後からルノガー将軍が入ってきた。エマを斬るギリギリのところで剣を止めた。
「どうも参っておるようじゃの、カノン。まあ剣を置いてくれ。落ち着いて話そう。」
「ルノガー将軍、さすがに焦りましたよ。」
「ああ。すまない。遅くなった。監視を欺くのに時間がかかってな。ここもバレている可能性が高い。次回からは別の場所で会おう。クロスケ経由でカノンたちには場所を伝えるようにする。」
「ええ。とにかく将軍も無事で良かったです。実はロミが攫われました。」
「密偵の者から報告を聞いておる。とにかく、レミやカノンたちが無事で良かった。」
そう言うと、ルノガー将軍とエマが椅子に座った。オレも合わせて席に座る。
「申し訳ないが、ロミを救い出すのは後回しだ。教会には帝国側から接触してみる。カノンたちには魔法具の回収を頼みたい。」
「分かりました、ロミのことはお願いします。オレたちは南の水の神殿に向かおうかと思っています。」
「うむ。実はそのことなんだが、エマを連れて行かないかカノン。」
「エマをですか。」
エマがいれば大幅に戦力アップだ。騎士時代は魔法も剣もオレと同じくらいの実力が会ったんだ。ありがたい申し出ではある。
「そうだ。信用たる他の騎士と冒険者に北と西は念のために向かわせている。カノンたちには南と東を担当してほしい。状況を考えると教会より先行して魔法具を集めたい。帝国騎士最大の戦力を導入してもおかしくはないだろう。」
「はい。エマをお借りします。必ず魔法具を教会より先に手に入れます。」
「そうだな。カノンたちのことを頼むぞ、エマ。」
エマがハッと言い、敬礼した。
「魔法具を入手しやすいと思われる南の水の神殿に先に向かいます。その後、魔法具を手に入れれようが入れまいが、東のエルフ村に進みます。」
「それで頼む。帝国側も手一杯でな。カノンたちには迷惑をかける。」
「いえ。これくらいしかオレたちには出来ませんから。」
「ところで、研究所に火をつけたのはエドガーで間違いないのか。」
「残念ながら犯人はエドガーです。本人が言っていました。それにエドガーは魔人化していました。今はまだ人間の意識を保っていますが、今後はどうなるか分かりません。」
「そうか…エドガーは見つけ次第、殺してくれ。すまなかった。全てワシの責任じゃ。」
ルノガー将軍の目は寂しそうだ。
「分かりました。オレがエドガーを止めます。」
「他の裏切った騎士たちも同様に頼む。今後、帝国の前に立ちふさがる可能性が高いだろう。」
沈黙が部屋を包む。由々しき事態だ。こちらが魔法具を既に一個抑えているとは言え、ロミがいないのだ。オレ自身も焦りがある。
「皆、憂い顔をするな。大丈夫だ。いかなるピンチも帝国は乗り越えてきた。ワシもまだまだ現役じゃ。教会なんざワシが倒してやる。」
ルノガー将軍は気を使ってくれている。これが帝国軍のトップの立ち振る舞いか。オレも参考にしないといけない。皆、不安になるのは当然なのだから。
「そうならないように頑張りますよ。ルノガー将軍がまた腰を痛めてもいけませんからね。」
「ハッハッハ。そう言うな、ワシは生涯現役じゃ。」
オレも努めて明るく振る舞う。
「今日のところは帝都を少し離れた南の村でご馳走を用意した。そこで英気を養ってほしい。向かうのは明日でいいだろう。エマは帝国の鎧は着ずにカノンたちに同行してくれ。」
「ご配慮。ありがとうございます。」
「ワシは行けんが、それくらいはさせてくれ。エマが地下水路を案内する。地下水路から帝都を抜けられるだろう。」
「分かりました。今日はその村で休ませてもらいます。明日、南の神殿に向かって出発します。」
「そうだな。カノン達とは以前と同じやり方で手紙で連絡をとろう。ワシからも送るが、この手紙は教会に見られる前提じゃ。重要な内容の伝達はクロスケにお願いしよう。」
レミの肩にとまっていたクロスケがカァと鳴いた。
「よし。レミはワシに付いてきてくれ。誰にも気づかれず研究に没頭出来る場所を用意しておるからな。」
「分かりました。」
「次、皆と会う時は魔法具を一つでも多く集めてくれ。そしてなにより、無事でいてくれ。頼んだぞ! 帝国に栄光あれ! 」
「「「帝国に栄光あれ! 」」」
久しぶりに帝国に栄光あれと言ったな。騎士を辞めてから初めて言った。少しだけ懐かしい気持ちになった。
エマを中心に地下水路を進む。
普段は寡黙なエマが今日は饒舌だ。
「こっちにいったら帝都の魔法学校。こっちはギルド。全て主要の建物とつながっているの。」
「そうか。今日はよく喋るなエマ。気を遣わせて申し訳ないな。」
「そんなんじゃない。」
水路を数十分進むと帝都を抜けた。外は真っ暗でこれなら誰にも見られずに村まで辿り着けそうだ。
村に到着して指定された家に入る。
豪華な食事と酒が用意されている。
「ルノガー将軍も太っ腹だな。ありがたい。明日からまともな飯は食べられないかもしれないから食べておこう。」
皆で席に着き食事を始める。少し暗いな。ロミが居ないんだ当然か。
「ライカ、これ美味しいぞ。いっぱい食べな。」
「…うん。」
「ミトも今日は酒を一緒に飲もう。」
「あんた、元気ね。わかったわよそんな目で見ないで。お酒に付き合うから。」
オレは明るく振る舞う。ルノガー将軍を見習うオレが皆を引っ張る。
「エマは酒飲めるようになったのか。」
「嗜む程度。カノンなんか不自然。」
「まあそう言うなよ。オレだって不安だ、不安だけど落ち込むのは違うと思う。オレはオレに出来ることをやるだけだ。休息も冒険者の仕事だろ。教会は必ず倒すし、ロミも救い出すさ。」
皆が黙り込む。これはオレの本心だ。
「そうね。私もカノンに賛成。私も今日はのむわ。ロミのことが頭から離れないけど、今は英気を養うことしかできないものね。」
「ああそうだ。ロミにこんな姿を見られたら怒られるさ。」
ミトが酒を一気に飲み干した。
「私も力になる。ロミお姉ちゃんを救い出すもん。」
「もちろんだよライカ。ロミを助けるにはライカの力も必要だ。」
ライカもフォークで肉を刺して食べはじめた。
「カノンに嫉妬する。カノンは冒険者じゃなく、騎士に戻るべき。」
「オレは騎士に未練はない。そうだ、エマも冒険者になってみるか。さすがにルノガー将軍には怒られると思うが、冒険者もなかなか面白いぞ。」
「カノンが冗談を言うようになった。生意気。」
オレは騎士の時代には冗談は言わなかったが、変わったみたいだ。
その後、明日に影響しないように少し抑えて酒を楽しんだ。食事はライカが全て平らげた。
どんよりとした雰囲気も払拭できたし、明日には南の神殿だ。必ず魔法具を手に入れてやる。
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