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秘密の水路
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魔法都市マジクトには昼前には着いた。
ボスにお礼を言って、別れてから昼食を取った。
「それで、これから帝都に向かうには山を超えないといけない。こんなにゆっくりしていていいのか。」
「ふっふっふ。僕の足で山なんて超えられるはずがないだろ。」
たしかに賢者のロミが歩くのは遅い。普通の人の半分以下の速度だ。通常の人でも山を超えるのであれば三日。ロミなら五日以上はかかるのではないだろうか。
「そんなに偉そうに言われても…」
ミトがロミの態度に少しだけひいいている様だ。
「まぁ一日で帝都までは着くよ。僕は魔法使いだからね。なんでも出来るんだ。」
ロミが悪い笑顔を浮かべた。
食事後、ロミが学校に取りに行くものがあると言い出ていった。オレたちには装備や道具の準備をして欲しいと言われたので、商会を回る。ロミが買ってきてほしいものは紙で渡された。
一時間は経っただろうか。用事を済ませて、ロミの家の前で合流した。
「いいかね。キミたち。今日見たことは誰にも口外してはいけないさ。」
なにが起こるんだ。こんなに念押しするロミも珍しい。
「もしかして魔法で飛んでいくの? 」
ライカが不思議そうな顔でロミに質問した。
「現代の魔術では集団で飛ぶことは出来ないよライカ。まずは僕の家に入ろう。」
すごいもったいぶるな。なにをするんだ。
ロミの家に入り、台所に案内された。
「さあ着いたさ。秘密の抜け穴を使うんだ。」
「まさか…下水道なの。」
ミトが少しだけ嫌そうな顔をした。
「さすがはミトだね。若くして首長を務めるだけはあるさ。ほら文句は後だ帝都まで急ぐよ。いま出たら着くのは夜だ。」
台所から地下水路に降りる、下水の匂いで臭いが水路は先が見えないくらいに広い。まぁ暗くて先が殆ど見えないのだが。
ロミが松明に火を着けた。ロミが先頭で歩き始める。
「帝国が誇る秘密の水路だ。四大都市と帝都はこの水路でつながっているのさ。」
帝国騎士だったのにも関わらずオレは知らなかった。いや騎士でも知っているやつはいない。水路が各都市と繋がっているのを知っているのはお偉方だけなのだろう。
「そうなのか。なぜロミはここを知っている。」
「ふっふっふ。それは秘密さ。このままの速度であればちょうど約束の時間には間に合うよ。」
ロミがニヤッと笑うのだが、地下水路でドヤ顔になるのは正直良くわからない。約束の時間まで決めているのであればしっかりと情報共有してほしいものだ。
水路は下水を流しているみたいだが、暗くてなにも見えない。それに下水臭い。
「ねえロミ、この水路ではお化け出たりしないよね。」
「ライカ。お化けなんて出たりしないさ。多分だけどね。」
そう言うと、ライカはオレの後に引っ付いた。
「ライカ、歩きづらいからちゃんと歩いてくれ。」
「だって…お化け怖いもん。」
それを見たミトが笑いながら言った。
「あんたたち、やっぱり大物ね。こんな状況なのにすごいわ。」
「オレは被害者側なのだが、まあ良い。夜まで歩くんだ。今から集中していても気はそう長くは持たない。ミト、リラックスすることも冒険者には大事だ。」
ミトが頷く。たしかに事態は事態だがすぐに解決出来るような問題じゃない。もう国家ぐるみの問題だ。帝国と教会の影の戦争と言っても過言ではないのだ。
「それでロミ、本当にこの道であっているのか。」
ロミの家から降りた時は一本道だったのだが、目の前には道が三本に分かれている。
「それなのさ。僕は賢者だが興味のないことは覚えられなくてね。困ったどっちだったか。」
「おいおい。しっかりしてくれよ。少なくとも道がどちらかは重要な問題だろ。」
ロミが申し訳無さそうに頬をポリポリと搔く。
「カノン、多分こっちだよ、奥で音がするし、ロミが昔通ったでしょ。ロミの匂いがするもん。」
ライカが言ったようだ。
最近、日を増す毎にライカの能力が上がっている。いやフェンリルに近づいている気がする。人間の状態でもより良く食べるようになったし。鼻も効くようだ。
「ああ。そっちだ。思い出した。ありがとうライカ。」
「ううん。大丈夫。私もみんなの力になりたいから。」
そう言うとライカがニコっと笑った。
「無駄話している余裕はない。さっさと進もう。」
奥に進めば進むほど蜘蛛の糸が多くなっていった。
邪魔と言うほどではないが顔につくのは正直不快だ。
ロミが燃やそうとしているが、そこまでして誰かに気がつかれるのはもったいない。オレが先頭に立って、剣で蜘蛛の糸を薙ぎ払いながら進んだ。
「おかしいな。以前はこんなに蜘蛛の糸がなかったのに。でも道は見覚えがある。道は合っているよ。」
「ああ。道さえあっておけばいい。オレたちは観光で来ているわけじゃないんだ。」
斬りながらどんどん進んでいく。
歩くこと数時間。大きな広場に抜けたようだ。謁見の間より広いのではないか。
通路から広場を見ると、一面蜘蛛の糸だらけだ。
これは嫌な予感がする。広場に入らずに合図をする。一応警戒しよう。魔獣がいてもおかしくないのだから。
ボスにお礼を言って、別れてから昼食を取った。
「それで、これから帝都に向かうには山を超えないといけない。こんなにゆっくりしていていいのか。」
「ふっふっふ。僕の足で山なんて超えられるはずがないだろ。」
たしかに賢者のロミが歩くのは遅い。普通の人の半分以下の速度だ。通常の人でも山を超えるのであれば三日。ロミなら五日以上はかかるのではないだろうか。
「そんなに偉そうに言われても…」
ミトがロミの態度に少しだけひいいている様だ。
「まぁ一日で帝都までは着くよ。僕は魔法使いだからね。なんでも出来るんだ。」
ロミが悪い笑顔を浮かべた。
食事後、ロミが学校に取りに行くものがあると言い出ていった。オレたちには装備や道具の準備をして欲しいと言われたので、商会を回る。ロミが買ってきてほしいものは紙で渡された。
一時間は経っただろうか。用事を済ませて、ロミの家の前で合流した。
「いいかね。キミたち。今日見たことは誰にも口外してはいけないさ。」
なにが起こるんだ。こんなに念押しするロミも珍しい。
「もしかして魔法で飛んでいくの? 」
ライカが不思議そうな顔でロミに質問した。
「現代の魔術では集団で飛ぶことは出来ないよライカ。まずは僕の家に入ろう。」
すごいもったいぶるな。なにをするんだ。
ロミの家に入り、台所に案内された。
「さあ着いたさ。秘密の抜け穴を使うんだ。」
「まさか…下水道なの。」
ミトが少しだけ嫌そうな顔をした。
「さすがはミトだね。若くして首長を務めるだけはあるさ。ほら文句は後だ帝都まで急ぐよ。いま出たら着くのは夜だ。」
台所から地下水路に降りる、下水の匂いで臭いが水路は先が見えないくらいに広い。まぁ暗くて先が殆ど見えないのだが。
ロミが松明に火を着けた。ロミが先頭で歩き始める。
「帝国が誇る秘密の水路だ。四大都市と帝都はこの水路でつながっているのさ。」
帝国騎士だったのにも関わらずオレは知らなかった。いや騎士でも知っているやつはいない。水路が各都市と繋がっているのを知っているのはお偉方だけなのだろう。
「そうなのか。なぜロミはここを知っている。」
「ふっふっふ。それは秘密さ。このままの速度であればちょうど約束の時間には間に合うよ。」
ロミがニヤッと笑うのだが、地下水路でドヤ顔になるのは正直良くわからない。約束の時間まで決めているのであればしっかりと情報共有してほしいものだ。
水路は下水を流しているみたいだが、暗くてなにも見えない。それに下水臭い。
「ねえロミ、この水路ではお化け出たりしないよね。」
「ライカ。お化けなんて出たりしないさ。多分だけどね。」
そう言うと、ライカはオレの後に引っ付いた。
「ライカ、歩きづらいからちゃんと歩いてくれ。」
「だって…お化け怖いもん。」
それを見たミトが笑いながら言った。
「あんたたち、やっぱり大物ね。こんな状況なのにすごいわ。」
「オレは被害者側なのだが、まあ良い。夜まで歩くんだ。今から集中していても気はそう長くは持たない。ミト、リラックスすることも冒険者には大事だ。」
ミトが頷く。たしかに事態は事態だがすぐに解決出来るような問題じゃない。もう国家ぐるみの問題だ。帝国と教会の影の戦争と言っても過言ではないのだ。
「それでロミ、本当にこの道であっているのか。」
ロミの家から降りた時は一本道だったのだが、目の前には道が三本に分かれている。
「それなのさ。僕は賢者だが興味のないことは覚えられなくてね。困ったどっちだったか。」
「おいおい。しっかりしてくれよ。少なくとも道がどちらかは重要な問題だろ。」
ロミが申し訳無さそうに頬をポリポリと搔く。
「カノン、多分こっちだよ、奥で音がするし、ロミが昔通ったでしょ。ロミの匂いがするもん。」
ライカが言ったようだ。
最近、日を増す毎にライカの能力が上がっている。いやフェンリルに近づいている気がする。人間の状態でもより良く食べるようになったし。鼻も効くようだ。
「ああ。そっちだ。思い出した。ありがとうライカ。」
「ううん。大丈夫。私もみんなの力になりたいから。」
そう言うとライカがニコっと笑った。
「無駄話している余裕はない。さっさと進もう。」
奥に進めば進むほど蜘蛛の糸が多くなっていった。
邪魔と言うほどではないが顔につくのは正直不快だ。
ロミが燃やそうとしているが、そこまでして誰かに気がつかれるのはもったいない。オレが先頭に立って、剣で蜘蛛の糸を薙ぎ払いながら進んだ。
「おかしいな。以前はこんなに蜘蛛の糸がなかったのに。でも道は見覚えがある。道は合っているよ。」
「ああ。道さえあっておけばいい。オレたちは観光で来ているわけじゃないんだ。」
斬りながらどんどん進んでいく。
歩くこと数時間。大きな広場に抜けたようだ。謁見の間より広いのではないか。
通路から広場を見ると、一面蜘蛛の糸だらけだ。
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