帝国騎士団を追放されたのでもふもふ犬と冒険とスローライフを満喫する。~反逆の猟犬~

神谷ミコト

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砂漠のピラミッド

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 翌朝、ロミが目を覚ました。

 「私、ずっと寝てた? 」

 「ああ。体調は大丈夫か。」

 「もう平気。」

 ロミの額を触るが熱はない。平熱に戻ったみたいだ。

 「今日一日は宿でゆっくりしていてくれ。オレたちはダンジョンに行ってくるよ。」

 「そうさせてもらうわ。」

 「ご飯は部屋に持ってきてもらうように、伝えておく。今日はしっかりと休んでくれ。」

 オレはカノンと共に部屋を出た。

 カルスの部屋をノックする。

 「はい。空いているよ。」

 挨拶をしてさっそく本題に入る。

 「カルス、今日はダンジョンに行くだろう。」

 「ああ。もちろんだ。先に下に降りていてくれ。もう少しだけ準備に時間がかかる。」

 「わかった。一階で待たせてもらうよ。」

 一階で飲み物を注文して席でライカを撫でながら待つ。もう明日には満月だ。ライカも人型に変化するだろう。


 「お待たせ。彼女の体調はどうだい。」

 「ああ。熱は下がったみたいだ。念のため、今日は休んでもらうよ。」

 「そうか。さっそくダンジョンに行こうか。彼女の体調も気になるし、夕方には戻ってきた方がいいだろう。目指すは二十階だ。」

 そう言うと、カルスは先に歩き出す。

 ダンジョンまで歩いて進むとピラミッドと呼ばれるものがダンジョンになっているとカルスが説明してくれた。外は日差しも強く暑いのだが、ピラミッドの中はひんやり涼しくて快適だ。

 
 骸骨剣士やサソリなどの魔獣は出るが、脅威にはならない。ライカが先に走って狩っている。

 「それにしてもカノンも、ライカも強いな。」

 「まあ普通くらいだよ。そこまで強くはない。」

 「いいや、俺の十倍は強いんじゃないか。」

 「カルスは冒険者じゃないだろ。研究者に強さは必要ないさ。」

 そう言うと、カルスが笑った。

 カルスとはウマがあう。彼が研究していることを熱く語ってくたが、理解は出来なかった。

 二十階のボス、骸骨ロードをサクッと倒した。骸骨ロードは鉱山でも戦っているし、脅威ではない。これくらいであればライカ一人、いや一匹でも余裕だな。

 「今日は二十階のボスを倒してくれて助かったよ。」

 「いや、大丈夫だ。オレたちもいい経験になった。カルスは研究をするんだろ。」

 「ああ。壁画を研究したい。暇だろうし、カノンたちは先のダンジョンに進んでいてもいいよ。二十階のボスを倒したんだ。俺たちがダンジョンから戻るまでボスは復活しないからね。」

 そう言うと、オレには目もくれず壁画を見てふむふむ言って紙になにかを書いている。

 「わかった。一時間ちょっとで戻る。それまで好きに研究をしていてくれ。」

 もうオレの言葉はカルスには届いていない。



 ライカと共にダンジョンを進む。

 三十階の蠍ロードまではすぐにたどり着いた。

 蠍ロードの一番の特徴は尻尾に猛毒を持っていることだ。まぁ尻尾の攻撃を当たらなければ問題はない。硬くてすばしっこいのは少しだけ厄介だ。それに脚が多くて気持ちが悪い。

 二本のハサミで攻撃してくる。その後に尻尾の毒でトドメを刺すつもりだろう。

 尻尾が飛んできたところをクサナギで斬る。蠍が悲鳴のような声を上げる。

 これで毒は考えなくてもいい。

 「ライカ! トレーニングだ。蠍ロードを倒せ。」

 ライカが駆ける。

 蠍はデュラハンほどではないが硬い。硬くて早い敵を倒すトレーニングになるだろう。速さではライカが上だが。

 ハサミを避けライカが爪で削る。

 いいぞ。その調子だ。

 蠍が咆哮を上げて速度が上がる。もう少しだ。

 ライカは蠍のハサミを華麗に躱す。

 ライカも攻撃を与えてはいるが、決定的に優位に立っている訳では無い。

 「ライカ脚を狙うんだ! 」

 蠍は足が八本ある。

 ライカが足を食いちぎる。蠍はハサミを振って抵抗するが、ライカはすぐに距離を取り当たらない。

 足が半分なくなったところで蠍の動きは鈍くなった。

 これでもう負けることはないだろうな。

 「ライカ! トドメだ! 」

 ライカがハサミを避けて飛び、蠍の頭胸部を爪でひっかいた。

 蠍ロードはピクピクした後、動かなくなった。

 終わりだ。ライカが嬉しそうに駆け寄ってきたので撫でて褒める。

 「ライカは元の戦闘能力は高いんだから、頭を使って弱点を攻めような。」

 ライカがワオンと声を上げた。

 倒した蠍ロードの魔石と素材を取る。どれくらいで売れるかわからないが、お金には困っていない。

 『相棒、その魔石美味しそうだな。俺にくれないか。デュラハンのときには貸しを作ったんだからいいだろう。』

 クサナギが話しかけてきた。

 「しょうがないな。今日はクサナギにやるか。」

 『さすがだぜ、相棒。俺も頑張るからよ。強い魔石をどんどん食わしてくれよ。』 

 蠍ロードの魔石が光って消えた。

 まあ良い。草薙の剣しか今のオレは持っていないし、草薙の剣は強いからな。魔石で使えるなら得だろう。

 時計を見るとカルスト別れてからちょうど一時間経っているようだ。もうそんなに経っていたか。

 「そろそろ戻るか。ライカ今日はここまでだ。急いで戻ろう。」

 ライカの返事を聞いてダンジョンを下っていく。

 二十五階でカルスが壁を見ながら立っていた。

 「カルス。大丈夫か。こんなところに居て魔獣に襲われなかったのか。」

 「ああ。二十階の研究が終わってな。進んでいたらこんなところまで来ていたよ。」

 「そうか。研究熱心だな。」

 「カノンのお陰でだいぶ研究も進んだ。少し早いけど今日は戻ろうか。部屋でまとめたい。」

 このダンジョンには転移門がないみたいで、下って降りる必要がある。

 先程通った道だし、サクサクと進む。

 カルスは上機嫌だ。研究が進んだからだろうか。




 「今日はありがとう。助かったよ。お礼に夜ご飯はご馳走させてくれ。寝ている彼女も体調がよかったら連れてきてくれ。研究の話もしたいしね。」

 カルスが笑い、部屋に戻っていった。

 オレも部屋に入るとロミが不満そうな顔でこちらを見ている。

 「ずるいよ。カノン。そんな楽しそうな顔しちゃって。僕だけ置いてけぼりじゃないか。」

 オレは楽しそうな顔をしていたのか。それにしてもロミのプゥっとむくれている顔はかわいい。

 「しょうがないだろ。体調が悪かったんだから。それで熱は下がったのか。」

 「もちろんさ。もう万全だね。食欲も湧いてきた。」

 そう言うと、ロミが細い腕で力こぶを見せる様な仕草をした。

 「そうか。昨日助けてくれカルスがご馳走してくれるらしい。もう少ししたら一階に降りよう。」

 ロミが頷く。

 その後、ご飯の時間までロミにピラミッドのことを延々と聞かれたのだが、オレはピラミッドには興味がない。壁の柄なんてどうでもいいから、ロミは少し不満げだった。
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