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カノンVSデュラハンロード

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 禍々しいオーラがアドルフを包む。背中からは黒い翼が生えて、角も出ている。

 「魔人化だ。ロミ。気をつけろ。今までと同じ力だと思うな! 」

 「もちろんだよ。カノン。アドルフは私にやらせてほしい。僕がアドルフに引導を渡すよ。カノンはデュラハンロードをやってくれないかい。」

 そう言うロミの顔は少しだけ寂しそうな顔をしていた。

 「わかった。デュラハンロードはオレに任せろ。ロミが負けるとは思わないが、気をつけろよ。」

 ロミが頷き、絶対零度<アブソリュートゼロ>を無詠唱で放つ。

 アドルフも無詠唱でインフェルノを放ち爆発音が聞こえた。

 オレにロミを心配している余裕はない。デュラハンロードを見つめる。

 デュラハンロードは強い。今まで闘ったことはないが、先程倒したデュラハンとは桁が違うだろう。冒険者ギルドではS級に指定されていたはずだ。

 オレに勝てるだろうか。つばを飲み込む。

 ライカが吠える。そうだな。オレたちなら勝てる。

 「行くぞっライカ!」

 ライカと共に駆け出す。デュラハンロードは剣を振り、オレの草薙の剣で受ける。

 「うぉっ」思わず声が出る。驚きの力だ。草薙の剣じゃなかったら剣ごと真っ二つになっていたな。

 剣で防ぐだけで数メートルは後に押し出される。

 後からライカがデュラハンロードに噛みつくが、デュラハンロードには打撃攻撃しか効かない。鎧は固くダメージが入っていない。

 デュラハンロードは図体はでかいが素早い。すぐにライカを斬り、引き離した。ライカはジャンプして華麗に避ける。

 正直、ライカの力を借りてもデュラハンロードに勝てるビジョンが見えない。

 「ライカ少しだけ時間を稼いでくれ! 」

 オレは叫んだ。少しだけ考える時間がほしい。

 オレがデュラハンロードに勝つには叢雲斬り<むらくもぎり>を当てるしかないだろう。アドルフを倒すという手段もあるが、デュラハンロードに背を向けて生き残れるとは思えない。魔人化したら想像以上に生命力が上がっているはずだ。とどめを刺したと思っても、デュラハンロードが動く可能性が高い。

 ライカは素早い動きでデュラハンロードを引き付けてはいるが、このままでは手詰まりだ。

 ………案が浮かばない。

 (どうすれば叢雲斬り<むらくもぎり>当てられる。クサナギ何か案はないか。)

 『相棒、ピンチが続いているみたいだな。どうするつもりだ。』

 (わからん。正直お手上げだ。あんなの相手にするものじゃない。撤退するのが一番だと思うが、そうはいかない。)

 『俺も逃げるのをおすすめするぜ。』

 (そうだな。もう一撃、叢雲斬り<むらくもぎり>を使わせてくれ。このままアイツに負ければクサナギに魔石を食わせられない。)

 『たしかにそうだな…いいぜ。もう一撃だけ力を貸してやる。相棒はライカを信じていない。それが問題なんじゃねえか。後は自分で考えな! 』

 ライカを信じていないだと、そんなことはない。ライカの能力から考えてデュラハンロードにダメージを与えらることはできない。今も必死に闘ってくれているが、デュラハンロードがダメージは入っていないじゃないか。


 クサナギは何を言いたかったんだろう。


 ………待てよ。もしかするとライカにバフは効くんじゃないか。試す価値はある。

 オレは無詠唱でライカに速度・攻撃力・守備力アップのバフをかけた。

 「ライカ、バフをかけた!打撃攻撃を中心に爪で攻撃しろ! 」

 ライカの速度が上がったように見える。ライカの爪がデュラハンロードの鎧に当たり、鎧が削れた様に見える。

 そうか。ライカにバフは効くのか。新しい発見だ。戦略が決まった、オレとライカで削ってスキができたら叢雲斬り<むらくもぎり>を叩き込んで倒す。

 オレも駆け出しデュラハンロードの後から斬る。

 デュラハンロードの意識がオレに向いたらライカが飛びかかり、ライカにデュラハンロードが攻撃をしたらオレが後から斬る。

 ダメージは入っているはずだが、デュラハンロードの動きは鈍らない。

 もし叢雲斬り<むらくもぎり>で倒せなかったらマズイなと不安がよぎる。戦闘中に余計なことを考えている時は良くないときだ。

 頭がないデュラハンロードだが咆哮をあげた。声は聞こえないが、デュラハンロードの攻撃の速度が上がっている。デュラハンロードは攻撃のターゲットをオレに集中したみたいだ。

 デュラハンロードが連続で斬りかかる。

 剣で防ぐが、重い。草薙の剣でうまく弾く。

 ライカも後から攻撃してくれているが、デュラハンロードは意にも介さない。

 このままではジリ貧だ。くそっ何かきっかけがあれば攻撃に転じられる。いつもなら、剣撃をいなして攻撃に転じているのだが、速くて重いデュラハンの攻撃をいなして、反撃するのは賭けだ。

 駆けだが行くしかない。オレはオレを信じる。頼む。精霊よ。オレの細胞よ。力を貸してくれ!

 力が漲ってくる。バフは限界まで重ねがけしている。なぜだ…ライカだ。ライカがデュラハンの後で先程より小さくなっている様に見える。ライカが力をくれたのか。

 これなら押し切れる。

 デュラハンロードの剣撃を防ぐ。

 最後の力がこもった振り下ろしを防ぎ、押し返す。

 剣が上がったところでデュラハンロードの鎧を蹴る。

 後にふらついたデュラハンロードに最大火力で叩き込む。

 「これで終わりだ!叢雲斬り<むらくもぎり>!! 」
 
 一閃

 草薙の剣で縦にデュラハンロードを斬った。

 今まで闘った魔獣の中で一番強かった。まさに紙一重だった。ライカやクサナギがいなければ間違いなく負けていただろう。だが勝った。オレの。いや、オレたちの勝ちだ。

 「ウォォォォォオ! 」

 オレは無意識に雄叫びを上げていた。
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